FC2ブログ
松舞町ラブストーリー
山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね。
カウンター

最近の記事

カレンダー

07 | 2018/08 | 09
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

月別アーカイブ

カテゴリー

QRコード

QRコード

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ラスト・クリスマス
「いらっしゃいませ~いらっしゃいませ~」「ついに出ました、新製品の‥‥‥」
僕は、サンタクロースの格好をして、アルバイトの女の子と一緒に、声を張り上げて呼び込みをしていた。
12月に入り、一つのプロジェクトを任される様になり、プロジェクトリーダーとして忙しい日々が続いています。
詩音の方はと言うと、引き続き就職活動しており、それに加えて卒業制作も始まったそうで色々と忙しいみたいで、メールすら交わせない日々が続いています。
でも、ちょっぴり仕事が面白くなってきて、少しだけ充実した日々を送っていたりする。
こんばんわ、ご主人様28号こと村下隆文です。
―――――――――12月24日(金)―――――――――
街行く人々は、クリスマスイブが忙しいのだろう、僕らの呼び込みに気を止める様子も無く、足早に通り過ぎて行く。
辺りは暗くなり始め、クリスマスイルミネーションが今年最後の輝きを見せ始め、遠くから、6時を告げる金の音が聞こえてきた。
空を見上げると、雪が舞い始めている。
「ラス~ト クリスマス ソふふ ふんふん‥‥‥」
ワムの「ラスト クリスマス」を口ずさんでみるが、サビの出だし以外は歌詞を知らない。
そんな自分がおかしくて、少し笑ってしまった。

「お~い。一応目標数はクリアしてるし、今日はもう終わりにしようか。

バイトの女の子に声を掛ける。
「でも、バイトは7時までの契約ですよ」
「ゆっくり片付けてたら時間なんてすぐ経つさ、それにクリスマスイブなんだから予定が有るんだろ。さっさと片付けて上がっていいよ、ちゃんとバイトは7時までで報告上げとくからさ。」
「マジですか?ありがとうございま~す♪ あっ、でも実は予定が入っているのは、村下さんの方じゃないんですか?」彼女は慣れた手付きで、荷物を片付けていく。
「俺? 俺はフリーだぞ。ひょっとして俺のシングルベルに付き合ってくれるんか?」
「う~ん、今日は先約が有りますから遠慮しておきます。今度、金欠の時に誘ってくださいよ。」
「馬鹿、俺だって毎月金欠なんだから。ほら、その荷物詰め込んだら終わっていいぞ」
「ありがとうございます、じゃあお先に失礼致しま~す」


「さて、一服してから車に詰め込むかぁ」冷めてしまった飲みかけの缶コーヒーを飲み干し、広場の向かい側の公園の喫煙コーナーへと歩き始める。
腕を組み楽しそうに歩くカップル、大きなプレゼントボックスにはしゃぐ子供達、クリスマスケーキの箱を手に家路を急ぐサラリーマン。
街中からクリスマスソングが流れ、世の中全体がクリスマス気分で浮かれている。
こっちは、詩音との予定が有る訳でもなく、直帰してコンビニ弁当で夕飯済ませたら、ビール片手に今日の報告書を課長にメール送信して眠るだけ。
金曜日の夜、増してやクリスマスイブだと言うのに、合コンやパーテ
ィーのお誘いもなく同僚との飲み会の予定すらない。
「何で、こうなんだろうなぁ」つい愚痴ってしまう。
詩音との生活を夢見て就いた仕事なのに、実際にはその仕事が二人の距離を遠ざけている。
詩音もなかなか就職が決まらず、毎日ドタバタしているので、大なり小なり衝突してしまう事が増えた。
時期的な一過性の物とは分かっているけどが、それでもやっぱり滅入ってしまう。


公園の手前で、子供の手を引くお母さんとすれ違った。
「ママぁ、サンタクロースさんだぁ」
「ほんとだね‥‥‥あれ?‥‥村下君?」
その声は‥‥‥
忘れもしないさっちゃんの声だった。
「山瀬さん? うわっ偶然。確かこの前会ったのも暮れだったよね、娘ちゃんも大きくなったな。

「そうそう大晦日の新玉線の中だったね。優はね、もうすぐで3歳になるんよ。でもどうしたん?こんな所でそんな格好して

「仕事だよ仕事。新商品の販促プロジェクトを任されたんだよ。」
「そっか、凄いじゃないの。んで、どんな仕事してるの?」
「これだよこれ。それと‥‥‥はい、これは優ちゃんにクリスマスプレゼント

僕は新製品のパンフと、景品のマスコット人形詰め合わせセットを渡す。
「あっ、これ知ってる。へぇ~村下君、ここに勤めてるんだ。」
「まぁ、まだまだ下っぱだけどね。 ところで山瀬さん、こんな所でどうしたんよ?」
「こんな所って、ここは思いっきり地元だよ、覚えてないさいたま市に住んでるって言ったの?」
‥‥‥そう言えば、去年会った時にそんな事聞いた様な気がした
「そうかそうか、そう言えばそんな事言ってたね。じゃあ今日はクリスマスのお買い物?」
「そう、今からスーパーに行くところ、今夜は優と二人でクリスマスパーティーなんだ。 村下君、彼女さん元気?詩音さんだったっけ?」
「あぁ、元気だと思うよ」
「思うよって、うまく行ってないの?」
「いや、別れた訳じゃないんだけど、お互い忙しくって、ここん所会ってないんだよな」
「ダメじゃん、村下君には幸せになってもらわないと、松舞駅でサヨナラした意味がないじゃないのよ」
「そう言うなよな。俺だって頑張ってんだから。」
「ごめんごめん、責めるつもりはないんよ。 私だって、意中の人は居るけど、相変わらずシングルなんだしさ。」
「なんだお互い様じゃんか(笑) お互いなかなか、上手くいかないもんだな。」
「そんなもんじゃないのかな。でもそれなりに幸せだよ私。」
「そりゃ俺だって一緒さ。今はそれなりに充実した日々を送ってるぞ」
どうしてなんでしょうね、山瀬さんの前ではついつい意地を張っちゃってます。
「また~無理しちゃって」クスッと笑う山瀬さん。

僕の気持ちを見透かされてますね。
「お互い相変わらず意地っ張りだよね。あの時と同じだね。」
さっちゃんは、空を見上げながらそう呟いた。
「そうだな、成長いる様な気がするだけで、本質は何も変わってないかもしれないな」
「変わった点は、私には優が居て、村下君には別の彼女居る事だね」
「そう言われると、ちょっぴり切ないよな。」
「あらっ、だってもう私の事なんて忘れてたんじゃないの?たっくん」
「そんな事ないよ、さっちゃん。さっちゃんは、いつまでも俺の大事な人だから」
「ちょっと、そんな事言ったら詩音さんに失礼でしょ。デリカシーの無い所もあの頃のままなんだからぁ、たっくんは」
「確かに詩音の事は大好きだ。将来の事だって真剣に考えてる。でも‥‥‥」この先の言葉を言ってしまったら、僕はまた自分が苦しむ様な気がして怖かった。
「でも、何?」さっちゃんが、少し目を潤ませながら僕を見つめる

「いや、何でもない‥‥‥冷えてきたな、こりゃ本格的なホワイトクリスマスになりそうだね。
僕は空を見上げる。
「そうね」山瀬さんも空を見上げる。
「ママぁ、お腹すいたぁ」優ちゃんが山瀬さんにすがりついて来た。
「あっゴメンね優ちゃん。ママを引き留めちゃって。早く帰ってクリスマスケーキ食べなきゃね」僕は屈み込んで、優ちゃんに話し掛ける。
「うん。サンタさんも一緒に食べる?」
思わず山瀬さんの顔を見上げる。
彼女は困った様な、でも少しだけ嬉しそうな顔をしていた。

その笑顔の意味は、聞くまでもなく分かった様な気がする。
もし、ここで「一緒に食べる」って言ってしまえば、僕達の距離が以前の様に縮まるだろう。
でもそれを言う事によって、二人の3年間が無駄になってしまう。
別々の道を歩むと決めて、過ごしてきた3年間が。
お互いに思う人が居る今、二人で過ごす日々は意味の無い物に思えた。
それよりも、また破局を迎えるのが怖かった。
折角の素敵な思いでの一日が、壊れるのが怖かった。
やっぱりあの日の約束を貫こう。
こんな時まで意地を張る必要は無いのかも知れない。
でも、この日の為に意地を張って今まで生きて来たのかも知れない。


「ゴメンね優ちゃん、サンタさんはこれからまだ沢山のお友達にプレゼントを配らなくちゃあいけないからね。ママと、サンタさんの分まで沢山ケーキを食べちゃってくれるかな?」
「うん」優ちゃんはコクリと頷いた。
「来年は、サンタクロースがケーキを食べに行くかも知れないから、それまで良い子にしておくんだよ」そう言いながら軽く頭を撫でてみた。
‥‥‥そう、僕じゃなくて別のサンタクロースが、ママと優ちゃんの元に現れる事を願ってるからね。

「じゃあ山瀬さん、俺、荷物の積み込みが有るから‥‥」
「うん、引き留めちゃってゴメンね村下君」
「俺こそゴメン。さっちゃんにもサンタクロースがプレゼント持ってくると良いな」
「ふふふ、そうだね。たっくんにもね。じゃあ、元気でね村下君」
「おう、山瀬さんもな。風邪ひくなよ。」
僕は、公園の向こうの駐車場に向かって歩き始めた。
プレゼントかぁ‥‥‥
僕は、十分なプレゼントを貰えた気がしていた。
クリスマスイブの夜に、「たっくん」「さっちゃん」と呼び合い、一瞬でもあの日に戻れた事が何よりのプレゼントだったと思う。


「‥っくん」
その声に振り返る。
さっちゃんが、優ちゃんを抱きかかえながら大きく手を振っていた。
「さっちゃん」
僕も大きく手を振り返す。
彼女は小さく頷いた後、後ろを向き歩き始めた。
僕も前を向き、少し大股で歩き始めた。
近くの店から、ワムの「ラスト クリスマス」が聞こえてきた。
「洒落になってねえなぁ」僕は少し微笑み、空を見上げる。
街明かりに照らされ、雪達が静かに舞っていた。



松舞ラブストーリーアーカイブ
 
ショート・ショート編
モリヒデ・ヒグラシ編
颯太・朝葉編
洋介・日向編
幸一・真子・美結編
御主人様28号・詩音編
比呂十・美咲編
優ママ編
本田・楓編
ある高校生の夏休み編【完結】
(小夜曲)sérénade編【完結】
楓・青木先輩編【完結】
本田・沢田編【完結】
2009年収穫祭編【完結】


blogram投票ボタン
スポンサーサイト

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://matumai.blog57.fc2.com/tb.php/216-9d669005
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。