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松舞町ラブストーリー
山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね。
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下山
「う~寒っ」
シュラフに頭を突っ込み直すと、吐く息が口の周りにまとわり付く。
少し咽返りそうになったけど、とても温かく感じられた。
そんな寒いテントの中にも、太陽の光が優しく降り注いでいます。
おはようございます、ちょっと二日酔い気味の竹下です。
―――――――――2月27日(日)―――――――――
結局昨日は、カオルさんにアドレスを聞く事が出来ませんでした。
彼女達が下山する時に、ひと言ふた言話しただけです。
えも知れぬ挫折感が僕を支配していきました。
思った通りの素敵な夜景を堪能して、実家の棚からくすねてきた親父の高そうなウィスキーを煽ったりもした。
でも結局テンションが上がる事は有りませんでした。

この症状って所謂「ひと目惚れ」って奴でしょうか?
地元の子なら何となくでも見覚え有だろうけど、見覚えの無いところをみると地元の女の子じゃ無さそうですし・・・
まぁ運良く再会出来たにしても、彼女の気持ちばかりは分かりませんけどね。
そんな事をうだうだと考えてぼ~っとしていると、益々気が滅入って来ます。
もう一度シュラフに頭を突っ込み直して、僕はうだうだとした時間を過ごしていた。


どれ位時が経っただろうか、テントをポフポフっと軽く叩く音が聞こえた。
「お~い少年、起きてるかぁ~?」
すわっ、その声はカオルさん!?
僕は、慌ててシュラフから上半身抜け出し、テントのファスナーを開けた。

「おっ、おはようございます。どっ、どうしたんですか?」
「何緊張してるのよ少年(笑)。折角、優しいお姉さんが朝食持って来てあげたと言うのに」
「自分で優しいとか言いますか、普通?」
「じゃあ、いらないのね。川原家直伝のパワーランチ・・・朝食だけど名前はパワーランチ」
「頂けるんなら、勿論頂きますよ。って言うか、カワハラさんって言うんですね、カワハラカオルさん。」
「そう三本川の川に原っぱの原、カヲルはカタカナでヲは大きい方じゃなくて、小さい方のヲ」
「小さい方って、カヲルさん?」
「う~ん、口にしても何も変わらない気もするけど、カオルじゃなくてカヲルなのよ」少し照れ臭そうにカヲルさんが笑っています。
その笑顔をもう一度見れたんだから、飛び上がるほど嬉しいはずなのに、胸がキュンっと締め付けられます。
やばっ、マジ惚れみたいです・・・


「さぁ少年そんな事はどうだって良いからさ、さっさと寝袋から出て歯磨きしなさいよ」
「少年少年って、僕だって竹下純って名前が有るんですからね」
「ふ~ん、ジュンって言うんだ。ジュンはどの字? 潤う? ロンブーの淳って書く方?」
「純情の純」少しふてくされた様な口調で、僕は答えた。
「純情の純って、そっちこそ恥ずかしげもなく自分で言うかって話じゃん少年」
「だから少年じゃないですって」
「そうよねぇ、少年はお酒飲んじゃあイケナイもんねぇ、竹下くぅん」
「うっ・・・ちょっとしか飲んでませんって。」
「はいはい、とにかくテントから出てらっしゃいよ、竹下くん」
ちっ、悔しいけど完全に子供扱いですね。

僕は、テントの中で着替えをして、歯ブラシを持って外に出た。
地表に降りた霜が、朝方の冷え込みを物語っていた。
「ほら見て御覧なさいよ、宍道湖の方に雲海が広がってるよ、早起きして良かったでしょ」カヲルさんが指さす方向に目をやると、白い雲の海から島々の様に山々が浮かんでいて、幻想的な世界が広がっていた。

僕は歯磨きもそこそこにテントに頭を突っ込み、急いでカメラを取り出す。
冬の晴れた朝しか見られない貴重な風景です、それだけでも寒い中テント泊をした意味が有るってもんです。
レンズを広角に差し替え、ひたすらシャッターを押した。
森山さんに自慢出来る一枚が撮れた様な気がします。

「ほら朝ご飯の準備出来たわよ、竹下君」
カヲルさんの声に振り返ると、ベンチの真ん中に湯気を立てたスープやサンドイッチが並んでいた。
「おぉ、すげぇ~」
「でしょう、全部今朝早起きして作ったんだからね。」
「ひょっとして僕の為にっすか?」
「馬鹿ねぇ、何ときめいているのよ。昨日ワンバーナーのガスを結構使っちゃったから、朝ご飯とか作っている最中にガス欠になったら、申し訳無いって思っただけよ。それに・・・」
「それに?」僕は期待の意味を込めて聞き直した。
「少年が凍死してたら、後味が悪いでしょ」
「凍死って・・・大丈夫って言ったでしょ。それにガスだって予備持って来てるし、折りたたみ式の焚火コンロも持って来てますから大丈夫でしたのに」
「へぇ~そうなんだ・・・まぁとにかく食べた食べた」
「それじゃあ遠慮せずに頂きますね。川原家特製パワーランチって、カヲルさんも家族で山登りとかしてたんですか?」
「そうね、小学校卒業位までかな。さすがに中学入ると親と出掛けるのが恥ずかしくって行かなくなったわね。でも、やっぱり山が恋しくて短大ではワンダーフォーゲル部に所属しちゃったけどね。」
「じゃあ昨日一緒だった人もワンゲル仲間ですか?」
「ううん、彼女は社会人になってからの仲間よ。彼女、看護士していて今日は、普通に勤務なのよね。因みに私も同じ病院で働いているんだけどね」
「って事はお医者さん?・・・あっ、考え難いけど看護婦さんとか」
「どう言う意味よ、『考え難い』って・・・残念ながらどちらも外れ、私は事務方なの。それと今は看護婦って言わないのよ」

「そうなんっすか? おっ、このサンドイッチうまいっすね。」僕は、失礼な事を言った気がして何となく話題を逸らした
「特製ポークチリビーンズサンドいけるでしょ、食べている最中に垂れてこない様に片栗粉入れるのがポイントなのよ。ねぇところで、さっき雲海の写真撮ってたけど、写真も趣味なの?」
「ええ。まぁ最近始めた趣味なんですけどね、会社の先輩の影響です。そうだ、登る時に霧大丈夫でした?」
「麓は結構霧が出てたわよ。昨日も登ってるから大丈夫だったけど、初めての山だったら諦めていたかもね。」
「そこまでして来なくても良かったのに」
「だから少年の事が心配だったんだって・・・それと・・・
「それと?」
「・・・あっ、スープ飲む時熱いから気をつけてね」
インスタントスープの入ったカップを手に取った僕に、そう注意を促した。
「うぉっ、まじ熱いっすね。俺、猫舌なんですよ。うん、でも旨いっす。」
「あっ、私も猫なんだよね。」カヲルさんはそう言いながら、カップをフウッ~っと吹いていた。
その横顔が、僕より年上とは思えない位可愛らしくて、また胸がキュンっとなった。


「ねぇ、竹下くんの住まいは松舞?」食べ終わった朝食のラップを小さく畳ながらカヲルさんが聞いてきた。
「そうです地元ですよ。地元って言っても実家は下奥沢だから、アパート住まいなんですけどね。カヲルさんも松舞ですか?」
「ううん、私は雲山なの。生まれも育ちも雲山なんだけど、親に干渉されるのが嫌で、実家を出てアパート住まいなんだけどね。」
「え~、衣食住の心配がいらないのに、わざわざ出ちゃったんですか?」
「そうよ、自由が一番よ。竹下くんこそ、アパート住まいなら食事とか大変じゃない? スーパーの総菜やコンビニ弁当ばっかりじゃ、栄養のバランス取れないし飽きるでしょ。それとも生意気にも食事の世話してくれる彼女が居るとか」
「生意気って・・・失礼な(笑) でもまぁ、そんな献身的な相手居たら紹介して欲しいっすよ。」
「じゃあやっぱり、外食かコンビニ弁当?」
「それが最近、お弁当男子デビューしちゃったんですよ、俺」
「お~、えらいぞ少年! じゃあ、料理得意なんだ」
「いやまだ始めたばっかりだし、勉強中ですよ。 そうだ朝食のお礼にコーヒー沸かしましょうか?」
「あっ、うん、飲む飲む。ねぇ折角だから、焚き火コンロ使ってみせてよ」

「もう使い込んでボロボロですよ。使うんなら先ずは枯れ木とか集めなきゃ」
「そっか、そこから始めなきゃだね。手伝うわよ、どんな枯れ木集めれば良いの?」
「そうっすねぇ・・・着火材代わりの松葉が一握り、後は細めの枝や枯葉ですね。それらで火を焚こしながら太めの枝に着火させるんです。」
「ふ~ん、結構手間なのね」
「でもまぁ言うほど手間じゃないんですよ、最初に入れ方をちゃんとしておけば、その一回でお湯くらい沸きますから。問題は、この霜でしょ乾いた枯れ木が有るかどうか」

僕らは広場の周りの木の生えてる所を探し始めた。
「有った有った少年。表面は霜が解けて湿ってるけど、そこをどければ乾いた枯枝が有るわ。」
「こっちも、そこそこ集まりましたよ」
お互いが、抱え上げた枯枝や枯葉を見つめて笑い有った。
「カヲルさん、そんなに拾わなくても」
「少年こそ、狼煙でも上げるつもり」
あ~ぁ、何だか山登り万歳って感じです。

「じゃあ、このコンロに入る大きさにポキポキ折ってもらえますか?」
「こんな感じで良いのかな?」
「あっそれ位の大きさでOKです。そうしたら、一番下にティッシュを一枚敷いて、その上に松葉や枯葉を乗せて・・・」
「結構手間かかるのね、焚き火コンロって」
「その分、愛着が湧いてきますよこのコンロは。次に細めの枝を乗せて、仕上げに太めの枝を乗せるっと・・・五徳をセットして準備完了です。」
「お水は、このペットボトルのお水で良いの?」
「ハイ、そっちのコッフェルに入れちゃって下さい。」
「じゃあ、着火しますよ。ほら、ここの穴から紙縒ったティッシュの切れ端を差し込んで、導火線代わりにするんです。今日は風がそこそこ吹いてるから、問題なく着火すると思うんですけど・・・」
「あっ、点いた点いた・・・煙が上がってきたよ少年」
「じゃあカヲルさん、焚き火番お願いしても良いですか? その間にコーヒー準備しますから。」

「良いわよ。火が弱まったら、上から枯れ木入れれば良いの?」
「そうっすね・・・あっ、風下に居ると結構煙いっすよ。」

一人用のコーヒーミルを取り出しながら、カヲルさんにコーヒーの好みを聞くのを忘れた事を思い出す。
振り返ると、子供みたいに小さく蹲り焚き火の世話をするカヲルさんが居た。
ルックスだけじゃなくて、仕草の一つ一つが子供みたいで可愛いです。
「ん?どうしたぁ少年」僕の視線に気付いたカヲルさんが、顔を上げた。
「あっ・・・コーヒーは濃い目でも良いですか?後、砂糖とミルクは?」
「濃い目で良いわよ、ミルクを思いっきり入れてカフェオレにするの。」
嗜好まで、可愛く感じてしまうのが、惚れてしまった男の悲しい性なんでしょうか・・・
「あれ?それってコーヒー豆挽く機械?」
「えっ、そうですよ。これも会社の先輩に、コーヒー豆は挽きたてが一番って唆されて買っちゃったんです。でも、確かに豆のままの方が味も落ちにくいし、お湯が湧くまでの暇つぶしに丁度良いんですよ。」
「そんな小さなのが有るんだ、間違いなくアウトドア向けって感じだね。」
「そうっすね、ほらハンドルも折り畳めてコンパクトになるんですよ、これ」
「あっ本当だ凄~い。男の子って、こんな小物見付けるの得意だよね」興味深そうにカヲルさんが覗き込んできた。
「ゴリゴリしてみます?」
「うん、するする。ゴ~リゴリゴ~リゴリ♪」
「なんっすか、その変な歌は(笑)」・・・駄目です、もう全てが可愛くって、僕はどうにかなっちゃいそうです(^_^;)



日が傾き始めた頃、僕達は山の麓の駐車場に居た。
「カヲルさん、今日はパワーランチ御馳走様でした。」
「ううん、こっちこそコーヒーにお昼まで御馳走になっちゃって。」
「いや・・・インスタントラーメンっすから。」
春がそこまで来ていると言うのに、夕暮れの風はまだまだ冷たかった。
「寒いねここ・・・そろそろ行こっか」
「そうっすね、昼間は暑いくらいだったのに・・・」

「ねぇ・・・」「あのぉ・・・」
お互いが何かを言いかけ言葉につまった。
「なによ少年?」
「いい加減、少年は止めて下さいよカヲルさん・・・そうじゃなくて、あの・・・」
「何よハッキリしないわね・・・そんなんじゃこれからも少年って呼んじゃうよ・・・」
「これからも?」
「そう、これからも・・・ず~っとよ。・・・だから、少年って呼ばれたくないなら、ちゃんと言いたい事言いなさい。」
カヲルさんはそう言いながら、背筋をピッと伸ばしまっすぐ僕の方を向いた。
大丈夫だから、そう言われている気がした。
僕も、背筋を伸ばしカヲルさんの方を向いた。そしてゆっくり喋り始めるのだった。



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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

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