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松舞町ラブストーリー
山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね。
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桜の咲く頃
バイトの帰り道、下北沢の駅前通りを抜け、小さな公園の中を歩く。
ふと、見上げた空には、満開の桜。
早いもので、上京してもう1年が経つんですね。
こんにちは、颯太です。
―――――――――4月4日(日)―――――――――
♪♪♪
ん?朝ちゃんからメールです。
「颯太君、もう下北の駅に着いた? 今、夕ご飯の準備してるけど、ワインが無くなってました。銘柄はお任せするので、一本買って帰って下さい。因みに今夜のメニューは、チキンのオレンジ煮です。」
春休みに入ったんですが、僕らは松舞に帰らず、下北沢で一緒に過ごしてます。
「オレンジ煮かぁ・・・なら、フルーティーなスパークリングワインだよな。」
チキンのオレンジ煮は、鶏肉をオレンジジュースで煮込んだ、朝ちゃんのオリジナル料理です。
濃厚なオレンジソースの、香りの奥に広がる酸味と甘み、そして苦みのバランスが絶妙なんです。
朝ちゃん曰く、「鶏肉のコーラ煮を、アレンジしただけ」って言ってますが、やっぱり彼女は料理の天才です。

アパートの近くの商店街に入る。
松舞商店街より、短く小さな商店街なんですけど、活気に溢れてます。
商店街の入り口に有る100均の店頭に、「新生活スタートセール」のポスターが、貼ってあった。
僕も去年の春、この店で朝ちゃんと色々な生活必需品を買いました。
その先のいつも使っている、個人経営のスーパーに入る。
そう言えば、初めてこの店で買い物した日の帰り道、嬉しくってつい買い物袋を振り回していたら、取っ手の部分が引きちぎれてしまい、生卵が割れちゃって、朝ちゃんに怒られました。
その日の夕ご飯の超特大オムレツは、今でも笑い話になってます。

お目当てのスパークリングワインを探して、リカーコーナーを目指していると、いかにも高校卒業したてって感じの男の子が、キョロキョロしながら、ぎこちなく野菜コーナーを歩いていました。
有りました有りました、僕にもそんな時が。
朝ちゃんと買い物する事が多かったんですが、たまには、僕一人で買い物する事も有りました。
今まで、野菜や肉を買いに、スーパーに行く事なんて無かったですから、新鮮な野菜や肉の選び方、そして値段の高さに、オロオロしてましたよ。
まぁ今じゃ、賞味期限をチェックして出来るだけ、棚の奥の方から商品を取るのにも、抵抗が無い位になってますけどね。

しかし月日が経つのなんて、あっと言う間なんですね。
上京の朝、松舞駅を出発した列車の中で朝ちゃんの手を握りしめていた事。初めて降り立った東京駅、そして電車を乗り間違えた事。初めて結ばれた夜の事。全ての出来事が、つい昨日の様に思い出されます。
ウォークマンでBGM代わりに聴いていたFMラジオのドラマ番組から、渡辺美里の10yearsって曲が流れてきた。
俺が小さい頃、両親が良く聴いていた曲です。
♪この先10年も~・・・
朝ちゃんと一緒に居られたら・・・ふっと、そんな事考えて、一人赤面してしまう。
でも、それって本心なんですから仕方ないですよね。

お目当てのスパークリングワインを抱えて、アパートの階段を駆け上がる。
僕の部屋のドアから、甘酸っぱいオレンジの濃厚な香りが漂っています。
この香りの向こうには、大好きな朝ちゃんがお気に入りの曲を口ずさみながら、キッチンに立っている。
一人、幸せを噛み締めニヤニヤしながら、ドアノブを握る。
「ただいま~」ドアを開けると、狭いキッチンに立つエプロン姿の朝ちゃんが居た。
「おかえり、颯太くん。お疲れさまでした。」
僕は誇らしげに、スパークリングワインを掲げながら、朝ちゃんを抱きしめる。
「ちょっと颯太くん・・・今、コンロに火が入って・・・」
優しくキスをする。
そしてもう一度、「ただいま」って呟く。
「おかえり、颯太くん」朝ちゃんも、もう一度呟く。
ただ、そのセリフを聞きたかった、そして幸せを実感したかった。
「もう少しでご飯出来るから、テーブルの上を片付けておいて。」
そう言うと朝ちゃんは、僕の腕からすり抜けていった。

居間兼寝室の洋室に入り、ステレオのスイッチを入れ、さっきのラジオドラマの続きを聴きながら、テーブルの上教科書やノートを片付ける。
どうやら朝ちゃんは、僕を待つ間、勉強をしていたみたいですね。
そんな真面目な所も大好きです。
あらかた片付け終わった頃、携帯にメールが届いた。
チェックしてみるとモリヒデからのメールだった。
なんだ?また金田と喧嘩でもしたんか?
そんな事を思いながら、メールをチェックする。
「颯太、元気かぁ?なんかメールするの久しぶりって気がする。
緑川も松舞に帰ってないって聞いたけど、って事は二人で過ごしてんのかな? まぁ、失敗しない様に」
って、何を失敗するんだぁ(^^;)ゞ
「今、ヒグラシに付き合って、雲山のサティーに来てんだけど、何で女ってウインドウショッピングが好きなんかねぇ。
俺は飽きてしまったから、エスカレーター脇のベンチに坐って、コーラ飲みながらこうしてメール打ってる。
やっぱ緑川もそうなんか?」
う~ん、そう言えば確かにそうかも知れない。まぁ俺は出来るだけ、付き合う様にはしてるけどね。
「こっちの近況を話すと、うちの会社にも新入社員が入って、俺もついに先輩になったぞ。
ただ、学生と違って春休みなんて無いから、毎日忙しいんだけどな。
ヒグラシは無事2年生に進級出来た。
新学期早々、就活を始めなきゃいけないらしく、忙しくなるらしい。
一応松舞か雲山での就職考えてるそうだ。」
そりゃ、金田だってお前の傍に居たいだろうな。
モリヒデは社会人だし、金田は就活って聞くと、自分だけ周りの環境に取り残された様な気になります。
でも焦った所で、こっちは後3年間は大学生活しなきゃいけないんですけどね。
人は人、自分は自分ですよね。
「相変わらず、よく喧嘩するけど仲良くやってるぞ。
そっちは、相変わらずイチャついてんだろうな(笑)」
大きなお世話だ!
「ここだけの話だが、最近ヒグラシとの結婚をマジで考えるようになった。」
嘘だろ~マジかよ~
「どうしたの?颯太くん?」つい、声を挙げた物だから、台所から朝ちゃんが尋ねてきた。
「朝ちゃん、ゴメンゴメン。何でも無いって」
結婚の二文字には、びっくりしました。
「ヒグラシは学生だし、まだまだ先の話にはなると思うけど、あいつしか居ないって思っている。
まぁ、食事はヒグラシに作ってもらってるし、平日の夜も結構二人で過ごしているから、今時点でも半同棲生活みたいなもんだけどな。
まだ、正式に挨拶はしてないけど、ヒグラシのお母さんや、大家さん一家には、家族同然に可愛がってもらってる。
この前なんか、皆で大家さんの家で呑んでたら、大家さんが酔っぱらって、『森山君、孫の事・・・佳奈絵の事をよろしく頼むよ』って、泣き付かれて大騒ぎだったぞ。
颯太は、授業が忙しいだろうし、まだ大学生活が3年も残ってるから、ピンと来ないかも知れないけど、俺はマジでヒグラシと一緒になるつもりだ。
おっと・・・ヒグラシが少し怒った顔で、こっちを見てるわ(^^;)じゃあ、またメールするわ。」
メールを読み終えて携帯を閉じる。
・・・結婚かぁ。
全く考えた事無い訳じゃないけど、まだまだ先の話だと思ってる。
でも、同い年の奴しかも一番仲の良いモリヒデが、そんな事考えていると思うと、益々取り残された気分になる。
うつむく僕を、朝ちゃんが心配そうに覗き込んできた。
「どうしたの颯太君?大丈夫、何か有った?」
「あっ、ゴメンゴメン何でも無いって。モリヒデから久しぶりにメールが来たんだ。」
「どうしたの?また、カナカナと喧嘩でもしたの?」
「あはっ、やっぱり朝ちゃんもそう思った(笑)
そうじゃなくて、モリヒデの奴、金田とけっ・・・」
僕は言葉に詰まった。
「結構、上手くやってるみたいだよ。今も、雲山のサティでウィンドウショッピング中だってさ」
「そうなんだ・・・そうよね、私達がずいぶん助け船出してあげたんだから、上手く行ってもらわなきゃあね。
ご飯の準備出来たよ、運ぶの手伝ってね♪」
「あぁ、今行くよ」
朝ちゃんが、結婚って事を意識するのが、怖くって恥ずかしくって、つい結婚って二文字を言葉に出来なかった。
別に逃げた訳じゃない、俺だって朝ちゃんとの将来を夢見る事も有る。
ただ、学生の僕達には、それは余りにも現実離れした話であって、漠然とし過ぎているだけだった。

テーブルの上に整然と並べられていく料理を見ていたら、少し気分も晴れてきた。オレンジ煮

モリヒデにはモリヒデの、俺には俺の幸せが有るって。
今の俺には出来ない事を、モリヒデがしている様に、モリヒデ達には出来ない事を、俺たちはやっているんだ。
朝ちゃんのワイングラスに、黄金色のスパークリングワインを注ぐ。
グラスから湧き出る小さな泡を、朝ちゃんがうっとりと眺めている。
そんな朝ちゃんを、愛しく思えた。
今は、それだけで十分だ。ただ傍に居てくれるだけで、それだけで十分だと思う。
俺は、朝ちゃんにワイングラスを差し出し、静かにグラスを鳴らした。


松舞ラブストーリーアーカイブ
 ある高校生の夏休み編【完結】
(小夜曲)sérénade編【完結】
ショート・ショート編
モリヒデ・ヒグラシ編
颯太・朝葉編
洋介・日向編
幸一・真子・美結編
楓・青木先輩編
御主人様28号・詩音編
比呂十・美咲編
本田・沢田編
優ママ編
本田・楓編
2009年収穫祭編【完結】


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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

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