松舞町ラブストーリー
山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね。
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登山
、オオイヌフグリが咲き始めてるじゃん」
今年の冬は例年に無い大雪ですね。
でも、松舞の山々は確実に春の準備を始めていました。
こんにちは、俺、竹下純って言います。
―――――――――2月26日(土)―――――――――
今、夜景を見たくって、松舞の北の外れにある大平山に登ってます・・・今夜は山頂にテントを張って泊まる予定です。
まだ、登山道のあちこちに残雪が有りますが、整備された登山道ですから足元がぬかるむ事も無く、さくさく進めます。

一人で山登りなんて、同年代の奴らからしたら地味な趣味かもしれませんが、子供の頃から親父と野山を歩き回り慣れ親しんできた事ですから、余り気にはしていません。
それに、会社の先輩に影響されて始めた写真撮影が面白くって、ワクワクしながら山を登ってしています。

中腹まで登った道の脇に、小さなベンチが有りました。
眼下には松舞の街並み、そして山と山の間には宍道湖が見えています。
「暑~っ、ちょっとひと休憩しようかな。」
色々な被写体を見つける度に立ちどまってカメラに収めていましたから、意外と疲れてはいないんですけど、まぁ急いで登る必要もありませんしね。

ザックを背負ったままベンチにどっかと腰かける。
何たって、テントに食糧や水、防寒装備まで含めると15Kg位は有りますから、ザックを下すとまた担ぐのが嫌になりそうで、いつも背負ったまま休憩しています。
・・・まぁ、結局立ち上がる際に力を「よっこいしょ」って声が出る位だから、座る事自体が負けなんでしょうけどね。

腰ベルトに装着した小物入れから、おつまみ兼おやつの入ったジップロックの袋を取り出す。
この位置なら、ザックを下す事無く移動中でも必要な物が取り出せますから、おやつポケットの他、地図類の入ったポケットと、ドリンクホルダー、デジカメケースがセットして有ります。

「あ~美味い。やっぱ、この組み合わせが最高やな~」
今日のおやつは、手軽に栄養補給出来るチョコやナッツ類を、ごみ減量の観点から袋から出して適当にブレンドしてきました。
チョコにナッツの塩気が付いたりしちゃいますが、それはそれで美味いと思っているので、そんなに気にはなりません。
ただ食べ過ぎちゃうと、夜のつまみが減っちゃいますから、ホドホドにセーブしなきゃいけないのが、難点なんですけど。


チョコを頬張っていると麓から、カラフルなウェアでコーディネイトした女性が2人登って来ました。
いわゆる山ガールって言うやつですね。
彼女達は僕に軽くあいさつをして、そのまま頂上に向かって歩き続けて行きました。
いや~、今まで山で出会うのは、中高年のオバサン達が多かったから、新鮮ですね。
都会で流行っているのは知ってましたが、その波が松舞にまで押し寄せてきているのは、ちょっぴり意外でした。
これが一過性の流行でなく、日常的な物になると僕も出会いが増えて嬉しいんですけどね。

「よっこいしょ・・・っと」
あっ!やっぱりベンチから立ち上がる時、言ってしまいましたね(^_^;ゞ
僕は一歩一歩確かめる様にゆっくりと歩き始めた。
その後30分くらい歩いて頂上に到着しました。

山頂は、ちゃんと整備してあって少し平地になっており、その周辺部にベンチが数台設置してあります。
南向きのベンチの1つでは、さっきの山ガールが一足先に休憩していました。
「お疲れ様~」って、僕らは声を掛け合った。
さっきは気がつきませんでしたが、二人とも僕と同世代位な感じの若さです。
意味も無く、胸がざわざわしてきます(笑)
夜景とか撮影するに好都合ですから、僕は彼女達と反対側の松舞側のベンチに腰を下す事にする。

彼女達の後ろを通り過ぎる時、かすかに話し声が聞き取れた。
「あっ、カオルちゃんゴメン、ガスが切れそう・・・まだお湯すら沸いてないのに」
・・・どうやら、携帯コンロのガスが切れたみたいですね、時期的に気温が低いからガスの気化が進まないのかもしれません・・・この時期に良くあるトラブルです、僕も何回かやっちゃってます。(^^ゞ

適当な場所を見付け僕は、ザックのショルダーベルトを緩め、腰を捻る様にしながら足元にザックを下す。
一気に身体が軽くなり、そのまま空に浮かんで行けそうな気分です。

夕暮れまでに、テントやその他の準備をしておかなければいけませんから、ザックの上蓋を開けすぐに準備を始める。
荷物仮置き用のビニールシートを広げ、ザックの上の方に入れたテントやタープ等を取り出し始める。

ふっとザックの中のバーナーが目に止まる。
そう言えばさっき、山ガール達がガス欠って言っていたよな。
こっちは、泊まりだから少しはガスカートリッジの予備を持って来てるし、困った時はお互い様ですよね。
振り返ると彼女達は、カートリッジを手で覆って温めたりしている。
そんな姿見たら、尚の事放っておけないです。

ちょっぴり、勇気を振り絞って声をかけてみた。

「あの~、良かったら使われませんか?」
話し掛けた僕に彼女達が顔を上げる。
うっ、どっちの女の子も可愛い♪
先に口を開いたのは、少し年下っぽい、「カオルちゃん」と呼ばれていた女の子の方だった。
「あっ、すいません。でも、そちらも使われるんじゃないですか?」
「僕なら2つ持って来てますから、帰られるまで使われて構いませんよ。」僕はそう言いながら、シングルバーナーを差し出した。
2、3つ押し問答の結果、彼女達が折れる事で決着した。


僕は、自分の場所に戻り、テントの設営を始めた。
父から譲って貰ったテントは10年以上前の1人用テントだけど、軽いので結構気に入っている。
テントの下に敷くビニールシートを敷いて位置を決めてから、テント本体を乗せ手際よく組み立てていく。
屋根の防水シートとなるオレンジ色のフライシートを被せて固定して設置完了。
手慣れている事もありますが、5分程度で簡単に設置出来るのもこのテントを気に入っている理由の一つです。
続いてリビングスペースとなるタープを設置する。
こっちも、父親から半分強引に譲って貰った古いモデルだけど、登山モデルなだけ有って軽くて重宝しています。
僕は馴れた手付きでタープを立てるポールを設置し始める。

「あっ、タープ立てるの手伝いましょうか?」背後から「カオルちゃん」が声をかけてきた。
「ありがとうございます、一人でも大丈夫ですよ・・・・・・でも、折角ですから手伝いをお願いしてもいいですか?」
「はい、喜んで。こっちのポール支えておけばいいですか?」
「はい、ありがとうございます。今、張綱を張ってしましますから、少し待って下さいね。」
僕は固定用のペグの位置を素早く決め、地面に打ち込んでいく。
「このタープ、色からするとモンベルですか?」カオルちゃんが、腰を上げた僕に尋ねてきた。
「そうです、ずいぶん古いモデルなんですけどね。色で判断出来るなんて、結構詳しいんですね。」
「ええ・・・短大時代は、ワンゲル部に居ましたから」
・・・短大時代って事は、結構童顔で幼く見えたけど、僕より年上って事ですね。

「こっちのテントは、アライテントのエアライズですよね。ひょっとして今夜、ここに泊まるんですか?」
張綱を絞ってタープの調整をしている僕に、カオルちゃんが話し掛けてきた
「はい、ここから夜景を眺めたら綺麗かなって思って。」
彼女は周囲を見渡しながら、「そうですね、確かにここからなら夜景が綺麗ですよね。でも、まだまだ夜中は氷点下なんじゃないですか、大丈夫です?」って聞いてきた。
タープの調整が終わり、僕は腰を上げながらザックを指さした。
「装備ならバッチリですよ、ダウンシュラフにインナーシーツ、シュラフカバーまで持って来てますから。いざとなったら、酒飲んで温まりますよ」

つい口を滑らせてしまった、僕は未だ未青年です
「あっ、アルコールの事は黙っていて下さいね」
カオルちゃんは不思議そうに聞き返した
「どうして内緒なんですか? あっ、病院の先生にアルコール止められているとか。ダメですよ、肝硬変とかは一生の病気なんですからね。」
「あっ、そう言うんじゃなくて、法律的に・・・」
「・・・え~っ、未青年? うそ~」
「いや、そんなに驚かなくっても。一応、社会人なんですよ・・・って言うか、俺ってオヤジっぽいですか?」
「あっごめん、そう言う訳じゃなくって。ほら、山登りって中高年ってイメージ有るでしょ。若い人とは思ってたけど、未青年なんて驚いちゃうわよ。」
「あっ、やっぱり趣味がオヤジ臭いですか?」
「そんな事ないって。普段、山で会う男性ってオジサンか、独身だったとしてもムサイ運動会系の人が多いから」
う~ん答えになっている様な、なっていない様な・・・

「カオルちゃ~ん、お昼出来たよ~」
もう一人の女性の方が、彼女に声をかけてきた。
「うん、今行くね」
じゃあ後でって、彼女は手を振って背中を向けた。
「あっはい、ありがとうございました、助かりました」そう背中に話し掛ける。
「ううん、こっちこそ」彼女は振り返り、笑顔で答えてくれた。
やばっ、年上だけどマジ可愛いかも・・・
ワンバーナー返してもらう時に、アドレス交換しちゃおうかな。
でも初対面でそんな事言ったら、失礼だよな。
そんな事を考えながら、僕はザックの中身をテントの中に押し込め始めるのだった。

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下山
「う~寒っ」
シュラフに頭を突っ込み直すと、吐く息が口の周りにまとわり付く。
少し咽返りそうになったけど、とても温かく感じられた。
そんな寒いテントの中にも、太陽の光が優しく降り注いでいます。
おはようございます、ちょっと二日酔い気味の竹下です。
―――――――――2月27日(日)―――――――――
結局昨日は、カオルさんにアドレスを聞く事が出来ませんでした。
彼女達が下山する時に、ひと言ふた言話しただけです。
えも知れぬ挫折感が僕を支配していきました。
思った通りの素敵な夜景を堪能して、実家の棚からくすねてきた親父の高そうなウィスキーを煽ったりもした。
でも結局テンションが上がる事は有りませんでした。

この症状って所謂「ひと目惚れ」って奴でしょうか?
地元の子なら何となくでも見覚え有だろうけど、見覚えの無いところをみると地元の女の子じゃ無さそうですし・・・
まぁ運良く再会出来たにしても、彼女の気持ちばかりは分かりませんけどね。
そんな事をうだうだと考えてぼ~っとしていると、益々気が滅入って来ます。
もう一度シュラフに頭を突っ込み直して、僕はうだうだとした時間を過ごしていた。


どれ位時が経っただろうか、テントをポフポフっと軽く叩く音が聞こえた。
「お~い少年、起きてるかぁ~?」
すわっ、その声はカオルさん!?
僕は、慌ててシュラフから上半身抜け出し、テントのファスナーを開けた。

「おっ、おはようございます。どっ、どうしたんですか?」
「何緊張してるのよ少年(笑)。折角、優しいお姉さんが朝食持って来てあげたと言うのに」
「自分で優しいとか言いますか、普通?」
「じゃあ、いらないのね。川原家直伝のパワーランチ・・・朝食だけど名前はパワーランチ」
「頂けるんなら、勿論頂きますよ。って言うか、カワハラさんって言うんですね、カワハラカオルさん。」
「そう三本川の川に原っぱの原、カヲルはカタカナでヲは大きい方じゃなくて、小さい方のヲ」
「小さい方って、カヲルさん?」
「う~ん、口にしても何も変わらない気もするけど、カオルじゃなくてカヲルなのよ」少し照れ臭そうにカヲルさんが笑っています。
その笑顔をもう一度見れたんだから、飛び上がるほど嬉しいはずなのに、胸がキュンっと締め付けられます。
やばっ、マジ惚れみたいです・・・


「さぁ少年そんな事はどうだって良いからさ、さっさと寝袋から出て歯磨きしなさいよ」
「少年少年って、僕だって竹下純って名前が有るんですからね」
「ふ~ん、ジュンって言うんだ。ジュンはどの字? 潤う? ロンブーの淳って書く方?」
「純情の純」少しふてくされた様な口調で、僕は答えた。
「純情の純って、そっちこそ恥ずかしげもなく自分で言うかって話じゃん少年」
「だから少年じゃないですって」
「そうよねぇ、少年はお酒飲んじゃあイケナイもんねぇ、竹下くぅん」
「うっ・・・ちょっとしか飲んでませんって。」
「はいはい、とにかくテントから出てらっしゃいよ、竹下くん」
ちっ、悔しいけど完全に子供扱いですね。

僕は、テントの中で着替えをして、歯ブラシを持って外に出た。
地表に降りた霜が、朝方の冷え込みを物語っていた。
「ほら見て御覧なさいよ、宍道湖の方に雲海が広がってるよ、早起きして良かったでしょ」カヲルさんが指さす方向に目をやると、白い雲の海から島々の様に山々が浮かんでいて、幻想的な世界が広がっていた。

僕は歯磨きもそこそこにテントに頭を突っ込み、急いでカメラを取り出す。
冬の晴れた朝しか見られない貴重な風景です、それだけでも寒い中テント泊をした意味が有るってもんです。
レンズを広角に差し替え、ひたすらシャッターを押した。
森山さんに自慢出来る一枚が撮れた様な気がします。

「ほら朝ご飯の準備出来たわよ、竹下君」
カヲルさんの声に振り返ると、ベンチの真ん中に湯気を立てたスープやサンドイッチが並んでいた。
「おぉ、すげぇ~」
「でしょう、全部今朝早起きして作ったんだからね。」
「ひょっとして僕の為にっすか?」
「馬鹿ねぇ、何ときめいているのよ。昨日ワンバーナーのガスを結構使っちゃったから、朝ご飯とか作っている最中にガス欠になったら、申し訳無いって思っただけよ。それに・・・」
「それに?」僕は期待の意味を込めて聞き直した。
「少年が凍死してたら、後味が悪いでしょ」
「凍死って・・・大丈夫って言ったでしょ。それにガスだって予備持って来てるし、折りたたみ式の焚火コンロも持って来てますから大丈夫でしたのに」
「へぇ~そうなんだ・・・まぁとにかく食べた食べた」
「それじゃあ遠慮せずに頂きますね。川原家特製パワーランチって、カヲルさんも家族で山登りとかしてたんですか?」
「そうね、小学校卒業位までかな。さすがに中学入ると親と出掛けるのが恥ずかしくって行かなくなったわね。でも、やっぱり山が恋しくて短大ではワンダーフォーゲル部に所属しちゃったけどね。」
「じゃあ昨日一緒だった人もワンゲル仲間ですか?」
「ううん、彼女は社会人になってからの仲間よ。彼女、看護士していて今日は、普通に勤務なのよね。因みに私も同じ病院で働いているんだけどね」
「って事はお医者さん?・・・あっ、考え難いけど看護婦さんとか」
「どう言う意味よ、『考え難い』って・・・残念ながらどちらも外れ、私は事務方なの。それと今は看護婦って言わないのよ」

「そうなんっすか? おっ、このサンドイッチうまいっすね。」僕は、失礼な事を言った気がして何となく話題を逸らした
「特製ポークチリビーンズサンドいけるでしょ、食べている最中に垂れてこない様に片栗粉入れるのがポイントなのよ。ねぇところで、さっき雲海の写真撮ってたけど、写真も趣味なの?」
「ええ。まぁ最近始めた趣味なんですけどね、会社の先輩の影響です。そうだ、登る時に霧大丈夫でした?」
「麓は結構霧が出てたわよ。昨日も登ってるから大丈夫だったけど、初めての山だったら諦めていたかもね。」
「そこまでして来なくても良かったのに」
「だから少年の事が心配だったんだって・・・それと・・・
「それと?」
「・・・あっ、スープ飲む時熱いから気をつけてね」
インスタントスープの入ったカップを手に取った僕に、そう注意を促した。
「うぉっ、まじ熱いっすね。俺、猫舌なんですよ。うん、でも旨いっす。」
「あっ、私も猫なんだよね。」カヲルさんはそう言いながら、カップをフウッ~っと吹いていた。
その横顔が、僕より年上とは思えない位可愛らしくて、また胸がキュンっとなった。


「ねぇ、竹下くんの住まいは松舞?」食べ終わった朝食のラップを小さく畳ながらカヲルさんが聞いてきた。
「そうです地元ですよ。地元って言っても実家は下奥沢だから、アパート住まいなんですけどね。カヲルさんも松舞ですか?」
「ううん、私は雲山なの。生まれも育ちも雲山なんだけど、親に干渉されるのが嫌で、実家を出てアパート住まいなんだけどね。」
「え~、衣食住の心配がいらないのに、わざわざ出ちゃったんですか?」
「そうよ、自由が一番よ。竹下くんこそ、アパート住まいなら食事とか大変じゃない? スーパーの総菜やコンビニ弁当ばっかりじゃ、栄養のバランス取れないし飽きるでしょ。それとも生意気にも食事の世話してくれる彼女が居るとか」
「生意気って・・・失礼な(笑) でもまぁ、そんな献身的な相手居たら紹介して欲しいっすよ。」
「じゃあやっぱり、外食かコンビニ弁当?」
「それが最近、お弁当男子デビューしちゃったんですよ、俺」
「お~、えらいぞ少年! じゃあ、料理得意なんだ」
「いやまだ始めたばっかりだし、勉強中ですよ。 そうだ朝食のお礼にコーヒー沸かしましょうか?」
「あっ、うん、飲む飲む。ねぇ折角だから、焚き火コンロ使ってみせてよ」

「もう使い込んでボロボロですよ。使うんなら先ずは枯れ木とか集めなきゃ」
「そっか、そこから始めなきゃだね。手伝うわよ、どんな枯れ木集めれば良いの?」
「そうっすねぇ・・・着火材代わりの松葉が一握り、後は細めの枝や枯葉ですね。それらで火を焚こしながら太めの枝に着火させるんです。」
「ふ~ん、結構手間なのね」
「でもまぁ言うほど手間じゃないんですよ、最初に入れ方をちゃんとしておけば、その一回でお湯くらい沸きますから。問題は、この霜でしょ乾いた枯れ木が有るかどうか」

僕らは広場の周りの木の生えてる所を探し始めた。
「有った有った少年。表面は霜が解けて湿ってるけど、そこをどければ乾いた枯枝が有るわ。」
「こっちも、そこそこ集まりましたよ」
お互いが、抱え上げた枯枝や枯葉を見つめて笑い有った。
「カヲルさん、そんなに拾わなくても」
「少年こそ、狼煙でも上げるつもり」
あ~ぁ、何だか山登り万歳って感じです。

「じゃあ、このコンロに入る大きさにポキポキ折ってもらえますか?」
「こんな感じで良いのかな?」
「あっそれ位の大きさでOKです。そうしたら、一番下にティッシュを一枚敷いて、その上に松葉や枯葉を乗せて・・・」
「結構手間かかるのね、焚き火コンロって」
「その分、愛着が湧いてきますよこのコンロは。次に細めの枝を乗せて、仕上げに太めの枝を乗せるっと・・・五徳をセットして準備完了です。」
「お水は、このペットボトルのお水で良いの?」
「ハイ、そっちのコッフェルに入れちゃって下さい。」
「じゃあ、着火しますよ。ほら、ここの穴から紙縒ったティッシュの切れ端を差し込んで、導火線代わりにするんです。今日は風がそこそこ吹いてるから、問題なく着火すると思うんですけど・・・」
「あっ、点いた点いた・・・煙が上がってきたよ少年」
「じゃあカヲルさん、焚き火番お願いしても良いですか? その間にコーヒー準備しますから。」

「良いわよ。火が弱まったら、上から枯れ木入れれば良いの?」
「そうっすね・・・あっ、風下に居ると結構煙いっすよ。」

一人用のコーヒーミルを取り出しながら、カヲルさんにコーヒーの好みを聞くのを忘れた事を思い出す。
振り返ると、子供みたいに小さく蹲り焚き火の世話をするカヲルさんが居た。
ルックスだけじゃなくて、仕草の一つ一つが子供みたいで可愛いです。
「ん?どうしたぁ少年」僕の視線に気付いたカヲルさんが、顔を上げた。
「あっ・・・コーヒーは濃い目でも良いですか?後、砂糖とミルクは?」
「濃い目で良いわよ、ミルクを思いっきり入れてカフェオレにするの。」
嗜好まで、可愛く感じてしまうのが、惚れてしまった男の悲しい性なんでしょうか・・・
「あれ?それってコーヒー豆挽く機械?」
「えっ、そうですよ。これも会社の先輩に、コーヒー豆は挽きたてが一番って唆されて買っちゃったんです。でも、確かに豆のままの方が味も落ちにくいし、お湯が湧くまでの暇つぶしに丁度良いんですよ。」
「そんな小さなのが有るんだ、間違いなくアウトドア向けって感じだね。」
「そうっすね、ほらハンドルも折り畳めてコンパクトになるんですよ、これ」
「あっ本当だ凄~い。男の子って、こんな小物見付けるの得意だよね」興味深そうにカヲルさんが覗き込んできた。
「ゴリゴリしてみます?」
「うん、するする。ゴ~リゴリゴ~リゴリ♪」
「なんっすか、その変な歌は(笑)」・・・駄目です、もう全てが可愛くって、僕はどうにかなっちゃいそうです(^_^;)



日が傾き始めた頃、僕達は山の麓の駐車場に居た。
「カヲルさん、今日はパワーランチ御馳走様でした。」
「ううん、こっちこそコーヒーにお昼まで御馳走になっちゃって。」
「いや・・・インスタントラーメンっすから。」
春がそこまで来ていると言うのに、夕暮れの風はまだまだ冷たかった。
「寒いねここ・・・そろそろ行こっか」
「そうっすね、昼間は暑いくらいだったのに・・・」

「ねぇ・・・」「あのぉ・・・」
お互いが何かを言いかけ言葉につまった。
「なによ少年?」
「いい加減、少年は止めて下さいよカヲルさん・・・そうじゃなくて、あの・・・」
「何よハッキリしないわね・・・そんなんじゃこれからも少年って呼んじゃうよ・・・」
「これからも?」
「そう、これからも・・・ず~っとよ。・・・だから、少年って呼ばれたくないなら、ちゃんと言いたい事言いなさい。」
カヲルさんはそう言いながら、背筋をピッと伸ばしまっすぐ僕の方を向いた。
大丈夫だから、そう言われている気がした。
僕も、背筋を伸ばしカヲルさんの方を向いた。そしてゆっくり喋り始めるのだった。



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Weekend episode
「今日定時で終われますかねぇ?」
現場に向かう車の中で、僕は森山さんに話かけた。
「ん~。今日は、アクシデントが起こらない限り、大丈夫だろ。なんだ今夜デートでもするんか?」
「えっ? いや! えへへ・・・」
「何だよ、その不気味な笑いは! あっマジでデートなん? まさかお泊り? 相手は幾つ? 可愛いんか?」
そんなにガッツリ食いつかなくっても(^_^;)こんばんわ、森山さんの後輩、竹下純です。
―――――――――7月15日(金)―――――――――
そうなんです、今夜からカヲルさんとデートって言うか、四万十川にバックパックに出掛けます。
予定では、今夜の内に四万十川中流の大正に着いて、2日間歩いて適当な駅からスタート地点に列車で戻る予定です。

僕ら、2月に出会って以来、頻繁に会う様になりました。
散策に出掛けたり、アウトドアショップ巡りをしたりと、ちょっと普通のカップルとは違うデートなんですけどね。
そして、今回初めてのお泊り旅行です。
まぁ、バックパッキングですから、ペンションでお洒落にって感じじゃないんですが。

四万十川を歩く事自体テンションは上がるんですが、カヲルさんと一つ屋根の下(テントですから)で一夜を過ごす事自体にテンションが上がりっぱなしです。
一応、ザックの中に夜の装備も忍ばせてきました(^_^;)

予定では、夕方には松舞を出発して、三刀屋から松江道入ってカヲルさんと合流、もう一度松江道入って山陰道、中国道、岡山道と抜けて四国入り、ナビ上では7時間弱の道のりです。
一応、交代しながら運転しますが、カヲルさんの車って3ナンバーだし、正直言って高速ってまだ苦手なんですよね(^_^;)



「んじゃあ、お疲れ様でした森山さん」
「おう、お疲れ、気をつけて行って来いよ・・・あっ、おい純! お前、コンドームちゃんと持ったか?」
「んっ?竹下、お前今夜デートなんか?」
「そうらしいんすよ小村さん。ったく、未青年のくせしてさ」
「そう言えば森山、佳奈絵ちゃんが大阪でお財布失した時、社長と俺が差し入れ持たせて、ここから送り出したよな。」
「あ~そんな事有りましたねぇ でも普通コンドーム差し入れなんてしませんよ小村さん」
二人で、怪しい昔話に花が咲いてますね(^_^;)
時計を見たら、5時50分

「やばっ、6時半集合なんですよ、俺、行きますね」
「おう、気い付けや」
二人にお辞儀をして、小走りで駐車場に向かう。
その足取りは、3連休突入の解放感と、これから始まる旅へのワクワク感で、少し軽い気がしたのは気のせいじゃない様な気がします♪

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ちょい、言ったー。
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Weekend episodeⅡ
土佐大正の道の駅に着いたのは、夜中の1時を回ってました。
カーテン代わりとして、窓に垂らした銀マットの隙間から朝日が差し込んでいます。
横に目をやると、カヲルさんの寝顔が有り、思わずドキッとしてしました。
おはようございます、竹下です。
―――――――――7月16日(土)―――――――――
今日から、バックパッキング旅の始まりです。
目的は、沈下橋の有る風景。
松舞にだって、何本か沈下橋が有るんですけど、以前雑誌で見た四万十川の沈下橋が良かったって、カヲルさんが言い出したのが、今回の旅の始まりです。


「う~ん、おはよう純君。今、何時?」
あっ、カヲルさんも目覚めたようです「おはようございますカヲルさん。えっと、7時過ぎですよ」
「じゃあ、顔洗って朝ご飯にしようか」
僕らはお手洗いで洗顔し歯を磨いた・・・そんな気取らない所がカヲルさんの魅力の一つなんですよね。

昨夜、コンビニで買ったパンと温くなった缶コーヒーで朝食を済ませ、僕らは出発の準備を始めた。
今回の行程は2泊3日、道は比較的平坦ですし基本的に街から街へと渡り歩くコースですから、食糧は行動食がメインです。
その代わり、熱中症対策の水は多めに装備しています。いくら最後の清流とは言え、飲めるほどキレイとは考え難いですからね。

「テント・・・OK、シュラフ・・・OK、食糧と水もOKね、ファーストエイドセットもOK」
お互い声をかけて、チェック終了・・・そして出発です。

いつもの様に、ザックを背負い歩き始める。
歩きながら携帯を取り出し、天気をチェックしてみた。
「うわ~、今日は35度超えるそうっすよ。」
「だよね、荷物準備だけで薄すら汗かいてるもん、水分だけは細まめに摂ろうね。UVケアもウォータープルーフにしておいて良かったわぁ。でも汗びっしょりになるだろうから、うまい具合に夕方、温泉か銭湯が見つかるといいね」
「そうっすね、まぁ携帯有るから何とかなるんじゃないっすか? あれっ、そのGPS買ったんっすか?」
「うん、夏のボーナス見越して買っちゃった♪ 今は便利よね、携帯だけでも十分事足りるんだから。ワンゲルの時なんか、1/25,000の地図を揃えるだけでも大変だったんだから。それにガイドブックだって必要でしょ、荷物が多くてパッキングに苦労したんだから。今は、携帯一つで情報収集出来るから、安心して旅出来るわよね。その分、ドキドキワクワク感は薄くなったけど」
・・・野宿しながら行ける所まで歩いて、そこから電車で戻ってくるってだけでも、十分行き当たりばったりな気もするんですけどね(^_^;)

西に向かってほどなく歩くと、四万十川が見えて来ました。
「うわあ~、斐伊川なんか足元に及ばない位、良い雰囲気ですね。」僕はザックのポケットから、デジカメを取り出した。
「あれ? 純君、デジカメ変えた?」
「はい、デジイチだと重量が結構有りますからね。でも、こいつもちゃんと絞りやシャッタースピードかまえるし、大口径レンズに負けない明るさのレンズなんですよ。実は僕もボーナス見込んで買ったんですけど、1年目の夏ってボーナス寸志程度なんですね、足が出ちゃいそうです」
「もう計画的に買い物しなくちゃあ・・・でも、そのデジカメなら確かにトレッキングやバックパックに連れて出れそうだね。あっ、見て見て、カヤック出てるよ」
「あっ本当ですね、やっぱ四万十ならカヌーツーリングの方が楽しそうですね」
「でも私、カヤックはやった事無いのよね。純君は有る?」
「僕も、秋鹿のなぎさ公園でちょこっとやっただけですよ。」
「へぇ~あそこヨットとスワンボートだけかと思ったら、カヤックも有るんだ、今度やってみようかな・・・ねぇ、早速来週連れて行ってよ純君」
「っもう~、相変わらずせっかちなんだから。来週は、カヲルさん講習会が有るって言ってませんでしたっけ?」
「あっ、そうだった。その翌週は月初だから、休日出勤かもしれないし・・・そうこうしている内にお盆に入っちゃうのよね、学生時代は長い夏って気がしてたけど、社会人になってみると夏って短いわよね。」
「んで、また一つ歳を取る訳ですね」
「何よそれ純君、イヤミ? 」
「うわぁ~、深い意味は無いですってカヲルさん」

「・・・まぁ良いわ、後でじっくり追及するからね。それより、このまままっすぐ国道行くより、左の橋渡った方が、景色良いと思わない?」
「あっ確かに自然感は、あっちの方が濃いそうですよね。あの道って、最終的にどこ行くんですか?」
「ん~っと、待ってね。このGPSナビ、まだ使い馴れてないからね。・・・大丈夫だわ、川を挟んで並行に走ってるから。距離は国道の方が稼げるけど、気分的に左の道の方歩きたいなぁ」
「そおっすね、じゃあ、あの橋渡っちゃいましょか」


カヲルさんが最初、「とりあえず、四万十川向かおう」って言った時は、正直「マジかよ」って思いましたが、パックツアーでもないガイドブックに従う訳でもない、時間も行き先も自由気ままって言うのも楽しいものですね。

・・・えっ!?カヲルさん、いくら自由気ままとは言え、そこはどう見たって道じゃなくて、畑の中なんですけど。
そのまだ子供っぽいルックスとは裏腹に、すごくアグレッシブに行動しています。
ほらぁ、農家の人がこっちを見てますよ・・・
カヲルさんは臆する事なく、農家のおじさんに声をかけてます。

・・・・・・

「いや~、色々地元の人に話かけてみるもんだね、純君」
「そうっすね、トマトにきゅうり沢山貰っちゃいましたね。でもまあ、よくしゃあしゃあと、『あんたら、高校生かい?』って聞かれて、『はい、そうなんです』なんて、返事が出来ましたね。しかも、学生生活最後の思い出作りなんて脚色までしちゃってさ」
「んっ? 何か文句有るの?」
「いや、特に無いっすけど(^_^;)」
「あそこで、『はい』って言ったから、トマトをおまけしてもらえたんだよ、感謝しなさい」
ううう・・・まぁ確かにそれは認めますけど・・・ちょっと罪の意識を感じるのは、僕だけでしょうか?


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Weekend episodeⅢ
昨日貰ったトマトときゅうり、四万十川で冷やしてから食べたら、すごく美味しかったです。
今日は、曇り空で風も少し有るから、快適に歩く事が出来そうです。
おはようございます、竹下です
―――――――――7月17日(日)―――――――――
昨日は、沈下橋を見つける度に休憩しちゃいましたから、思っていた程距離を稼ぐ事が出来ませんでした。
それでも、夕方には温泉につかる事が出来(お昼を買った食料品店で、温泉の場所を教えてもらい、割引券まで頂いちゃいました♪)、日没までには無料のキャンプ場に到着し無事に夜を迎える事が出来ました。

えっ? 夜は楽しめたかって?
僕のもカヲルさんのもソロテントでしたので、タープと言う一つ屋根の下別々のテントで寝てました。
まぁ、「今日歩く為の体力は、温存しておかなければいけないので、丁度好都合でした」と、負け惜しみを言わせて下さい。

朝食のホットサンドを頬張りながら、携帯で天気をチェックしてみる。
・・・うわっ、台風が近づいてるんだ。
快適に歩けるなんて喜んでる場合じゃないですね。
「カヲルさんやばいっすよ、台風ですよ台風。今夜から降り出すみたいですよ」
「え~っ、そうなの? 場合によっては、今日でトレッキングは終わりかもね。」
「マジで?」
「そうよ、もし明日瀬戸内大橋が、台風で通行止めになったら、帰れないでしょ。様子を見て、今夜か明日の午前中には、倉敷まででも戻っておいた方が、利口じゃない?」
「う~ん、確かにそれはそうですけど・・・」
「四万十川は、逃げないから又来れば良いじゃない。それに、雨が降りだしたら河原でキャンプ出来ないし・・・ねぇ、やっぱり今夜のうちに車まで戻っておこうよ、純君」
そうですよね、こんな事でカヲルさんを困らせても、仕方ありませんよね。

「そうですね、やっぱり今夜のうちに行動しましょうか。その代わり、絶対に今日の続きを一緒に歩きましょうよ、カヲルさん」
「うん、絶対二人で行こうね。約束だよ純君♪」そう言いながら、カヲルさんは右手の小指を突き出した。



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Weekend episodeⅣ
高速のパーキングに止めた車の中で、僕らは目覚めた。
「おはよう純君。結構、風も出て来たね」
「そうっすねぇ 夜中、車体に穴が開くんじゃないかって位の雨が降ってましたしね・・・やっぱり、予定を切り上げて土佐大正に戻って正解でしたね。」
そう言いながら僕らは、寝袋の中から這い出した。
おはようございます、竹下です。
―――――――――7月18日(月)―――――――――
昨日の夕方の時点では、まだ雨降りそうな感じは有りませんでしたが、天気予報をチェックしてみると夜半から雨・・・しかも、結構まとまった量が降るって事でしたので、朝の約束通りJRで土佐大正の駅へとUターンしました。
車に戻ったのは20時過ぎ、寝るには早い時間ですし、取りあえず行ける所まで戻ろうという話になり、土佐大正の道の駅を後にしました。

途中のパーキングで、遅めの夕ご飯を食べ始めた位から、ポツポツと雨が降り始めました。
「とうとう降りだしましたね」僕はレストランの窓越しに、外を眺め呟いた。
「そうね。やっぱり、判断は間違ってなかったね」
「年の功って奴・・・いや、何でもないっす」
「ふ~ん・・・純君、そんな事言っちゃうんだ、良いわよぉここから歩いて帰っても。」
「ううう・・・勘弁っす。」さり気無く、窓の方にもう一度視線をずらしてみる
窓ガラスに叩きつけられた雨粒が一筋、街灯の光を反射しながらスーッと静かに、ガラスを伝って流れ落ちた・・・。
それだけの光景に少し心をかき乱された。

旅の思い出を共有出来たのはうれしいけど、こんな幸せがいつまで続けれるんだろう?

僕の視線を追っていたカヲルさんが、一息ため息をつきコーヒーを口にした。
「どうした少年。やっぱり残念?」
「いえ、そんな事無いです、2日間だけでしたけど楽しかったですよ。それに、また行くんでしょ今日の続きを歩きに。」
「そうね。早ければ、9月の3連休当たりなんか、どうかな?」
「良いっすね。それか、もう少し遅らせて紅葉を楽しむかって所ですね」
「紅葉かぁ・・・そう言えば、純君は栗とかアケビとか採った事有る?」
「そりゃ山ん中育ちですからね。栗どころかマツタケ取ったり、ヤマノイモ見付けてムカゴ採って近所のおばちゃんにお小遣い貰ったり、マーキングしておいて冬に自然薯掘ったりしてましたよ。」
「さすが男の子ねぇ・・・ムカゴご飯とか好き?」
「いや、我が家は煮っ転がしにしてましたから、食べた事ないですね。」
「じゃあ、今年の秋は栗ご飯にムカゴご飯、沢山作ってあげるね」


・・・今年の秋も、一緒に居てくれるって事ですよね。
その言葉に少し救われた気がする。
窓を伝う雨粒を眺めながら、ぼんやり今日聞いた話を思い出していた。
「このところ、立て続けに見合いしないかって話が、舞い込んでいるのよ。やっぱ、田舎だとそう言う話が来るのが早いわよね。」

もし、お見合いするなんて話になったら、僕はカヲルさんと会う事が出来なくなるし、何よりお見合いする事決めた自体、僕とは分かれるって言ってる様なものです。
そりゃまぁ、僕は社会人に為りたての18歳、その日を無難に過ごすのが精一杯の状態です。
片やカヲルさんはそろそろ適齢期の23歳・・・見合い話が入り始めてももおかしくない年齢ですよね。
本人は、結婚なんてマダマダ先の話って、笑っていますが・・・


お互い無言になっている事に気付き、気の利いたネタを探してみる。
「そう言えば、田舎の裏山じゃあ一年中、食材が取れますよ。春はフキノトウに始まって、土筆、タラの芽、コシアブラ取れますし、タケノコ、野蒜、蕨にゼンマイ、コゴミなんかも食べますね。夏はヤマメや鮎釣ったり出来ますし」
「うわぁ、山菜の宝庫だね。じゃあ来年の春は、ワンゲルメンバー呼んで山菜パーティーしようよ純君。」

来年になれば、僕は年齢が一つカヲルさんに近づける。
でも、それはほんの数カ月の話であって、誕生日が来ればカヲルさんは、また一つ年上になってしまう。
もし、カヲルさんが歳を取らないか、僕だけ時間軸を早く進める事が出来たなら・・・出来もしない事を、あれこれと考えてしまいます。

「ん~どうした少年、午後から顔が暗いぞ。」
カヲルさんが、心配して僕の顔を覗き込んだ。
「あっ、すいません。何でもないんです。何でも・・・」

「あっ、ひょっとしてお昼に話した見合い話の件、気にしてる? あの時、純君少し表情が曇ってたけど。だから、そんな気は全然無いって、まだまだ自由に羽ばたいていたいもん私」
「でも、いつまでもそうは言っておれないでしょカヲルさん。」
「『どんどん歳を取って行くだけ』なんて言わないでよ、それは私だって分かっているんだから。」
「だったら、やっぱり俺と・・・」
「それ以上言ったら、本当にここから歩いて帰ってもらうわよ少年。」
少し睨む様に、カヲルさんは僕の目を見た。

「ねぇ純君、私が見合い話を断るのは、もっと自由に過ごしたいからなの。週末には、自由気ままに色んな山に登っていたいの。結婚したら、旦那さんに気を使わなければならない、家庭が第一だから山登りの回数だって減るでしょ。中高年の登山ブームなんて、私にとってはまだまだ先の話だもん。第一、旦那が登山好きとは限んないでしょ。山か結婚、どちらを選んでも後悔すると思うの。どうせ後悔するなら、今、やりたい事をやっておきたいの。」


「それに・・・・・・

・・・少年には、保護者が必要でしょ。私が見守ってあげるから、安心して青春を謳歌しなさいよ」
えっ?それって?
「ちょっとぉ、何をキョトンとした顔してるのよぉ。ちゃんと、お礼の一つ位言いなさいよ」
「あっ・・・あぁ・・・あっ、ありがとうございます」
「うわぁ、取って付けた様な棒読みはなによぉ。やっぱり、ここから歩いて帰ってくれるかなぁ」
「うわっ、カヲルさん。それだけは勘弁です、まだ本州にすら戻ってないんですよ僕ら。」
「だったら、もっと気の利いたセリフの一つ位言えないの?」
「あの~・・・ とにかく、カヲルさんが後悔しない様に、精一杯僕はカヲルさんを幸せにします。」
そう言う僕の瞳には、少し泣きそうな顔をしたカヲルさんが映り込んでいた。


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Weekend episodeⅤ
「おはようございます、森山先輩」
僕は、会社の駐車場で森山さんに挨拶をした。
「お~竹下、どうだった?ちゃんと大人になったか?」
「いきなりその話題すか?」

「おっす森山。何を朝から騒いでるんだよ」
僕の背後から、小村先輩の声がした。
「あっ、小村先輩おはようございます。」
「おっ、竹下じゃん。男になったかぁ」

いや、二人とも爽やかな顔して、どうしてそんな話出来るんですか(^_^;)
おはようございます、竹下です。
―――――――――7月19日(火)―――――――――
「そうだ小村さん聞いて下さいよ、竹下の彼女って23歳なんですって」
「おっ、姉さん女房かぁ・・・いいなぁ、色々彼女に手ほどき受けたんだろうなぁ?」
「『いいなぁ』って小村さん、今の発言は問題ですよ。良いんですか、美咲さんにチクっても?」
「馬鹿、嫁さんの耳に入ったら、小遣いカットされてしまうだろうが」

・・・うまい具合に話題が擦り変わったみたいですね。

「・・・んで結局のところ、どうなんだよ竹下?」
うわっ森山さん、まだその話題引きずってたんですか?
「ぼ、僕らは清い付き合いですから」
・・・一応、夜の必需品は準備してましたけど(^_^;)

「そんな事言って。実は彼女の方は期待してたんじゃないか?」
「えっ? マジですか? そんなもんなんですか?」
「おい森山ぁ! お前どう言う教育してんだよぉ! 竹下の奴、マジで何もしてないみたいだぞ。」
「いや、俺はちゃんと教育しましたよ、いつか小村さんが俺に言ったみたいに」
「んっ?俺何か言ったっけ?・・・・・・あぁ、あれか?『後ろは初心者にはハードルが高いから、最初は真ん中にしておけ』って奴?」
「そうそれっす。俺、今でもちゃんと、言いつけを守ってますよ」
う~ん、この二人は、朝から何て会話をしているんでしょう(^_^;)

・・・でもマジで、二人が喜びそうな事してないですよ・・・三泊中金曜の夜と日曜の夜は車中泊でしたし、土曜はそれぞれのテントで寝てましたからねぇ
まぁ、正確には日曜の夜は、少し良い雰囲気だったんですけどね。
あの時のカヲルさんのセリフは、さっきの小村先輩の話じゃないですけど、マジだったんでしょうか、僕にアプローチをかけていたんでしょうかねぇ?



「ふう~、何とか本州に戻れましたね。これで最悪、高速が通行止めになっても、下道で島根に帰れますね。」
「そうね純君。あっ、そろそろ運転変わろうか?」
「まだ大丈夫ですよ、カヲルさん」
「でももう0時回ってるし、子供はオネムの時間でしょ。」
「あ~また、子供扱いする~」
「んふっ、ゴメンゴメン。でも、そろそろ二人とも、マジで寝る事考えなくっちゃね」
「あ~、そうですね。別に無理して松舞に帰る必要ないですもんね。どうします、一度高速降りてホテルでも探します?」

「ホテルぅ?」
「いっ・・・いやっ、別に変な意味じゃないですよ。普通に寝るだけですから。」
「・・・な~んだ普通に眠るだけなんだ、残念。お姉さんが色々教えてあげたのに」
「なんっすかカヲルさん、その意味深なセリフはぁ」
僕は、少しほっぺたを膨らませた。

「ゴメンゴメン、怒った純君?」
「別に怒ってなんかないっすよぉ。ただ、返答に困っただけですぅ」
「ふふっ、耳まで赤くなってるよ純君、可愛いんだから」
「んもう~。また、子供扱いするんだから とりあえず、次のパーキングで車停めますよカヲルさん」
「うんOKだよ」


今からホテル探そうにも、チェックインの時間帯は終わっていますし、ファッションホテル探そうにも見つかる可能性は低いし、空室が有るとも限りませんので、結局高速のパーキングで車中泊する事になりました・・・非常に残念です(>_<;)

「んじゃあ、カヲルさんおやすみなさい。」「おやすみ、純君」
僕らはそれぞれ寝袋に包まった。

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・
「う~ん、いざ眠ろうと思うと、逆に眠れないものね。こんな事なら、冷たいビール買っておけばよかったね・・・あっ、でも純君は未青年だから飲めないね」
「んもう、どこまで子供扱いすんですかぁ。誰です昨日の夜、先に酔っぱらってしまって、僕にビールを飲め飲めって絡んできたのは? おかげで、500mlを3本も飲んだんですよ」
「あ~? そうだったっけ?」
「そうですよぉカヲルさん」

「ゴメンゴメン それより、本当に眠れそうにないわぁ・・・」
「どうします? 温くなったビールなら、ザックに2本残ってますよ。つまみも適当にナッツやチョコが残ってますし」
「そうね、仕方ないけどそのビール飲もうか・・・あっねえ、あそこの自販機にジンジャーエール置いて無いかなぁ?」
「見てきましょうか? でも、ジンジャーじゃ眠くならないですよ」
「分かってるわよ、そんな事。とりあえずジンジャーかコーラ辺り買ってきてよ。その間に宴会の準備しておくから」
う~ん、ジュースなんか飲んでどうするんでしょう?


「ジンジャーエール有りましたよ、カヲルさん」
「おっサンキュー、じゃあカップ持っててね。・・・こうしてビールとジンジャーエールを半分づつ注げば、少し温いけどジンジャーガフの出来上がり~」
「マジですか? ジンジャーエールにビール?」
「あら、これはちゃんとしたカクテルなのよ純君。とりあえず、乾杯しよ乾杯」

まぁ温かくなったビールを飲む事思えば、冷えているだけマシですかね。
僕は、カップに恐る恐る口を付けた・・・
「おっ、旨いじゃん、これ。さすが伊達に歳食ってませんね」

「何よ、その『歳食ってない』って? 子供扱いする仕返しのつもり?」
「違います違いますって。褒めてるんですよ・・・多分ですけど(^_^;)」
「・・・まぁ良いわぁ。あのね、このカクテルは、私が良く飲みに行くカクテルバーのマスターに教わったの。甘苦くって、美味しいでしょ。他にもトマトジュース割や、レモン絞ったカクテルだって有るのよ」
「マジっすか、それ?」
「意外と美味しいんだよ。まぁ、大人の味かもね」
「あっ、また子供扱いしようとしたでしょう」
「違うわよ違う・・・ほら、どんどん飲んだ飲んだ。」

「未青年にアルコールを勧める医療関係者って、どうなんっすか?」
「酒は百薬の長っていうじゃないのぉ。そもそも、私と初めて会った日には、もう飲んでたじゃないのよぉ純君はぁ」
あ~、カヲルさんったら、もう酔い始めてますね(^_^;)

「いつか純君と、その店で呑んでみたいなぁ。・・・当分先の話になるけどね。」
「はいはい、それまでしっかり僕の面倒見ていて下さいよカヲルさん」
「う~ん、それは純君次第かな。純君こそ、しっかり私に尽くしなさいよ」
「何で急に、女王様口調なんですか?」
「そうよ、私は女王様よ。さぁ下僕よ、私の登山靴を舐めなさい」
「んもう~カヲルさん、完全に酔っぱらってますね。」
「何よ、下僕の分際で生意気よ。そんな下僕には、鞭打ちの刑よ。エイッ」
「痛てっ! カヲルさん、細引きを振り回さないで下さいよ、結構痛いですよ、それ。」
「下僕のくせに、女王様に命令するとは何事よ。そんな悪い子はお尻ペンペンしちゃうから。」
「うわっ、女王様プレイの後はチャイルドプレイですか・・・って、マジで僕のクライミングパンツを脱がそうとしないで下さいよ」
「まだ、この私に命令をするのか、この下僕はぁ」

僕は、がっちりとカヲルさんにホールドされてしまった。
「うわっ、カヲルさんマジたんまっす。ビールがこぼれちゃいますって」
「う~ん気にしない気にしない。さぁ、ズボン脱いでお尻を出しなさいよぉ」
「わぁ~そんなに暴れたら、周りの車からカーセックスしてるって、勘違いされますよカヲルさん」
「良いわよ、本当にやっちゃおうかカーセックス」

「もう~、本当に酔っぱらってるんですからぁ」
「私は平常心よ純君。さぁ、諦めてズボン脱ぎなさい」
「だからイヤですって。今度シラフの時にゆっくりしましょうよ」
「『しましょうよ』って、一体何をするつもりなのよぉ」
「いや、だから・・・その・・・」
「ふふっ。少年がまた真っ赤になった、可愛い」
そう言いながら、カヲルさんは悪戯っぽく、僕にキスをした

・・・・・・

一度唇を離し、お互いの瞳を見つめ合う
そして、僕らはもう一度キスをした。

・・・・・・「カヲルさん? あの~、どうしちゃったんでしょう僕達」
「・・・・・・馬鹿、純君の馬鹿。もう知らない。ふぁ~あ、眠くなってきたから、私寝るわね」そう言いながら、カヲルさんはシュラフに潜り込んだ。
その瞬間、カヲルさんの顔は真面目な表情だった。



あの時のカヲルさんの表情は、一体何を意味しているんでしょう?
ひょっとしたら、本当に小村先輩の言う通りなのかもしれないですね。
・・・でもまぁ、そう言う事って偶発的に起こるよりも、もっとロマンチックに事を進めて行きたいですよね・・・って、僕だけでしょうか?


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