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松舞町ラブストーリー
山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね。
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白い吐息に溶け込む想い
「はぁ~暑ぅ~」
自転車小屋に着く頃には、私はもう汗だくでした。
見慣れた田中君の自転車を発見し、わざとその隣に自転車を止めてみる・・・根拠の無いおまじないみたいなものですね。
「今年もバレンタインが来たなぁ・・・」って呟いてみる、こんにちは、神田瑞穂って言います。
―――――――――2月14日(月)―――――――――
手袋をしていても冷たくなってしまった手に、息をハ~ッと吹きかけてみる。
白い息が、子犬みたいに私にまとわり付きながら、キンっと引き締まった寒空に溶け込んでいきました。
それを静かに見守るかの様に空を見上げてみた。

東京にアパートを探しに行っていた田中くんが、今日松舞に帰ってきます。
待ち合わせをしている訳じゃないんです、待ち合わせどころか何時の列車で帰ってくるのか知らないんですけど、昨日もらったメールに、今日の列車でこっちに戻ってくるって書いて有りましたから、何となくフラフラと駅に来てしまいました。
そんなメールを貰ったからと言って、別に付き合っているとか彼氏とかって関係では無いんですよ、田中君とはただのクラスメイトで同じ部活ってだけの関係なんです。

1年生の夏合宿の時、二人こっそり抜け出して砂浜で星空を見たのがきっかけでした。
その時は、ただの解放感から彼について行ったんですけど、今にして思えば、あの時私の心の奥底に田中君への想いが芽生えたのかもしれません。

田中君が東京の大学志望なのは、当時から知っていましたし、私は就職希望でしたから、卒業と同時に離ればなれになってしまうのは分かり切った事。
それでも、高校生活の間だけと割り切れれば、素直に告白出来たかもしれませんが、結末が分かり切った恋愛なんて切ないだけですから、秘かに彼の事を見つめ彼の事を思うだけで満足する様に努めてきたつもりです。
バレンタインのチョコだって、義理を公言してから渡していた位ですから。
田中君もそんな私の気持ちに気がついていたのか、特に進展しない付かず離れずの距離のまま、2年半が過ぎました。

一緒に映画を見に行ったり、花火をしたり、クリスマスイブを二人っきりで過ごした事も有った。
そう言えばその時、笑いながら小さなキスを交わしたんですよ。
それは、ただ遊びみたいな気持ちで交わした小さな小さな、でも後にも先にもたった一度っきりのキスなんですけどね。
どれも切ないけど、私には大切な思い出です。
でも、そんな思い出ももう少しで途切れてしまうんですね。

あの夏休みから、何回も何百回も繰り返してきた質問を、また自分に問いかけてみる
「本当にこれで良かったのかな?」って
でも正解を知るのが怖くって、いつもと同じ「これで良かったんだ」って結論に無理やり持っていきました。
もう一度、空を見上げてみる・・・相変わらず灰色の空に静かに雪が舞っています。

構内から、アナウンスが流れてきました・・・雪でちょっと列車が遅れているみたいです。
私って馬鹿みたいですよね、次の列車で帰って来るかどうかも分からないのに、こうして駅前でドキドキしながら待っているんですから。
しかも肩にかけたバッグの中には、ガラにも無く手作りしたチョコが忍ばせてあります。
深い意味は無いんですよ、自由登校で暇だったから雑誌のバレンタイン特集をまねして作ってみただけなんですから。

作っていくうちに誰かに渡したくなって、でも思いつく人物が一人しか居なくって、まだ出来たてのホヤホヤ状態のチョコをバッグに突っ込んで、家を飛び出しました。
自転車で駅までの道すがら、何回も渡すシチュエーションを考えシュミレーションしてみる。
でも、どのシチュエーションも私が告白しようとするシーンで、途切れてしまいました。
やっぱり義理チョコとして渡すのが一番ですよね・・・今更ながら、調子に乗ってハート型のチョコにした事を後悔してします。

ホームから、ベルの音が聞こえてきた・・・心臓の鼓動が激しくなっていくのが、分かります。
列車は静かにホームに滑り込み、沢山の荷物を抱えたおばちゃん、ホームに降りてスグ携帯で電話をかけるサラリーマン、おなじ高校3年生なんだろうか自由登校っぽいキャピキャピした女子校生の集団が降りてきた。
そしてそんな女子を尻目に足早にホームに降り立つ男子も・・・



ひとしきり往来が有った後、駅にはまた静寂が戻った。
どうやら田中くんは、この列車じゃなかったみたいです。
本当にバカバカしい事をしている自分が恥ずかしくなり、小走りで自転車小屋に向かった。

折角作ったチョコなんだし、捨てるのは忍びない。
隣に止まっている田中君の自転車の前かごに、チョコを放り込む。
そんな事したら、他人が盗っちゃうかもしれないけど、それならそれでも良いと思った・・・どの道、田中君の手元には届かない運命だったって事なんだから。

自転車にまたがり、力任せにペダルを漕ぐ。
自転車はグイグイ加速していく。
信号が青から点滅して赤に変わる頃、もう駅が見えない距離まで走っていた。
自転車を降りて、信号が青になるのをじっと待つ・・・まだまだ走り足らない、もっともっと遠くに行かなきゃ。
信号が青に変わったら、もう一度地面を蹴ってペダルを漕ぎださなくっちゃ。

・・・こう言う時に限って、信号を長く感じるんですよね
取りあえず、呼吸を整えておこう。
そう思い、「すううううぅぅぅぅ」わざとらしい音を立てながら、冷たい空気を吸い込む。



「あっ・・・」
そう言えば、クリスマスイブに交わしたキスの時、田中君が「すううぅぅ」って深呼吸しちゃって、思わず吹き出してしまった事を思い出した。

確か、彼の部屋でラブコメディのDVDを見ていた時だと思う。
主人公とその彼女がラストシーンでキスをするのに、思わず胸がキュンっとなっちゃって・・・田中君の方をチラッと見ると、彼も私の方を視線の端に入れているのが分かった。
「なぁ、キスしてみよっか?」
彼が静かにそう呟く。私はノリで軽く頷いていた。
互いの目を見つめ、タイミングを図る・・・ここぞとテンションが盛り上がった瞬間、彼は思いっきり深呼吸をした。
その気の抜けた「すうぅ」って音に、思わず吹き出してしまった。
「ちょっと、そんなに気合いを入れなくってもぉ」
「だって、キスの最中に息苦しくなったらどうするんだよ」
そう言われて、私も思わず考え込んでしまった。
どの雑誌にもキスの先の事は書いて有っても、キスの仕方については、殆ど触れていない事が多かったからだ。
それだけ簡単な事なのかもしれないけど、キス未体験の私にしてみれば、それだけでも重要な問題だ。
ん? って事は・・・田中君もキス未体験って事なん?
普段背伸びをしてちょっとカッコイイ事言ってるけど、実はめっちゃ初な性格だったんですね。
そう考えると、今まで散々私を子供扱いしてきた事の腹いせをしたくなってしまった。

「じゃあボクぅ、ちゃんとお勉強してくるまで、キスはお預けねぇ」
「何だよそれ~、そのめっちゃ上から目線はなんなんだよ~」
そのちょっぴり泣きそうな情けない顔を両手で引っ張り寄せ、唇を寄せた。
「・・・・・」「・・・・・」
「ねっ、深呼吸必要無かったでしょ?」「あぁ」お互い顔を見合わせて、笑った。



・・・・・・
何もこのタイミングで思い出す事ないですよね。
気がつくと、また雪が舞い始めていました。
すこし落ち着いた息が、白く雪空に溶け込んでいくのを、もう一度眺める。

小ちゃな思い出だけど、私には失いたくない大切なストーリー。
ふられるかもしれない、OKだったとしても3月には終わってしまうかもしれない。
でも、せっかくの思い出をうやむやなまま終わらせてしまっては、何もならない様な気がした。
大切な思い出だからこそ、しっかりけじめを付けておかなくっちゃ、辛い別れで終わりと分かっていても、最後の1ページまで書いておかなくちゃ、後悔しちゃいますよね。
同じ後悔するなら納得いく後悔をしたい。

気がつくと、私は寒空の中、もう一度駅に向かってペダルをこぎ出していた。
ぐいぐい加速していく・・・どんどん加速していく・・・

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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

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