松舞町ラブストーリー
山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね。
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僕の彼女は・・・
秋葉原は今日も、朝から人が多くて、人息れにむかえりそう。
う~、朝から、暑いです。。・゚・(ノД`)
上からは太陽、下からはアスファルトの副射熱・・・全身コンガリ焼き上がっちゃいます。
僕の出身地、松舞町とは異質の暑さです。
初めまして、村下隆文って言います。
都内の専門学校に通う20歳です。彼女居ない歴20年です。
―――――――――7月20日(月)―――――――――
 秋葉原
(・_・)エッ、なぜ、朝から秋葉原に居るかって?
そうそう「オタク」だから・・・
違~う(゚Д゚)凸
デートですよデート。(^◇^)v
何で秋葉原かって?
うん、話せば長くなるんですが・・・

名前は、紫苑って言うネットフレンドなんです。紫苑はもちろんハンネです(ちなみに僕のハンネは賛否両論有るんでしょうが「御主人28号様」です・・・)
つまり、今日はオフデートなんですよ♪(ただのオフ会じゃないの?って、言われそうですが、紫苑ちゃん自らオフデートって、書いていたから間違いなくデートです!)
ん?出会い系?
ちっ違いますよ~、普通にアーティストのBBSで、仲良くなったんですぅ(・へ・)フンッ
紫苑ちゃんの、パソコンが調子悪いって書いてあったから、色々と解決方法を教えてあげたんです。
本当は禁止なんですが、そのうち直にメールでやり取りする様になって、意気投合しちゃって、今回パソコンを新調したいってメールが来たから、「んじゃあアキバに買いに行こうか」って話になって・・・
やっぱり、デートじゃないじゃんって・・・( ̄□ ̄;)!!
そう言えばそうですねOh my god!/( ̄口 ̄;)\
ん~でも、紫苑ちゃん自体がデートだって言ってるし・・・
大体、考えてみたら向こうは高校生だって言ってたけど、年齢サバ読んでるかも知れないし・・・
いや・・・それ以前にネカマだったり・・・
いたずらだったりして・・・ρ(..、) ヾ(^-^;)

ちょぴり、ブルーな気分とワクワク感と入り混じった気分で、待ち合わせ場所のANIMATEの前に立っていました。
もうすぐ待ち合わせの12時です・・・
しかし、さすがアキバですね~色々な種族が入り乱れてます・・・一般ピーポーやオタク系などの人間に混じって、スーパーサイヤ人や猫とのハーフの人達や・・・(笑)
メイドさんも、沢山居ますね・・・必死にチラシを配ってます。
一人のメイドさんが電気街口の方から歩いて来て、僕の前に立ち止まりました。
あ~こら、折角のデート?なんだから、邪魔しないでくれよ。メイドカフェなんか行ってる場合じゃないんだよ~
「御主人28号様さんですか?」
あ~、だからこんな街中でそのハンネを言うなぁ~、もう少しまともなハンネにしておけば・・・!
∑(゚ω゚ノ)ノ えっ?えぇ~? なんで僕のハンネを知ってんだ、このメイドさん?
「やっぱりそうですね、初めまして紫苑です」
改めて、彼女の方をじっと見つめる・・・
ゴスロリファッション?・・・いやどう見てもメイド服です・・・
「あっ、はい・・・御主人様28号です・・・」
ひょ、ひょっとして、新手のキャッチに引っ掛かってしまったかぁ(´A`)=3
「えへぇ、ビックリしちゃいました?この格好・・・、この格好で山手線乗るのって、結構度胸いったんですよ~」
あ~そんなアニメ声で訴えられたら、僕の潜在意識の中のオタク魂に火が点いちゃうじゃないですか。
「あっ・・・コスプレお嫌いですか?」
「いっいや・・・全然・・・ただちょっとビックリしただけ・・・」
「すっスイマセ~ン、御主人28号様~」深々と頭を下げる紫苑ちゃん。
う~ん、僕のハンネがシチュエーションにぴったりハマってます(笑)
「そんな、謝る事無いって・・・ そうだ、お昼もう食べちゃった?」
「えっ?まだですぅ~御主人28号さまぁ~」
・・・・・
まっまぁ、いっかぁ~

いっつもなら、その辺りのラーメン屋で、済ます所なんですが、今回は何て言ったって、デートですから。少しは、オシャレなお店で食事したいですよね。
もう一度言いますけど、デートですから~ぁ
ネットであれこれ調べた結果、移動距離とお財布の中身と相談して、秋葉原UBXの中の、コース料理のお店に行きました。
「うわぁ~、結構オシャレなお店ですねぇ。いっつも、秋葉原行くと、ケンタかラーメンばっかりですから・・・」
うっ・・・、ラーメン屋でも全然OKだったって事かぁ・・・
「へぇ~紫苑ちゃん、アキバとか来るんだ。」
「はい、友達とちょくちょく来てますよ」
友達?・・・
「あっ、もちろん女友達ですよ。男子の知り合いなんて居ないですからぁ」
「そっそうか・・・。でも、女の子同士でアキバ行っても、遊ぶ所少ないしょ?」
「う~ん・・・そうですよね・・・いっつも何してるんでしょう私達・・・てへっ」
ペロッて舌を出す紫苑ちゃんが、妙に可愛くって、思わず見惚れてしまいました。
「やだ~、御主人28号さま~。そんなに見つめないで下さいよぉ」
この店でその名前は~
さすがに秋葉原とは言え、周りとの温度差を感じます。
「そう言えば、未だ本名言って無かったよね。俺、村下隆文。」
彼女は少し困った顔をしたけど、「私の本名は、秘密ですぅ~」
「あっ、ずるくねぇ(笑) まぁ、良いけどね。みんなからは、よく村さんって呼ばれてる。」
「え~、折角御主人28号様って、抵抗なく言える様になったのに~」
う~ん( ̄~ ̄;) 困った・・・
「でも、御主人28号様が、そう呼べっておっしゃるなら、そうするですぅ」
・・・そんなうるうるした瞳で見つめないでくれ~マジでやばいよ俺・・・
「ところで紫苑ちゃん、今回、どんなパソコンに買い換えたいの?」
「え~っとぉ、紫苑はですねぇ・・・う~ん・・・パソコンの事よく分かんないですからぁ。とりあえず、iPODに繋げれて、外でもネット出来るんなら、それで十分ですぅ」
「う~ん、それなら、持ち運びやすいネットブックが良いかな。あっ、オンラインゲームとかするの?」
「はい、すごく大好きですぅ。メイプルストーリーやテイルスウェイバー結構ハマりましたね」
「テイルスは、僕もハマったなぁ 案外、一緒にパーティー組んでたかもね。」
「あはっ・・・それは有りうりますね ねぇ今度一緒にパーティー組んでみましょうね」
「そうだね・・・その時は又連絡するよ・・・あっ、で、話戻るけど、オンラインゲームとかするなら、スペックが良い方がいいよねぁ・・・予算は如何ほど?」
「一応、3万円持ってきました、後、コンビニか銀行行けば、2万は下ろせますぅ」
う~ん、最高5万かぁ・・・ちょっと予算的には厳しいかな・・・
「ネットブックだと、結構CPUに負担かかっちゃいますよね・・・。きっと外でまでオンラインゲームする事無いですから。家にはもう一台、デスクトップパソコンが有りますし・・・」
えっ?なんだ他にもパソコン有るんだ・・・結構リッチだなぁ(・_・;)
「じゃあ、ネットブック路線で決定だね」
「はいぃ~そうしますぅ~」

「あ~、美味しかったですぅ~、ピザとパスタのコース料理って、初めてぇ。でも本当に御馳走になって良かったんですかぁ?」
「んっ? いいよいいよ。」
「じゃあ、今度は紫苑がデザート御馳走するですぅ。その前にパソコン見に行くですぅ」
紫苑ちゃんは僕の腕を掴んで、グイっと引っ張った。
参ったなぁ・・・いきなり積極的なんだから・・・
「あのぅ~村下さん、お店を出た事ですし、また、御主人様って呼んでもいいですぅ?」
いや・・・それは、ちょっと・・・あ~、そんなに瞳をうるうるさせながら、見ないでくれよ~
あ~、もういいやぁ、こうなったらトコトン今日のデートを楽しむぞ。
「いいよ、紫苑ちゃん」
「わ~い、紫苑ギガント幸せだお。ありがとうございます、御主人28号さまぁ」
「いや、28号は要らないから(笑)」
「はい、御主人様」
そして、僕達は中央通りの一本裏側に有るパソコンショップが集まった通りへと、歩きだした。
歩きながら、オンラインゲームや、そこから派生してアニメや漫画の話題に・・・
僕も、そっちの少しオタクっぽい話題、嫌いじゃないから結構話が弾んじゃってます。
もし、もっと早く紫苑ちゃんと知り合っていたら、成人式を迎える迄、まともに女の子と話出来ないなんて事は、無かったんだろうなぁ
・・・そう言えば、いつ治ったんだろう?女の子の前で緊張する癖。
そうか、治ったと言うよりは、紫苑ちゃんがこんな明るい(明る過ぎ?って言うか脳○気?)性格だから、普通に喋れてるんだろうな。
「御主人さまぁ~、どうにかしましたあぁ?」
「えっ、ごめんごめん・・・しかし、紫苑ちゃんって、ほんと明るい女の子だね。」
「やだ~、御主人さまぁ~、紫苑そんな事言われたら照れちゃいますぅ」
萌え~・・・う~ん、この甘えたアニメ声は、癖になりそうだ・・・

ひと通りショップを回り終わった頃には、午後3時を回ってました。
「御主人さまぁ~、紫苑疲れたですぅ~どっかで休憩したいですぅ」
そうだよな、ひと通りショップ回って目星を付けたし・・・休憩しながら作戦会議でもしようかな・・・
「ゴメンゴメン、気が付かなくって、どっかで冷たいジュースでも飲もうか?」
「なら、イイお店を紫苑知ってますぅ・・・そこのクレープがギザウマス」
そう言うと、紫苑ちゃんは、僕の手を握って歩き出した。
せっ積極的だなぁ(^^ゞ
「ここですぅ、御主人さまぁ・・・あっ、お店の中では『御主人さま』は禁止ですよね♪」
僕は、コーラとチョコクレープ、紫苑ちゃんはオレンジジュースにフルーツクレープを頼んだ。
「あっ、紫苑ちゃんのお勧めの店だけあって、確かに美味しいや。」
「でしょ~、ここのクレープは、仲間内でも有名なんですよぉ」
仲間内?なんの仲間内だぁ(゜_。)?
「それで、よさそうなネットブック有りましたぁ?」
「あ、ああ・・・最初の方に行った、ソフマップの中古デジタル・モバイル専門店が、一番品揃えも多くて、もしイーモバイルも一緒に買うんだったら、すごく安くなるよ。あっ、でも紫苑ちゃんは未成年だから、親の承諾書とか居るかぁ」
「・・・多分・・・いや、絶対大丈夫だと思います・・・」
「そう? じゃあ、これ飲んだら行こうか」
「はいなのですぅ~」

「御主人さまのお蔭で、ギザやっすく可愛い色のネットブック買えましたぁ」
紫苑ちゃんは、ピンクのネットブックを1円で購入する事が出来て御機嫌です。
ただ、不思議なのは、僕が他のPCをチェックしている間に、ちょちょちょっと、パソコンを購入した事です。
クレープ屋でも確認したけど、本当に親の承認とか大丈夫だったのかなぁ?
「それじゃあ、御主人さまぁ、今日は本当にありがとうございましたぁ。紫音は門限が有るから、もう帰りますぅ また、デートに誘って下さいねぇ~」
そう言いながら、紫苑ちゃんはメイド服のスカートを翻しながら、雑踏の中に消えていった。
う~ん、本当紫苑ちゃんはギザカワユス♪
でも、本当に次のデートなんて有るんだろうか? ちょっと、不思議ちゃんだけど、絶対彼氏が居てもおかしくないよな・・・
♪♪♪
!?メールです、ひょっとして紫苑ちゃんから?
・・・・・・残念、同じクラスの友人小倉からでした・・・
何何・・・「合コンメンバーに欠員が出たから、来ないかって? 今日6時に御茶ノ水駅前に集合。料金は前払いで徴収済みだから、要らないぞ」かぁ・・・
そう言えば、あいつ等今夜アニメ系専門学校の女子達と、合コンするって言っていたなぁ
うん、なんか、紫苑ちゃんに勇気をもらっちゃいました。参加してみようかぁ。
「了解、直ぐに向かう」そう短く返信メールを打つと、僕は中央線に飛び乗った。

御茶ノ水に着いたのは、ちょうど6時でした。
雑踏の中に、友人達を見つけ軽く手を挙げる。
あっちも僕に気付いて、手を振り上げている。
「いよ、村さん、女子高生とのデートはうまくいったか?・・・うまくいってんなら、今、こんな所に居ないかぁ」
ははは・・・って笑われた。
いや、小倉よ、笑っている場合じゃないし・・・
「ところでなぁ、今日の合コン相手だけど、他のクラスの奴に聞いた話だと、あの専門学校の女子は、オタクが多いらしい・・・そう所謂、腐女子の集まりらしい。」
「マジ? ひょっとしてそれで、ドタキャンが出たの?」
小倉は、コックリ頷いた。他のメンバーも、少し冴えない顔をしている。
「なぁ・・・あの子たちじゃねぇか?」メンバーの一人が、交差点の向こうを指差した。
すわっ・・・セーラー服着た女の子や、訳の分かんないコスチューム身に纏った女の子の集団が、歩いてくるぞ・・・Σ(゜ロ゜ノ)ノ ヒィィィィ!
その中に、見覚えのある洋服を見つけた・・・
紫苑ちゃんと同じ、ゴスロリチックなメイド服だ。
えっ!?紫苑ちゃん?
向こうも、こっちに気付いてずごく焦っている・・・やっぱり紫苑ちゃんだ。
「こんばんわ、村下さん・・・てへっ」
いや・・・てへって え~っ/( ̄口 ̄;)\
「あれっ?、何、知り合いなの?」他の女の子が、紫苑ちゃんに声をかけた・・・
「うん、ちょっとね」
「何だ、村さん、女子高生とデートしてる場合じゃないじゃん、こんな可愛い子と知り合いなんて」
いや・・・その女子高生が目の前に立ってんだけど・・・
「まぁ、立ち話も何ですからぁ~」そう言って、小倉が合コンメンバーを、飲み屋に案内した。

一頻り、騒いだ後、紫苑ちゃんが僕の横に座って来た。
「へへっ、驚いたでしょ、村下君・・・ごめんね、騙す様な事になっちゃって。実はね、うちの高校生になる妹が、勝手に私の名前を捩って、BBSに書き込んでたのよ。私の本名は、福富紫苑・・・紫に苑じゃなくて、詩に音で、詩音。パソコンの調子が悪いのは、本当よ。妹のパソコンなんだけどね。」
「いつ、妹と入れ替わったんだよ?」
「ん~っとね、パソコンの調子が悪くなってからかな。うちの妹はパソコンが実は苦手で、村下君との書き込みが続く内に、どんどん専門用語が飛び出す様になっちゃって、私が代わりに打ち込んでたのよ。だから、村下君が知ってる紫苑の殆どは、私の話なの。本当は今日その事をちゃんと伝えたかったんだけど、村下君はひょっとしたら、23歳の詩音じゃなくて、高校生の紫苑が好きなんじゃないかって、思ったら言いだせなくなっちゃって・・・だって、今日1日すごく楽しかったから・・・」
ふんふんって、聞いていた・・・23歳かぁ
「23!・・・俺より年上じゃん。紫苑ちゃんじゃなくて詩音さんじゃんかΣ(・ω・ノ)ノ!w」
「本当にゴメン・・・年上はストライクゾーンじゃない?」
う~ん・・・紫苑ちゃんじゃなかったら、悩む所だけど、紫苑ちゃんいや、詩音さんなら、全然OKだ。
「そんな事ないっすよ、詩音さん」
僕は、彼女の眼を真っ直ぐに見詰め、喋り続けた。
「俺、今日1日すごく楽しかったです。女子高生とか全然関係ないですよ、紫苑ちゃん・・・いや詩音さんと、もっと過ごして居たかったです。今度は詩音さんとして、デートしたいです。」
「えっ?」
うわ~、酔いに任せて、言っちゃったよ~・・・どうしよう・・・振られちゃうんかな?
詩音さんは、少し照れ臭そうに、首を縦に振ってくれた。
盗み聞きしていたのか、周りの連中が、俄かに騒ぎ始めた。
「お~カップル誕生~」「やったね、村さん」「恋愛氷河期抜けたね」口々に好きな事を叫んで囃したてる。
改めて、みんなで乾杯になった。
小倉がすりすりと、寄って来た。
「いや~、しかし、村さんがメイドマニアとは知らんかったなぁ・・・」
あっ、そう言えば、今日1日一緒に居たから、すっかり気にならなくなっていたわぁ( ̄○ ̄;)
小倉が詩音さんに話しかけている・・・
「詩音ちゃんって、メイド服似合いますねぇ~」
「えっ?何?気安く詩音ちゃんって、話しかけないでくれる? 詩音ちゃんって、呼んで良いのは御主人様だけなんですからね。ねぇ~御主人さまぁ」
そう言いながら、僕に体を摺り寄せて来た。
すわっ∑(゚ω゚ノ)ノ キュ!!! 詩音さんすっかり出来上がっちゃってます。
しかも、ツンデレ系になっちゃってます。(´A`;)ゞ
「う~ん、御主人さまぁ~」
甘えてくる詩音さんは、昼間よりもっとギザカワ・・・いや、ギガントカワユス
でも、僕の彼女は腐女子なんだぁ~/( ̄口 ̄;)\



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テーマ:デート - ジャンル:恋愛

高校時代(前篇)
「じゃあ、いつまでも元気でね、村下君」
改札を抜けた彼女は、振り返りそう言いながら、笑顔で手を振った。
「お前、ずいぶん強いんだな」、負け惜しみの様なセリフしか、僕は言えなかった。
「ううん、それはね」彼女はゆっくりと口を開いた。
・・・こんばんわ、御主人28号様こと、村下隆文です。

―――――――――7月25日(土)―――――――――
彼女いない歴20年の僕ですが、たった一度だけ女の子と付き合った事があります。
正確に言うと、付き合う前に終わった恋なんですけどね。

あれは、松舞高校の卒業式の日。
同じ、美術部で三年間クラスメイトだった山瀬さんに、制服の第2ボタンをくれって言われた。
同じ部活で、結構話す事も多かったし、何かと接する機会の多かった彼女に、僕は恋心を抱いていた。
彼女は、小柄だけどスタイル良くて中々の美人だ。
絶対に彼氏が居ると思っていた。
性格が暗くて、小心者、スタイルも顔も良くない僕の事なんか、選択肢に入る訳無いと思っていた。
でも、実は彼女も引っ込み自庵で、他の男子と付き合うどころか、しゃべった事もないらしい。
そんな事なら、思い切って告白しておけば良かったって、どれだけ後悔した事か。
彼女は大阪の大学に進学が決まっていたし、僕は
東京へ行く事が決まっていた。
今更、進学先を変える事なんて出来ないし、かと言って遠距離恋愛が続く保証も無い。
ただ一回だけ、一日だけ一緒に過ごしたい、彼女はそう言って泣き付いてきた。

そして、明日僕は東京に旅立つと言う日に、僕らは一日だけの彼氏彼女になった。
朝、松舞駅に現れた彼女は、いつもの見慣れた制服姿と違い、ニットのボレロに春らしいパステルカラーのチェックのスカートと、言うかわいらしい格好だった。
僕だって精いっぱいお洒落して行きましたよ。
生まれて初めてネクタイ結んだのも、この日でした。
デートコースは、中国山地の山間に有る小さな遊園地。
小さいながらも、観覧車に子供だましなジェットコースターも有るんですよ。
まだ、免許取立の僕に、山間部の道は無謀かもしれないけど、母親から借りた車で彼女とドライブに出かけた。
「ねぇ松下君、本当に運転大丈夫なんでしょうねぇ?」
「あっ山瀬さん、俺の事信用してないな」
「そりゃ、勿論でしょう」笑いながら彼女は言う。
そして、こう提案した。
「折角恋人同士なんだから、さん付けじゃなくて、名前で呼んでよ。」
「えっ?う~ん、分かった。山瀬さんは幸子だから、さっちゃんだね。俺は隆文だから・・・」
「たっくんで、いいかな?」
たっくんかぁ、何だか照れ臭いなぁ。
お互いに、「さっちゃん」「たっくん」と、相手の名前を呼んでみる
「・・・なんだか、照れ臭いね」
「ああ」
話題が途切れた。

「そう言えば、あの遊園地って、一年生の時に遠足で行ったよな!」
とっさに、予め準備しておいた話題の数々から、一つ目を、思い出ししゃべった。
「そうだよね。そう言えば覚えてる、あの時、沢田ちゃんと長田君にせがまれて、四人で観覧車に乗ったの。あの二人は、あれ以来ず~っと付き合ってるよね。」
「そんな事有ったなぁ」
もちろん、あの日の事は忘れる訳有りません。
さっちゃんと、気軽に喋れるきっかけになった日ですからね。
4人で、一緒に行動して一緒にお弁当広げて、沢山おしゃべりして、沢山笑って。
彼女って良いもんだなって、初めて思いました。
きっと、それは相手が、さっちゃんだったからで、他の女の子だったらそんな事思わなかったかもしれない。
だって、観覧車に乗った時、僕の横に座ったさっちゃんの笑顔に、胸がキュンって締め付けられて、心から可愛いって、もっと見ていたいって思ったんだよね。
「ねぇ、気が付いてた? 私、あの時以来、ず~っと村下君、ううん、たっくんの事が好きだったんだから」
えっ!? マジ?
じゃあ、二年以上も、お互い惹かれ合いながら、言い出せずにいたって事!
あ~、何回も告白する機会は有ったのに、言い出さなかったんだろう。
こんな事なら、振られるの覚悟で、告白しておけば・・・
「実は、俺も、あの遠足以来、お前の事が好きだったんだ。 お互い、もう少し勇気が有ればな」
「そうね。でもだから今日、こうやって二年間思い続けた人と、一緒に過ごせるんだから、それはそれで幸せよ、私」
う~ん、そんな物なんかね~?
「そりゃあ、二年間切ない日々の連続だったわよ。だからこそ、今日は思いっきり楽しまなきゃあ。 ほら、そんな暗い顔のたっくんなんて見たくないわよ。」
そう言って、さっちゃんは窓の外の景色に視線を逸らした。
泣いているのか? 今は、そっとしておいた方が良いのかな?

まだ、肌寒い春休み前、しかも平日とくれば、山間の小さな遊園地に、遊びに来る客なんて居る訳もなく、殆ど貸切状態です。
小さなジェットコースターにバイキング、コーヒーカップ、空中ブランコと、立て続けに乗りました。
「ねぇ、今度はメリーゴーランド乗ろうよ~」はしゃぐ、さっちゃんは今まで以上に可愛くて。
今、彼女の笑顔は、僕だけの物。そう思うと、余計に切なくなってきた。
ダメですよね、今日と言う日はもう来ないんだから、今の一瞬一瞬を楽しまなきゃ、本当に後悔だけが残っちゃいますよね。
「よ~し、メリーゴーランド行こうかぁ」そう言いながら差し出した手に、彼女はそっと頷き手を握ってきた。
お昼は、これぞデートの王道、彼女の手作りお弁当です。
「料理は得意じゃないから、笑わないでね。」
そう言うさっちゃんが、いじらしかった。
得意じゃないと言う割には、彩り良くまとまっていて、味も結構俺好みのお弁当だった。
「御馳走様~。あ~美味しかった。」
「男子がどの位の量食べるか分からなかったから、少なくなかった?」
「いや、お腹一杯だよ。しかし、さっちゃんの手料理が食べれるなんて、卒業式迎えるまで思っても見なかったな」
「私だって、たっくんの為に、お弁当作るなんて考えても見なかったわよ(笑)」
芝生が敷き詰められた広場に、二人座って、色々な話をした。
お互いの夢の話、高校時代の思い出、家族の話、お互いの進学先の学校の事、新しい住まいの話
それは、きっと一緒に過ごせなかった二年間を、取り戻すかの様だった。

「やっぱり、まだ肌寒いね」彼女は、そう言いながらニットのボレロを羽織り直した。
「もう三時かぁ。そろそろ、帰ろうか?」
彼女は少し寂しそうな顔をしながら、「そうね、松舞に着くのが遅くなっちゃうよね。」って、呟いた。
「よし、じゃあ最後に思い出の観覧車に乗ろうか」今の僕にしてやれる事は、それしか無かった。
「うん」そう言いながら、僕に腕を絡めてきた。

僕らだけの為に、動いている様な観覧車だった。
「見て~、向こうの山は、まだ雪で真っ白よ。そりゃあ、寒い訳よね」
無理にでも、はしゃごうとする彼女が、切なかった。

遊園地を後にして、松舞へと向かう。
行きと違って、お互い口数も少なめだった。
山の麓に近づき、周りの景色が新緑から、街並みへと変わり始めた頃、さっちゃんが呟いた。
「帰りたくない・・・今夜は一緒に居て。たっくんに抱きしめていて、もらいたい・・・」
思わず、聞き返しそうになった。でも、聞き返したら女の子に、恥をかかせちゃうよな。
「わ・・・分かった。」言葉少なに僕は答えた。
「後悔しないか?」って、野暮な事を聞きかけたが、止めておいた。
きっと、僕以上に決心が必要な事を、彼女は決断したんだから。
しっとり落ち着いたファッションホテルを選んで、僕らはチェックインした。
彼女の白い身体が、揺れている。その夜、僕は彼女の清純な身体を白く汚した。
18年間守り続けた純真が、赤い血となって流れていた。
そして僕らは、朝まで何回も愛し合い、抱き合って互いの鼓動を感じた。

松舞駅は、白い霧に包まれ、僕らを静かに包み込んでいた。
「楽しかったよ、たっくん。」
彼女は笑顔で、僕にそう呟いた。
「俺もだよ」
「いよいよ、お別れね。」そう言ってうつむく彼女。
僕は、彼女の方に向き直して、真顔で言った。
「好きです、さっちゃんの事がずっと大好きでした。そしてこれからも、ずっと好きです、だからこのまま、つ・・・」
不意に、僕の口が彼女の柔らかい唇で塞がれた。
一度唇を離し、互いを見つめ合った。
そして、彼女を抱きしめ、もう一度キスをした。
白い空気が、一層濃くなり僕らを隠す様に包み込んだ。
「それ以上言わないで、余計に辛くなるから」
彼女が呟いた。
そう言うと、彼女は改札へと歩き出した。僕は言いたい一言が言い出せずにいた。
代わりに出た言葉は、「お前はそれで良いのかよ」だった。
一瞬、歩みを止めた彼女だったが、意を決した様に又改札へと歩き始めた。

「じゃあ、いつまでも元気でね、村下君」
改札を抜けた彼女は、振り返りそう言いながら、笑顔で手を振った。
「お前、ずいぶん強いんだな」、負け惜しみの様なセリフしか、僕は言えなかった。
「ううん、それはね」彼女はゆっくりと口を開いた。
「笑える様になったのは、私を好きになってくれた人が居たからだよ。こんな私でも、人を好きになって、その人が私の事を、好きで居てくれる・・・恋愛が出来る事が分かったから。昨日の事は一生忘れないよ。初めて、男の子と一緒に居て楽しいって思った、大切な日だから。素敵な思い出は、素敵な思い出のまま、心の中にしまっておきたいの。遠距離恋愛になって、辛い別れで汚したくないの。だから、わがまま言ってゴメン。」
そう言うと、彼女は駈け出し、白い霧に消えた。
「ほんと、わがままだよ、さっちゃんは・・・」頬を伝う涙をやさしく霧が隠していった。

風のうわさで、彼女が大学を中退し結婚したと聞いた。
目をつむり、思い出の中の彼女に「幸せかい?」って、聞いてみる。
あの日と同じ笑顔で「うん、ありがとう」って、呟く彼女が瞼の裏側に浮かんだ。


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テーマ:ヒトリゴト - ジャンル:小説・文学

高校時代(後編)
「う~ん、ご主人様ぁ」
ひざ枕している僕の上で、詩音が寝返りを打った。
そっと、彼女の柔らかい髪を撫でてみる。
こんばんわ、隆文です。
―――――――――7月25日(土)―――――――――
あの、春の思い出から、もう2年以上経つんですね。
つい、この間の事の様です。
今、僕の膝の上には、詩音って彼女が居るんですが、それ自体、高校時代から考えたら、信じられない話です。
中学高校時代、自分に彼女なんて出来るんだろうか、一生女の子と付き合う事なんてないんじゃないだろうか、って考えて独り落ち込んでいた時期は、一体何だったんでしょう?
それでなくても、周りからは気持ち悪がられていたから、自分に自身が持てず、イジイジとしていたんです。
暗い、キモい、カッコ悪いの3K状態でしたから、女の子どころか同性の友人すら、出来なかった。
でも、今こうして、僕の膝の上には詩音が居る。
悪友も沢山出来た。
恋人とは言わないが、結構クラスメイトの女の子をお茶に誘ったり、一緒に飲んだりはしている。
高校時代と何が違うんだろう?
改めて不思議に思った。
東京に上京して、徐々に自分に自信を持って、明るくなっているのは気がついていた。
ただ、それは新しい生活環境のお影だと思っていた。
しかし、そうではないみたいだ。
一体、なんなのだろう?

詩音が目を覚ました。
「申し訳ございません、ご主人様。私ったら、つい気持ち良くって眠ってしまいましたぁ」
「うん、寝顔もナカナカ可愛かったよ、詩音。」
「やだ、見てたんですかぁ。あっ、私重くありませんでしたぁ?」
「いや、全然大丈夫だったよ。しかし、詩音はいっつも明るいなぁ」
「そうですかぁ? でも、私、中学の頃から、オタクな女でしたから、結構暗かったんですよ。」
「今からじゃあ、想像も付かないなぁ(笑) じゃあどうして、そんなに明るくなれたんだ?」
「えっとぉ、それはですねぇ」
詩音は、何かためらっていたが、ゆっくりと話し始めた。
「さっきも言った様に、中学の頃から暗くて、男子に嫌われている存在だったんですよ、私。寄って来る男子が居たとしても、それはやはり同じ様なオタクの男子だったんですぅ。
そんな中、一回だけ普通の男子に告白された事があったんです。
結局その子は、親の都合で引っ越しちゃったんですけどね。
その男の子に、こんなオタクな私のどこが好き?って聞いたら、彼、何て言ったと思いますぅ?
『オタクな所も含めて、全てが大好きだ』って言ってくれたんですよ。
その時思いましたね、自分は間違ってなかったって。
自分らしい自分、飾らない自分なんて魅力無いって思っていたんですけど、そのままの自分を好きになってくれる人が居るんだなって。
そう思ったら、急に自信が沸いてきて、無理しなくていい飾らない楽なスタイルで生きれば良いんだって、分かったんですぅ。」
「ふ~ん、そんなもんなんだ」
「はい、ご主人様。あっ、今お茶入れますね♪」

詩音が、流しに立った後、タバコに火を点けながら
さっきの詩音の言葉を思い返してみる。
山瀬さんも、同じ様な事を言っていたな・・・
よく、考えてみたら、俺も全く一緒じゃないか?
山瀬さんが、僕の事を好きだと分かったから、自分に自信が持てる様になったんじゃないか?
そうだ、卒業してから東京に来るまで、日が短かったから、気が付かなかったけど。
そうだ、山瀬さんがさっちゃんが、「笑える様になったのは、私を好きになってくれた人が居たからだよ。こんな私でも、人を好きになって、その人が私の事を、好きで居てくれる・・・恋愛が出来る事が分かったから。」って言ったのも、結局同じ事だよな。
さっちゃんが、自信を僕から貰った様に、僕もさっちゃんから、自信を貰った。
きっと卒業式の日、さっちゃんが「第2ボタンをくれ」って、言わなかったら僕は自分に自信が持てないまま、ダラダラと東京で過ごしていたかもしれない。
切ない思い出では有るが、僕にとって、すごく大切な思い出なんだ。
改めて、さっちゃんに会いたくなった。
まぁ実際には彼女は、人妻だから叶う筈の無い事なんだろうけど。
でも、もしもう一度会う事が有ったとして、今の明るい自分を見たら、彼女はどう思ってくれるのかな?
そんな事はどうだって良い、ただ一言「俺の事、好きになってくれてありがとう」って、言いたい。

詩音が、氷のカラカラという心地好い音を響かせながら、お茶を運んできた。
「はい、ご主人様ぁ、ご主人様の大好きなミントティーですぅ。私のは、アイスロイヤルミルクティーですぅ」
ストローを口にしながら、ちらっと詩音を見る。
僕の視線に詩音も気付いた。
「味、変でしたぁ? ご主人様ぁ?」
「えっ? いや、すごく美味しいよ詩音。」
僕は、ストローを口から離ししゃべり続けた。
「詩音・・・俺の事、好きになってくれてありがとう」
こんな恥ずかしいセリフを、ちゃんと言える様になったのも、さっちゃんのお影だよな。
もう、高校時代みたいに後悔はしたくない。
「ほぇ? 何ですか急に? ご主人様なんか変ですぅ。
でも、こちらこそありがとうございます。
こんな私を好きでいてくれて、感謝感謝ですぅ」
また、ゴロニャンっと、僕の膝の上に寝転がってきた詩音に、僕は優しくキスをした。


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テーマ:ひとりごと - ジャンル:恋愛

笛吹きケトル
「喉、乾いたなぁ」
僕はキッチンに立つ。
流しのコーナーボックスには、三日前の夕ご飯の残飯が・・・
「うへ~、小バエがたかってるよ」
詩音が居たら、ちゃんと台所も片付けてくれるんだろうけどな。
こんばんわ、隆文です。
―――――――――8月15日(土)―――――――――
詩音と喧嘩しちゃって、もう三日も音信不通です。
ほんの些細な喧嘩だったんですけどね。
「素の詩音が知りたい」って言ったら、「今の姿が、素の私です」って、怒っちゃいました。
う~ん、腐女子って扱いが難しい事を改めて思い知らされました。
元々、紫苑は彼女ではなく妹の方であって、この時点で嘘つかれていた訳ですよね。
でも、それでも詩音の事が好きになって、付き合う様になって・・・それはそれで、俺的には全然問題無くて、本当に詩音の事が大好きなんですけどね。
でも時々、今の詩音は素ではなく演じられた詩音である事が、気になる様になって・・・さすがにもし結婚したとして、子供が生まれた後も、御主人様とメイドの関係が続く訳もなく(夜の生活は別かも知れませんが)、素の詩音を知った時、そのギャップの大きさを知るのが怖くて。
そんな、不安が爆発しちゃった訳です。

ヤカンに水を入れ、コンロにかける。
お湯が沸く間に、三角コーナーの残飯を生ゴミのバケツに捨てる。
独特の臭いが上がって来て、思わず蒸せ返る。
詩音のありがたさが、分かります。
笛吹ケトルが、口笛を吹いてお湯が沸いた事を知らせています。
え~っと、詩音がいつも入れてくれる紅茶は、どこにしまってあるのでしょう?
あれ~?
仕方なく、飲み馴れたインスタントコーヒーをいれる。
「あちっつ」
詩音ならきっと、「ふ~ふ~」ってしくれてから、渡してくれる事でしょう。

携帯電話が着信を知らせている。
詩音かと思い慌てて画面を見る。
そこには、先週面接した企業の会社名が・・・
一次試験を通過して、二次試験である面接の日程を伝える内容の電話だった。
一次試験突破って事で、ぱ~っと前祝いをしたい所だけど、祝ってくれる詩音はここには居ない。
ふっと、一次試験の時、試験会場の近くの喫茶店で試験が終わるまで待っていてくれた事を思い出す。
午後1時から5時まで試験だったんだが、詩音は一人でじっと待っていてくれた。
喫茶店を覗いた瞬間、詩音の顔がパァっと明るくなった。
一人、不安な気持ちで待っていたんだろうなと考えたら、凄く愛おしく思えた。
今まで遊んでいた女の子達は、絶対僕を待つ事無く他の奴らと遊んでいるか、家で待っているかのどっちかだろう。
そんな一途な詩音を思い出したら、今まで知り合った女性の中で、一番素敵な事に気がついた。
やっぱり、詩音は最高の腐女子・・・いや女の子なんだ。
詩音に会いたい・・・そんな気持ちがふつふつと湧き上がる・・・
でも、喧嘩している手前、こっちから連絡取るのは、負けを認めた様で癪に障る。
でも、連絡取りたい・・・
そんな、もやもやした気持ちをぬぐい去りたくて、僕はもう一度キッチンで詩音のお気に入りの紅茶を探す。
棚の奥底から、紅茶を見つけ出し、もう一度ヤカンをコンロにかけた。
椅子をコンロの前に引きずって来て、座り込んだ。
ジーっとヤカンを見つめる。
こいつが口笛を吹くまで、詩音の事を思い出し幸せに浸っていよう。
せめてもの償い、詩音思い出し詩音を感じていたい。今の僕にはそれが精いっぱい出来る事だと思う。


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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

仲直りの印
「うん、じゃあまた明日ね。おやすみ~詩音」
携帯の通話終了ボタンを押す。
タバコに火を点け、深く煙を吸い込む。
何気なく、時計の針が目に入った。
うわ~、もう十二時前かぁ
話し始めたのは、バイトを終えてアパートに帰って直ぐだから、5時間以上も詩音と話をしてました(^^ゞ
こんばんわ、御主人28号様こと、隆文です。
―――――――――8月26日(水)―――――――――
詩音と仲直りしましたよ
♪♪♪
おっと、今切ったばかりなのに、また詩音から電話です。
何なんでしょう?
「もしもし~、どうしたん?詩音。」
「ご主人28号様、何回も申し訳ございません。大事な事を言い忘れてました。詩音はこれからもず~っとず~っと、御主人28号様の事が大好きです。それではおやすみなさい」
「あっああ。俺もだよ詩音。おやすみ。」
う~ん、こんな時はちゃんと下の名前で呼んでもらいたいんだが、まぁイイですよね(^^ゞ
♪♪♪
おっと、今度は詩音からメールです。
「そう言えばこの前、渋谷のセンター街で美味しいケーキ屋を見つけました♪今度一緒に行きましょうね」
う~ん、詩音も普通の女の子みたいにセンター街とかに行くんだ。以外以外(おっと失礼)
「OK 早速今度の土曜日行こうか。」って返信を打つ。
やはり、センター街を歩く時も、メイド服なんだろうか? 少し気になります。


♪♪♪
おっ、返信メールです。
「はいなのですぅ~ 楽しみですぅ~ ところで、御主人28号様は、『けいおん!』ってアニメ御存知ですか? うちのサークルのおケイちゃんが、この前DVDを貸してくれました。今度一緒に見ましょうね」
はいはい、もちろん知ってますよ。
「俺は、4人の中では澪ちゃんが好きだな。詩音は?」
ポチポチ   送信っと。

♪♪♪
「詩音は、ムギちゃんですぅ。御主人28号様は、詩音より澪ちゃんの方が好きなんですか? なんだか、焼いちゃいますぅ」
いや、そこで張り合うかぁ?
「もちろん、一番大好きなのは詩音だよ」っと

♪♪♪
「はいなのですぅ ぎざしあわすぅ」

ふ~
仲直りして以降、詩音からの電話とメール攻撃が、後を絶ちません。
それはまるで、喧嘩している間の時間を取り戻し、空白の時間を埋めようとしているかの様です。
そんな、詩音がすごくいじらしいです。
おっと、そんな事をしているうちに、もう1時じゃないですか。
明日も、1時限目から、授業なんです。
そろそろ寝なくては、寝坊しそうです。
それでは、皆さんおやすみなさ~い


・・・・・・・・



Zzzzzz




♪♪♪
「御主人28号様、もう寝ましたかぁ? 詩音、独りぼっちで寂しくて眠れそうもありません。もう一回電話してもイイですか?」
「だぁ~、詩音眠らせてくれよ」僕は、そう言いながらアドレスを開いた。
実は、詩音とおしゃべりするの、苦痛じゃないんですよね。
きっと、詩音と一緒で、僕も空白の時間を取り戻したい気持ちで一杯なんですよ。
そして、僕は少しニンマリしながら、通話ボタンを押した。






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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

レストラン
いつもの様に、バイト先に近いお台場海浜公園駅でゆりかもめを降りる。
いつもと違うのは、左肩の向こうに詩音が居る事だ。
こんばんわ、ご主人様28号こと、村下隆文です。
―――――――――12月24日(木)―――――――――
クリスマスイブの今夜、うちのレストランに予約キャンセルが有ったのは、ラッキーでした。
オーナーに頼み込んで、空いた席の予約とその日のバイトのキャンセルをさせて貰ったのが、つい一昨日の話です。
「え~っ、すごくおしゃれなレストランですね、ご主人様ぁ」
「だろ~詩音。一度連れて来たかったんだ、この店に」
今日は店の裏側に回るのではなく、表のドアを開ける。
「いらっしゃいま・・・せ・・・」
ウェイター仲間が目を丸くしている。
「予約しておいた、村下ですが。」軽くウインクする。
「え~っと・・・村下様ですね、お待ちしておりました。おい、どうしたん、美人の彼女連れてぇ」
「いいだろ、たまには。お前の仕事振りをチェックしに来たんだよ」
「あっ、どうも始めまして。いつも、ごしゅ・・・いや、隆文さんがお世話になってます。」
「あっ、イエイエお世話になっているのは、僕の方でして。いっ今、席にご案内致しますね」
詩音がエスコートして貰って、椅子に坐った。
「ありがとうございますぅ」
彼は去り際に僕に「お前の彼女スゲー美人じゃんか」そう耳打ちする。

「ご主人様ぁ、よろしかったんですか?バイト先に私なんか連れて来ちゃって」
うん、正直、いつも通りメイド服でお台場に来るとは思わなかったから、少し後悔しているんだけど・・・まぁモノトーンのメイド服だから、ゴスロリって事にしておこう。

「いらっしゃいませ。ワインをお接ぎ致します。」
ソムリエの前崎さんが、ワインを注ぎにやってきた。
詩音はそっとワイングラスを口にする。
「結構なお味です。美味しいです。」そう言って微笑む。
前崎さんも微笑み返し「ありがとうございます」と、お辞儀をする。
僕のグラスにワインを注ぎながら小声で、「素敵な彼女だな」そう呟いた。
「それでは、ごゆっくり。」

「じゃあ、詩音。メリークリスマス~」
「メリークリスマス~。あの~ご主人様も、ああやって、ワイン注いでいるんですかぁ?」
「いや、あれはソムリエの前崎さんの仕事だから。俺は主に厨房で皿洗いか、たまに接客する位だよ」
「う~ん、一度ご主人様に、ああ言う風にエスコートして貰いたいですぅ」
「じゃあ今度、俺が執事しようか?」
詩音は少し考えてから、「ハイなのですぅ」と微笑んだ。

オードブルが運ばれてきた。
「本日のオードブルは、真鯛のカルパッチョ イクラ寄せとなっております」
う~ん、フロア長自ら料理を運んでくるとは、スタッフの間では相当話題になっているんだろうな
「真鯛の白、イクラのオレンジ、芽葱の緑が鮮やかですね」詩音が運ばれてきたオードブルに、感動している。
「ありがとうございます、ではごゆっくり」
フロア長は俺の方を見ると、うんうんと頷いて帰って行った。何に頷いたのか気になる所だ。
メインディッシュの子牛のフィレステーキ クリスマス風ソース添えは、シェフ自ら運んできた。
「クリスマスらしい彩りですね。この緑と赤のソースは何で出来ているんですか?」
「はい、緑はアボカドをベースにしたディップ、赤はイチゴをベースにしたフルーツソースです。ではごゆっくりどうぞ」
シェフは僕の右肩をポンと叩いて去って行った。

「あ~、美味しかったですぅ。詩音の知らない料理ばかりでした。私ももっと勉強しなきゃ駄目ですね」
「えっ、詩音の手料理も十分美味しいって」
「うふっ、ありがとうございます、ご主人様。詩音嬉しいですぅ」その笑顔が最高です。
しかし、シェフまでフロアに来たとなると次は
「本日のスィーツです。パテシィエが特別に作ったクリスマススペシャルです」
やはり、オーナーまでもが、やって来たか(-_-;)
「わぁ~、ありがとうございますぅ。美味しそうですぅ」
「折角のクリスマスですからね。ではごゆっくりどうぞ」
「村下君、今夜、閉店後に店のクリスマスパーティーやるから、参加してくれよな。もちろん彼女も一緒にな。あっ、彼女さんもOKでしょうか?」
「えっ?ご主人様・・・いえ・・・隆文さんが宜しかったら・・・」
「オーナー、分かりました。閉店までお台場で時間潰してますよ」
「では、後程・・・」
オーナーは丁寧にお辞儀して、キッチンに下がっていった。
「詩音、門限大丈夫だった? 」
「ハイなのです。そうだご主人様、これ・・・クリスマスプレゼントですぅ。」
そう言いながら詩音がごそごそとバックから、紙袋を取り出した。
「気に入ってもらえると良いんですが・・・」
「えっ?何だろう? 開けて見てもイイ?」
「ハイなのですぅ・・・ドキドキします~」
紙袋を開けてみると、それはニットの手袋だった。
「いっつも、アパートに帰った時、冷たい冷たいって、私のほぺったに掌を当ててくるからぁ」
あぁそう言えば・・・「ひやっ」とか「冷たいですぅ」って言うリアクションが楽しみなんですよね
俺もこの日の為に準備したクリスマスプレゼントを、コートのポケットから取り出す。
「詩音・・・これ・・・」
そう言って、小さな箱を彼女の眼の前に差し出す。
「ありがとうございますぅ・・・リボン解いてみても良いですか?」
えっ?ここで・・・! まぁここまで来たら、もう良いかぁ・・・
「あぁ、開けてごらん。」
リボンを解き、蓋を開けた瞬間、詩音の瞳が大きくなったのが、分かった。
「ご主人様・・・これって? ひょっとして?」
「就職が決まっただけだから、生活力なんて全く無いんだけど。いっつも俺に元気を与えてくれる、そばに居てくれる、そんな詩音と一緒に家庭を持ちたいんだ。」
プレゼントは、安物のシルバーリングだった。
「ご主人様・・・ううん・・・隆文さん、ありがとうございます。こんな私で良いんですかぁ?」
「あぁ、詩音じゃ無いと駄目だ。」
「ハイなのです。ず~っと付いていきますぅ」

背後に気配を感じ振り返ると、スタッフ全員が小さくガッツポーズをしていた(^_^;)


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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

君の姿
僕の乗った電車が、ホームに滑り込む。
やはり大晦日ともなると、ホームに人が少ないですね。
窓際に立っていた僕は、ボーっと外を見ていた。
そして、小さな子供の手をつなぎ電車を待つ女性に目がとまった。
あれ?この女性って・・・でもまさかなぁ・・・
向こうも僕の存在に気付き、驚いた顔をしている・・・
やっぱりそうだ。
たった一日ですが、僕の彼女だった、山瀬幸子さん
・・・そう、さっちゃんです。
こんばんは、御主人様28号こと、隆文です。
―――――――――12月31日(木)―――――――――
「山瀬さん・・・?やっぱり山瀬さんだ。 あっ、ゴメン今は名字が違うのか。」
「ううん、山瀬に戻ったの・・・。やっぱり村下君ね、久しぶり約3年ぶりだっけ、元気だった?」
苗字が旧姓に戻ったって事?離婚?
「あぁ元気だって。そうだな、3年ぶりかな。あっ、この子って山瀬さんの子供?」
「うん、優って言うの。もうすぐで2歳になるんだ」
「目が似てるねぇ、美人になるなぁ。」
「ふふ、ありがとう、村下君。でもびっくりした。まさか東京で知り合いに会うなんて、思わなかったから。いつもこの地下鉄使うの?」
「あぁ、そうだよ。山瀬さんこそどうしたの、東京で会えるなんて考えもしなかった。」
「私? 渋谷に買い物に行くところ。今ね、埼玉に住んでるの。さいたま市で叔父さんが会社を経営しているから、そこの事務員として働いてるんだ。ほら・・・大学中退して結婚して、揚げ句の果てに離婚だなんて、松舞帰ると周りの視線がきついでしょ・・・」
「そっか、色々大変だったんだね、山瀬さんも・・・」
やっぱり、離婚したんだ。さっちゃんを捨てるなんて、一体どんな奴なんだ!
「まあね・・・自業自得なんだろうけどね。でも、優が居るからいつまでも落ち込んでいる訳にはいかなかったし・・・。」
「相変わらず、強いんだな、山瀬さんは・・・」
「そんな事無いって。んで、村下君の方はどうなの?彼女出来たの?」
「あぁ、年上なんだけど、すごく甘えん坊の彼女がいるよ。」
「へぇ~。ねぇどんな感じの女性? 同じ人を好きになった物同士、興味が有るなぁ」
「何だよ、別に良いだろ、そんなの。」
「だって、気になるじゃん。その人、背高いの?髪型は?有名人に例えると誰に似てる?」
「ったく。詩音は、背は少し高めかな。髪はロングでストレート。有名人に例えるなら、う~ん・・・思い浮かばないなぁ」
「へぇ、詩音って言うんだ、すてきな名前だね。幸せそうで良かった。」
少し伏目がちになった、さっちゃんが気になり、俺も聴き直した。
「そう言う山瀬さんはどうなん?」
「う~ん、幸せとか幸せじゃないとか、言ってる余裕が無いかな。でもね、優と過ごしている時は、幸せかな。この子を産んで良かったって。あのね親戚の会社に勤めてるもう一つの理由はね、育児にかかる時間を、色々融通利かせてもらってるから、っていうのも、有るんだよね。」
「ふ~ん、子供が生まれると、そんなもんなんだ。『女は弱し、されど母は強し』だな。」
「何それ?初めて聞いたわ。でも確かにそれ当たってるかも」クスクスとさっちゃんが笑う。
その笑顔は、間違いなく18歳の、あのさっちゃんのままだった。
一気に2年前の気持ちが蘇る。
僕は、さっちゃんを見つめる。
もし再会が半年早かったら、僕は思いのままを口にしていた事だろう。
詩音と出会い、心の傷は随分と癒されたが、それまでの自分は表には出さなくても、さっちゃんへの思いを引きずって生きていた。
「突然さっちゃんが、僕のアパートを尋ねて来るかもしれない」、「いや、僕が大阪中を探せば会えるかもしれない」、そんな事ばかり考えていた、弱い自分が居た。

「村下君・・・?」
山瀬さんに話しかけられ我に帰る。
「ごめんごめん。」でもその先の言葉が見つからない。
電車が池尻大橋の駅に着いた。
次の渋谷に着いたら、またさっちゃんとお別れだ。
ひょっとしたら、これがさっちゃんに会える、本当に最後のチャンスかもしれない。
そう思うと、このまま何も言わずに、別れるべきかどうか悩んだ。
お互い無言のまま、電車は走り続ける。
今、心の奥底に仕舞い込んだ思いを、彼女に伝えたら僕はきっと楽になれる。
でも、その言葉によって彼女は又苦しむかもしれない。
そして、彼女に抱いていた淡い思いが、今、また僕を苦しめる。
あの日、さっちゃんが僕に言った言葉が蘇る。
「素敵な思い出は、素敵な思い出のまま、心の中にしまっておきたいの。遠距離恋愛になって、辛い別れで汚したくないの。」
遠距離じゃなくなった、会おうと思ったらいつでも会える距離、なにより手を伸ばせば触れ合える距離に、彼女がいる。
でも、やっぱりその手を伸ばす事は出来なかった・・・素敵な思い出のまま、心の中に留めておく方が、きっと幸せなんだと気が付いた。
彼女には優ちゃんと言う娘がいて、僕には詩音がいる。それだけでも十分、あの頃とは違うのだ。
それぞれが、お互い知らない所で幸せに暮らす・・・それが一番なんだ。
この先も僕は、街角でさっちゃんの姿を探すのかもしれない、でも、探している瞬間が切ないけど幸せなんであって、実際会うと少しずつ変わっていくお互いに愕然とする。
あの頃の二人はもう居ないんだ、何も考えずに互いの名前を呼べたあの時、そして心の全てが相手の色に染まっていたあの時の二人は・・・
静かに電車がホームに滑り込む。
もう一度、彼女の顔を見つめる。
彼女の瞳には、涙が溢れていた。ひょっとしたら、彼女も同じ思いなんだろうか?でも、それを確かめる勇気は今の僕にない。

地下鉄のドアが静かに開く。
「それじゃあ、たっくん、いつまでも元気でね。」
「さっちゃんも、幸せにな。」
互いの名前で呼び合う・・・それが僕らに出来た、最後の思い出作りだった。
さっちゃんは優ちゃんを抱きかかえると、年の瀬の忙しない人ごみの中に、吸い込まれる様に消えていった。
別々の道を歩み始めた二人、それぞれの歩みの中で、幸せになろう。この空の下、どこかでさっちゃんと優ちゃんが笑顔で暮らしている。僕では成し得なかった幸せを、二人は掴むことだろう。その笑顔を思いながら、僕は街角で二人の姿を探そう、幸せな笑顔で手をつないで歩く二人の姿を。


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