松舞町ラブストーリー
山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね。
カウンター

最近の記事

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

月別アーカイブ

カテゴリー

QRコード

QRコード

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

田植えが始まりました
曇り空で、今にも雨が降り出しそうで、少し憂鬱な気分です。
憂鬱なのは、空のせいだけじゃないんです。
今日は、お兄ちゃんが帰って来て、お父さんやお母さんと田植えなんです。
毎年、ゴールデンウィークは、田植えに追われてます。
折角、花の女子高生になったって言うのに、田植えで泥んこになるのは、どうなんでしょう・・・
あっ、初めまして、私、森山楓・・・松舞高校普通科一年生です。
―――――――――5月5日(火)―――――――――
前庭で、軽トラックに稲の苗を積んでいると、庭先に一台の車が止まりました。
あ~、あれね、お兄ちゃんが買った車って。
結構、可愛い車じゃん。
あれ?助手席に誰か乗ってる~
今年は、颯太さん東京行ったから、手伝いが一人減るって言ってたけど・・・
うん?女の人?
えっ?マジ?うちのお兄ちゃんが?
「お~楓、やってっか~?」
「こ・・・こんにちは・・・初めまして、金田佳奈恵って言います。あっ、楓さんですね?」
「こっ・・・こんにちは・・・」
思わず、上から下までジロジロ見ちゃいました。
ふ~ん、うちのお兄ちゃんにしては、中々可愛い女の子を選んだみたいね。
って言うか、この佳奈恵さんの趣味を疑いたくなっちゃいます、うちのオタク兄貴に惚れるなんて(笑)
「あら~あらあら・・・」
台所で朝ごはんの片付けをしていたお母さんが、玄関から現れた。
「あっ・・・初めまして・・・金田佳奈恵です。 あっ、これ、お茶の時に皆さんと食べようと思って持って来たんです。うちのおじいちゃんが作った田舎饅頭です。」
「あらら、これは又ご丁寧に・・・ありがとう。あら、千華屋さんじゃない。何、千華屋さんのお嬢さん?、でもあそこは、まだ子供が小さかったわよね。・・・・・・あぁそう、姪さんなのね・・・」
納屋の方から、お父さんも顔を出して来た。
「お~、ヒデ~。中々のベッピンさんを連れて来たなぁ~」
も~っ、お父さんったら・・・佳奈恵さん下を向いて、赤くなってるじゃない。
「いや・・・全然ベッピンじゃないって・・・。こいつも、松舞高校で少し農業実習やってっから、少しでも役立つかと思って、連れて来たんだ。」
「すいません、突然押しかけちゃって・・・モリヒデ・・・いや英生君が、手伝いに来てくれって言うもんだから・・・足手まといにならない様に、がんばりますから、宜しくお願い致します。」
ふ~ん、結構、礼儀正しい感じね、佳奈恵さんって・・・
「じゃあ早速手伝ってもらおうかね・・・あっ、荷物はほら、こっちの部屋に置いておいて」
お母さん、何か嬉しそうです・・・
「ヒグラシ、この苗の入ったトレーを、トラックまで運んでや。」
うん、何か、一気に我が家が活気付きました。
彼女、ヨタヨタしながらも必死にトレーを運んでます。
「はい、楓さんこれで最後です。」
「ヒグラシ~、次はこの道具を積むから、運んでくれ~」
こらこら、お兄ちゃん、彼女をそんなに扱き使って~
「あっ、佳奈恵さん私が、半分持つから。ゴメンね、うちのお兄ちゃん人使い荒くって」
「えっ、大丈夫ですよ・・・もう慣れてますから」
慣れてますからって・・・一体何年付き合ってんのよ・・・
「佳奈恵さんって、お幾つなんですか?」
「えっ?モリヒデ・・・いや英生君と同級生ですよ。」
「へ~、お兄ちゃんの事、モリヒデって呼んでんですね。同級生って事は、高校時代から付き合ってんですか?」
「いや・・・あの~付き合っているって言うか・・・なんて言うか~。同じクラスでしたし、今、うちの隣の部屋に住んでるし・・・」
あ~赤くなった・・・結構佳奈恵さんって、カワイイ~。
って言うか、隣の部屋に住んでるって、ほんとラブラブじゃん。

お兄ちゃんと、佳奈恵さんは一足先に、田植え機に乗って、うちの田んぼに向かいました。
なんか、変なデートですね。
私は、お父さんと軽トラックに乗り込み、田んぼに向かいます。
「ヒデの奴、いきなり彼女を連れて来うだもんなぁ・・・おべたよな。楓はヒデから話聞いとったんか?」
「全然、聞いとらせんし・・・何か高校の時からの付き合いみたいだわ」
そう言いながら、窓の外に目を移す。
歩道を自転車で走る人影が目に入る。
あっ、青木先輩だ・・・
大森中学のブラスバンドの先輩で、松舞高校でも同じブラスバンドに所属している、ちょっぴり気になる先輩です。
通り過ぎる時、軽くお辞儀をしたけど、気が付いてくれたかな?

田んぼに着くと、早速田植えの準備です。
田植え機の後ろに苗をセットしていきます。
お父さんがなれたハンドル捌きで、苗を植えていきます。
お兄ちゃんと私は、田植え機では植え難い畦の近くに、苗を手で植えていきます。
佳奈恵さんが、手植えする苗を運んで行きます。
三つ目の田んぼの田植えが終わる頃、お母さんがスクーターで、お茶道具とお弁当を運んで来ました。
「佳奈恵ちゃん、疲れたでしょ。さぁさぁ、ちょっとお茶でも飲んで、休憩すぅだわ。ほら、楓、お茶の準備すうだわ。あ~佳奈恵ちゃんは手伝わんでいいけん、座っちょうだわ。」
ううっ、私だって疲れてんですけど、お母さん・・・
佳奈恵さんは、「あっ、大丈夫ですから」って、慣れた手付きで急須にお茶っ葉を入れ、お湯を注いでいます。
う~ん、中々出来る人みたいです、佳奈恵さんは。
湯飲みにお茶を注がれたお茶を、「どうぞ」ってそれぞれに渡すと、今度は持って来たお饅頭を手際よく、器に移して、みんなに勧めています。
なんか、うらやましいなぁ・・・こんな、気の利く女の人って・・・

みんなで、土手に座り談笑をしていると、向こうからまた自転車が・・・青木先輩です。
どこかに行った帰りでしょうか・・・?
余り見られたくない光景なんですが・・・(^^ゞ
「あっ・・・青木君だ。お~い青木く~ん」、佳奈恵さんが青木先輩に気づき、手を振ってます。
えっ?何で青木先輩の事を佳奈恵さんが、知ってるんでしょう?
キィって自転車が止まり、青木先輩が会釈をしています。
私は内心、ドキドキしています。
「何だ、佳奈恵さんお友達かい? 良かったら一緒にお茶せんかね?」
あ~、お父さん余計な事を・・・でも、ちょっぴり嬉しかったりして♪
「あれ、森山さん? あっ、ここって森山さんちの田んぼなんだ。」
私に気が付いた、青木先輩が、ゆっくり近付き話しかけて来ました。
「あっ青木先輩、こんにちは。どこかお出掛けですか?」
「いや、友達んちに、バンドスコアを借りに行った帰りなんだ」
そう言いながら、青木先輩は私の隣に腰を下ろした。
うわ、こんな近い距離でお話出来るなんて、夢の様です♪
「あれ?楓ちゃん、青木君と知り合いなんだ。へぇ~楓ちゃんもブラスバンド部なんだ。」
なんでも、佳奈恵さんの友達もブラスバンドでフルートを吹いていて、よく、油絵のモデルとして、音楽室に顔を出していたらしい。んで、青木先輩とも、顔を会わす様になって仲良くなったみたいです。
「おにぎり、多めに作ったから、良かったら一緒に食べんかね?」お母さんがそういって、おにぎりとおかずの入ったタッパーを私達の目の前に置いてった。
「すいません・・・」恐縮している青木先輩に、お兄ちゃんが「青木、遠慮せんでいいけん」って、おにぎりを差し出した。
「モリヒデさん、すいません・・・」
「えっ?お兄ちゃんも、知り合いなの?」
「そりゃ、毎朝電車で顔合わすし、俺もブラスバンドには、写真撮りに行ったからな」
「そ~そ~、モリヒデったら、いっつも女子部員追い掛け回したもんね」
「こらヒグラシ、変な事楓に言うなや~。なぁ、青木そうだろ?」
「いや、当たってんじゃ・・・(笑)」
あ~お兄ちゃん、何やってんのよ~
「そっか、森山さんってモリヒデさんの妹だったんだ・・・モリヒデさんのモリって、森山のモリだったんですね。」
そう笑う笑顔に、胸がキュンッとしちゃいます。
この一瞬を切り取って、アルバムに仕舞っておきたい気分です。

お弁当の空きタッパーを、佳奈恵さんと片付けていると、佳奈恵さんがこっそり聞いてきた。
「ねえ、楓ちゃん。青木君の事、好きなんでしょう?分かるわぁ、中々、明るくて楽しい子だもんね」
「えっ、いや~別に私はぁ・・・」
「隠してもダメだけんね。ちゃ~んと、分かるんだから。青木君なら彼氏としてお勧めだわ。」
頬っぺたが赤くなるのを感じ、私は下を向いた。
「ほ~ら、やっぱりぃ(笑)。頑張ってね、楓ちゃん♪」
「お~いヒグラシィ。青木が午後は田植え手伝うって言ってるから、お前は苗を運んでくれや~」
えっ、そんな、青木先輩までが、うちの田植えを手伝うなんて・・・
「やったね、楓ちゃん。」佳奈恵さんがこっそりピースサインをしてきた。
私は、小さく頷く事しか出来なかった。

「ヨ~イ、スタート・・・」
お兄ちゃんと青木先輩が、田植え競争を始めました。
佳奈恵さんがお兄ちゃんの苗を運んで、私が青木先輩の苗を運ぶ係りです。
「あ~、森山さん。苗はそっち側に置いて~。あと、苗を解しておいてくれると助かるなぁ~」
私も必死に青木先輩の手伝いをします。解した苗を手渡す時、手と手が触れ合ったりして、ドキドキしちゃってます。
「ふぅ~」
気が付くと、最後の田んぼも田植えが終わってました。
「あ~ぁ、四人とも泥んこになっちゃって・・・」お母さんが、困った様な顔でこっちを見ています。
「あんたら、先に家帰って、身体洗いんさいや。青木君も遠慮せんでええけん、シャワーなと浴びて帰え~だわ。」
「おぉ、青木、チャリンコ軽トラの荷台に乗せーだわ。んで、お前と楓は荷台に乗っちょって」
私は青木先輩と、荷台に自転車を乗せ、そのまま座り込んだ。
「あ~、初めての田植えだったけど、楽しかったわ。モリヒデさんにも田植え競争で勝てたし・・・」
照れ臭くて、私は小さく頷くだけだった。
倒した自転車の前かごから、バンドスコアがゴトンと落ちた。
慌てて拾い上げながら、「この曲、前からやってみたかったんだよね。」そう言いながら、先輩がスコアを私に見せてくれた。
「アルメニアンダンスですか・・・これって、早くて難しいですよね。」
「だから、カッコいいんだって・・・楓ちゃんは、クラのThirdだからまだ、少しは楽かもしれんよ。」
「でも、楽譜読むの余り得意じゃないし、この曲まだちゃんと聞いた事ないんですよ~」
「あっ、じゃあ休み明けにMD持って来るよ。」
「えっ、マジですか?ありがとうございます。」
なんか、急に親しくなれて、ラッキーですO(≧∇≦)O イエイ!!




↓宜しかったら、ポチりとお願いしますね。
http://blog.with2.net/link.php?327703人気blogランキングへ


スポンサーサイト

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

初デートです(*^^)v
始発の電車は、緑の田んぼの中を、静かに走り抜けます。
車窓から眺める景色は、一面が緑色でした。
こんばんわ、お騒がせ人間モリヒデの妹、森山楓です。
―――――――――5月17日(日)―――――――――
それは、ゴールデンウィークが終わった7日の放課後の話・・・
「森山さん、これ・・・」青木先輩が手渡してくれたのは、一枚のMDでした。
「アルメニアンダンス以外にも、色々入ってるから・・・」
あっ、青木先輩、田植えの日にした約束覚えていてくれたんですね。
「ありがとうございます、早速今夜聞いてみますね。この間はすいませんでした、お陰でずいぶん早く田植えが終わりました。」
「いや~楽しかったよ。でも、モリヒデさんと金田先輩が付き合ってるなんて知らなかったなぁ。あの二人、音楽室でいっつも喧嘩しちょったけん。んで、フルートのパート長だった緑川先輩が、いっつも仲裁に入っていたんよ・・・」
あちゃ~(*ノω<*) 、うちのお兄ちゃんは他の部活まで顔出して、何してんのよ・・・
「あっ、ところで森山さん、来週の日曜日って何か予定有る?」
「えっ、来週の日曜日ですか? 特に何も予定入ってないですけど・・・」
「あのね、遠いけど濱野市の高校の定演が有るんだ。演奏曲の中に、アルメニアンが有ったから、良かったら聞きに行かない?」
「濱野市ですか・・・一日で行って帰れるんですか?」濱野市は、山陰の西の端の方に在って、松舞からでは結構遠いんですよね・・・
「う~ん、始発に乗って行けば、演奏開始時間には間に合うはずだよ。濱野高校って去年全国大会に出場してるから、レベルはそこそこ高いよ。」
「そうなんですか?・・・じゃあ、行きます行きます・・・」
やった、青木先輩とお出掛けです♪
ちょっと、もったいぶった言い方しちゃいましたけど、内心は「もう即OK、演奏会なんて間に合わなくたっていい」状態だったんですけどね(笑)


今朝は、大森駅に5時半に集合でした。
うちの両親に勘ぐられたくないから、前の晩に佳奈恵さんにメールして、アリバイ工作をお願いしちゃいました。(最近、うちの近所にも携帯のアンテナが建って、うちも圏外で無くなりましたよ。)
佳奈恵さんから、メールで「頑張って」って届きました・・・何を頑張れって言うんでしょう・・・
青木先輩は少し遅れてやってきました。う~ん、シーンズに白のワイシャツ、ピンクのネクタイが、おしゃれです♪。
私だって、昨日の夜、雑誌を見ながら、精一杯かわいくコーディネイトして来ましたよ。
「ごめん、遅くなった」そう言って手を上げる青木先輩に朝日が当たって眩しいです、クラクラしちゃいます(笑)
「おはようございます、大丈夫ですよ、私もさっき来た所ですから」・・・さっきと言っても一時間前ですが・・・
休日の始発の電車は、さすがにお客さんもまばらで、四人掛けの席に、向かい合って座りました。
本当は隣に座りたいけど、こんなガラガラの状況じゃあ、そんな事出来ませんよね・・・残念。
「ところで、どうやって濱野市に行くんですか?」
携帯をゴソゴソとポケットから取り出して、青木先輩は説明してくれました。
「ん~っと、このまま松舞は通り過ぎて、ここで山陰本線の下りに乗り換えて、そこから2時間位かな・・・」
すご~い、ちゃんと携帯で調べていたんですね。本当、頼もしい人みたいです。
ブラスバンドの話、好きなアーチストの話、嫌いな先生の話なんかしてたら、あっという間に濱野市に到着しました。
「思ったより、早く着いちゃいましたね・・・」
「だな・・・。開場は1時からだし、駅から会場までは歩いて10分だし・・・先にお昼ご飯食べようか。え~っと、何か食べたい物有る?」
「えっと・・・青木先輩にお任せしますよ。」
「う~ん、俺も特にこれって食べたいもん、ないんだよなぁ・・・。う~ん、どうしよう・・・、この町初めてだしなぁ・・・」
青木先輩、少し困っています・・・。
「あっ・・・、先輩あそこに喫茶店有りますよ。喫茶店なら、色んなメニュー有りますよね、きっと・・・」
青木先輩、少しホッとした顔をして「んじゃあ、あそこにしようか」って歩き出しました・・・
「あっ・・・待って下さいよ~」 なんか、不機嫌っぽくなっちゃいました、青木先輩。
喫茶店で、青木先輩はピラフセット、私はナポリタンを注文。
「あっ、美味しい、このピラフ・・・」
良かった機嫌直ったみたいです。
「一口、食べてみる?」えっ、きゃ~間接キスです~。
「あっ、確かに美味しい~♪ 先輩、ナポリタンも食べてみます?」
フォークに絡めて、青木先輩の目の前に差し出すと、一瞬躊躇してましたが、パクって食べてくれました♪
喫茶店を出て、演奏会の会場になってる、市民会館に移動します。
会場は、他の高校のブラスバンド部員でごった返しています。
席に着き、プログラムを見ていると、先輩がありゃって叫びました。
「アルメニアンダンスが、演目から無くなってる・・・」
どれどれって、演目に目を通すと・・・確かに無くなっている・・・
「本当ですね・・・あっでもでも、ちゃんと青木先輩にもらったMDで、ちゃんと曲も雰囲気分かりましたから、大丈夫ですよ。それに、代わりの曲は、エルザの大聖堂への行進曲じゃないですか。私、この曲大好きなんですぅ」・・・精一杯フォローしてみる。
「折角、楽しみにしてたんだろうに、ゴメン。チェック不足で・・・」
うっ・・・青木先輩何か落ち込んでます。
「だから、全然平気ですってぇ。一番聞きたいのは、青木先輩の吹くアルメニアンですから」
うっ・・・焦って本音を言ってしまった(^^ゞ
「えっ」って、先輩が聞き返した瞬間、ブザーが鳴り会場の照明が落とされました。
うう・・・つい本音が出てしまった・・・でも、どうしたんだろ青木先輩。
急に不機嫌になったり、落ち込んでみたり・・・
何か、私期限を損ねる事しちゃったかな・・・
そんな事ばっかり考えていたから、演奏に聞き入る余裕なんか無くて、気がついたら演目の半分が終わり、休憩時間になりました。
「森山さん?・・・森山さん、大丈夫・・・?」
「あっ、スイマセン。全然大丈夫ですよ」
「怒ってる?」
「えっ?何でですか?」
「いや・・・お昼ごはん食べる場所のチェックしてなかったり、演目のチェックしてなかったり、失敗してばかりだから・・・ゴメンね。全然楽しくないだろ?」
そんな事ないですって・・・
よく聞いてみると、青木先輩女の子とデートって初めてだったそうです。
「私だって、男の子とのデート、初めてなんです。今、すっごく楽しいですから。」
そうですよね・・・デート慣れしてる人でしたら、逆に付き合う事考えちゃいますよね。
後半の演目が始まった。
後半の一曲目は・・・静かな木管のメロディーから始まりました。
エルザの大聖堂への行進曲です。
チラって、青木先輩の方を見る。
ひざの上の先輩の手に、自分の手をそっと乗せてみる。
少し戸惑いながら、握り返してくる先輩。
静かなメロディーから、だんだんと雄大かつ優しいメロディーに変わっていきます、それはまるで先輩に対する想いの様に。

「良かったですね、濱野高校の演奏。うちもあれ位のレベルだったら、良いんですけどね。」
「だよな~」少し、赤い顔して横を向く先輩。
結構、ウブなんですね(笑)
楽しかったデートも、2/3が終わり、大森に向かって帰らなきゃいけない時間です。
私達以外にも電車で聴きに来ていた人達が多かったのか、駅への道は結構人がいます。
逸れそうな私に気付き、先輩がそっと手を差し出してきました。
先輩の目を見詰め、そっと頷く私。
帰りの電車も意外と空いていましたが、今度はちゃっかり先輩の隣に座りましたよ。
二人で、海に沈む夕日を眺めていたら・・・眠気が・・・
実は、洋服選びに時間がかかり過ぎて、殆ど徹夜状態だったんです(^^ゞ
うつらうつらする私に気づいて、先輩はそっと肩を抱いてくれました・・・幸せかも・・・


大森駅に降り立った二人。
確かに、詰めが甘いのかもしれないけど、マニュアル通りのデートより、全然楽しかったです。
先輩と、一緒にいれるならどんなデートでも楽しいです。
自転車にまたがり振り替える。
「青木先輩・・・また、演奏会連れて行って下さいね。」
そう言いながら、先輩の顔を見上げると、先輩はすごく嬉しそうに微笑んでいた。
「絶対、絶対ですよ~」
「あぁ、絶対誘うからな。今度はちゃんとリサーチしておくからな~」
お互い手を振りながら、ペダルを力強く漕ぎ出した。
まだ、少し冷たい大森の空気が、すごく心地良く感じた。

 


↓宜しかったら、ポチりとお願いしますね。
http://blog.with2.net/link.php?327703人気blogランキングへ



テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

マイ ボーイフレンド
通学列車から見る、松舞の山並みも随分と紅葉が進んで来ました。
赤と黄色と緑のグラデーションが綺麗ですよ。
話は変わりますが、松舞保育園の収穫祭以降、すれ違う園児達に、キュアピーチのお姉ちゃんと呼ばれる様になりました(笑)
こんばんわ、楓です。
―――――――――11月10日(火)―――――――――
松舞保育園の父兄の方から、収穫祭の時の写真を頂きました。
キュアピーチのコスプレをしてフルートを吹く私の写真に、部員一同大爆笑でした。
青木先輩との餅突きしている写真も有りました。
ツーショットの写真って、実は未だ撮った事無いので、宝物にしたいと思います♪
一年生のリーダーの本田が、一枚の写真を見ながら、ニヤニヤしています。
「ちょっと本田、何、写真見てニヤ付いてんのよ」そう言いながら、本田の手から写真を奪い取る。
そこに写っていたのは、沢田副部長と本田が餅突きをしている写真でした。
「こら、森山。勝手に見るなよ」顔を真っ赤にさせながら、私から本田は写真を奪い取る。
私は、彼の耳元でこっそり耳打ちする「ゴメン、みんなには内緒にしておくから」
「ばか、そんなんじゃ無いって」そう言いながら彼はそっぽを向く。
シラを切ったってバレバレですよ。
何たって、私と本田は幼馴染みなんですから。
そして、生まれて初めて好きになった人ですから。

部活が終わり、クラスメイトの春ちゃんの家に寄って、最近お気に入りの少女漫画の1巻から5巻を借りて帰りました。
少し話し込んでいたら、もう7時です。
慌てて春ちゃんの家を飛び出し、駅へと向かう。
駅に着くと、電車は出た後でした。
「あちゃ~次の電車まで、30分も待たなきゃ。」
お兄ちゃんに送ってもらおうかなって考えていたら、駅に見覚えのあるディパックを背負った男子が。
「あっ、本田」
私の姿に気付き、本田が話し掛けてきた。
「森山、お前随分前に学校出なかったっけ? やっぱとろい奴は、歩くのも、とろいんだな」
「誰がとろい奴よ。あんた、またゲーセン行ってたの?」
「おうよ、ばっちりハイスコア出して来たぜ」
あ~、お兄ちゃんと言い、本田と言い、男子ってどうしてゲームが大好きなんでしょうね。
「森山、お前今日は青木部長と一緒じゃないんだ?」
「ん? 今日は私が友達の家に寄ったから、別々に帰ったんよ」
「そっか、お前がとろいから、他の女の子に盗られたかと思ったぜ。そうだよな、お前らいっつもラブラブだもんな。」
「だから誰がとろいんよ。あんたこそ、沢田先輩にちゃんと告ったの?」
「馬鹿、俺が何で沢田先輩に告白しなきゃいけないんだよ。」
「良く言うわよ。幼馴染みの私が見たら、あんたの行動なんか一目瞭全だもんね。どう図星でしょう?」
「ちっ、好きにしろ」
鼻の頭を掻きながら、プイッと本田が横を向く。
そうそう、あんたは都合が悪くなると、鼻の頭を掻く癖が有るんだよね。
「俺には、沢田先輩なんて高嶺の花なんだよなぁ。」
ボソッと本田が呟いた。
「えっ?そんな事無いって、お似合いだと思うけどな」
「だって沢田先輩って言ったら、学年1位2位を争う美人だぜ。スリムでスタイルも良いし、頭も良いんだろ」
う~ん、確かに沢田先輩は漆黒のロングヘアが似合う美人です。
同性の目から見ても、見取れてしまう程の女性です。
片や本田と言えば、背はそこそこ高いんだけど、イマイチ、パッとしない顔立ち、はっきりとしない性格。
褒める所を探すのが大変な奴なんですよね。
さっきお似合いって言ったけど、背の高さが釣り合ってお似合いってだけだって事に今改めて気が付きました。
「まぁ本田、当たって砕けろって言うだろ。駄目元で告白してみたら?」
「お前、今のセリフ励ましている様には、聞こえないんだけど。でもありがとうよ。」

入ってきた下り列車に一緒に乗り込む。
「んで、森山。お前の方は、青木先輩とは順調に進んでいるのか?」
「えっ? う、うん。」
「キスとかしたん?」
「ちょっと本田、それセクハラ! もしキスしてたとしても、絶対にあんたには教えないんだから。」
「お~相変わらず気が強いな~。もっと女らしくしてないと、青木先輩に嫌われるぞ。」
「あ~またセクハラ発言した~。大きなお世話だって」
「はは、スマンスマン。ところで、今日の写真の件は絶対に内緒だぞ。」
「分かってるって。でも部屋に篭って写真見ながら、ニヤニヤするのは、止めろよな。なんか変態っぽいよ。」
「誰がするか! お前じゃあるまいし」
「ちょっと、私がいつ、写真を見てニヤニヤしてたのよ」
「だってお前、今日写真もらった時、すっごく嬉しそうにニヤニヤしてたぞ」
あちゃ、見られてたか~
「ほっといてよ、お互い様でしょ」
「それもそうだ。お互い今日の写真が宝物だな。あっ、お前はこの先も一杯写真撮れるか」
「なんで?あんただって沢田先輩と一緒に写真位撮れば良いじゃんか」
「いや、俺はこの一枚で充分さ。どうせ実らない恋なんだから。」
あ~、もう~、こいつはどうして、いっつもこんなにマイナス思考なんでしょう。
あの頃と全然変わってないんだから。

駅を降りて、本田の後ろを歩く。
「ねえ本田。この間の餅突きを見てる感じじゃあ、沢田先輩もまんざらあんたの事、嫌いじゃないと思うんだけどなぁ。勇気を出して告白してみたら?」
「いや、告白して変に意識される位なら、今のまま普通に馬鹿話に付き合ってもらっている方が幸せだよ」
「あんたねぇ~。それじゃあ一生彼女出来ないわよ。そんなウジウジしたマイナス思考の本田を、好きだった奴だって居るんだから。」
「そうだったよな、そんな奴が居たな。未だにおせっかい焼いて来るんだよな。でもそんな奴のおかげで、どれだけ自分に自信が付いた事か。それには今でも感謝してるぞ。」
「あんたには小さい時から、心配掛けさせられてばっかりだよ。もっと前向きに考えてみたら。このピュアピーチ楓様が、保証してるんだから。」
「ピュアピーチかぁ。イメージが崩れるよな。でもサンキュー、今、直じゃなくてもいつかは告白すっかな。んじゃぁな。」
「うん、頑張れよ。じゃあ又明日ね。バイバイ」
そう言って、私の家の前で手を降る。
好きだったあの頃も、こうやってここで別れてたんだよな。
でも、あの頃とは違う想いで後姿を見送る私が居る。
淡い初恋で、もう少し話をしていたかった、でもそれを言い出せずに、さみしく手を降っていた私とは。
結局私も、マイナー思考だったんだよね。
でも、そんな私を変えてくれた大切なボーイフレンドなんだよ、あんたは。


blogram投票ボタン

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

初めてのクリスマス・・・
「それではみんな、今年も一年間、お疲れさまでした~」
青木先輩の音頭の下、みんなで乾杯する。もちろんジュースですよ。
今日は、松舞高校ブラスバンド部恒例の、クリスマス会です。
こんにちは、森山楓です。
―――――――――12月22日(火)―――――――――
20日のクリスマスコンサートも、無事に終わりました。
急遽アンコールの演目に加わった「スターダスト」、サックスソロの大役を、本田がきっちりと吹き切って大好評でしたよ。

さて、今、みんなでお菓子を食べながら雑談中です。
最初は男女に別れておしゃべりしていたんですが、元々男女の仲が良いうちの部ですから、すぐに男女入り乱れての雑談会に発展しちゃいました。
「んで、青木、お前もう森山さんとキスとかしたんか?」
金管パートの先輩が、青木先輩にとんでもない事を聞いています。
「いや、俺達は別にそんな仲じゃ無いから~」
「今更、何惚けてんだよ~。もうバレバレなんだよ~、お前らの事は」
「ねぇ、本当のところどうなの?楓ぇ」
同じフルートパートの美夏子ちゃんが、こっそり私に聞いてきました。
「もう、美夏子まで~。してないわよ、キスなんか」
「じゃあじゃあ、手とか繋いだ? あっ、それともキスはしてないけどそれ以上の事しちゃったとか~」
「あのね~美夏子~、本当にまだ何にも無いって。」
「まだって事は・・・この先予定が有るんだぁ」
うっ・・・言葉に気を付けなきゃいけませんね、とんだ失言でした。
「ナイナイって。美夏子こそ、足立先輩とどこまでいったのよ~。」
「んっ?足立先輩、今、大学入試控えてるからって、最近遊んでないんだぁ」
大学入試かぁ・・・来年の今頃、青木先輩も同じ様に大学入試で忙しいのかなぁ・・・
「え~、青木まだキスもしてないの~」
んっ、向こうではまだ青木先輩への尋問が続いているみたいです・・・
「いいだろ、ほっとけよ~。そう言うお前はどうなんだよ~。相変わらずゲームの世界に没頭してんのか? いい加減2次元の世界からこっちの世界に戻って来いよ」
「うっせぇなぁ~。あっ、そう言えば本田はどこだ?あいつ、結構昼休みに沢田ちゃんと図書館で仲良くしてるって、噂に聞いたけど・・・本田~本田~あれ?どこ行った奴は?」
とりあえず矛先が本田に移ったみたいですね・・・そう言えば、さっきからあいつの姿見ませんね、気が付いたら沢田先輩の姿も・・・

「んじゃあ、少し人数が減ったみたいだけど、ここで恒例のビンゴ大会を始めます。」
青木先輩が立ち上がって、準備を始めた。
「楓ちゃ・・・森山さん、これを黒板の前の机に持って行ってくれる?」
「あ、ハイ分かりました。」
「森山、落とすなよ。」そう言いながら、本田が半分荷物を持ってくれました。
「ありがとう、本田。あんた、居たんだ」
「おいおい、酷いなぁ。そんなに存在感無いんか?俺は」
あっ、また鼻の頭を掻いてます、怪しいなぁ(笑)
ビンゴ大会は、皆が持ち寄ったクリスマスプレゼントを、ビンゴになった人から選べる様になっています。
「リーチだ」「あっ、私もリーチ」
ううっ、早くもリーチが出始めましたね。こんな時も私はやっぱりとろいんだ。

「それじゃあ皆、お疲れ様~」
盛り上がったクリスマス会も終わっちゃいました。
でもでも、私にはこの後もっと楽しみなクリスマス会が有るんです。
それは、青木先輩と二人で、青木先輩の家で二人っきりのクリスマスパーティーを開くんです。
なんでも、青木先輩のご両親は旅行に出掛けちゃったそうで、今夜は青木先輩の家にお泊りなんです♪
もちろん、家族や友達にも内緒なんですけどね。アリバイ工作の為、佳奈絵さんには連絡して有るんですけどね。
折角のクリスマスなんだし、キスくらいは、許されますよねきっと。
♪♪♪
ん?そう言ってたら佳奈絵さんからメールです。
何でしょう?
「・・・・・・ひ、避妊ちゃんとするのよって・・・・・」
う~ん流石に女の勘って鋭いんですね・・・

blogram投票ボタン

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

離れていても、マイボーイフレンド
先週、約束した通り今日は、佳奈絵さんのクッキー作り教室を開きます。
本田は、昨日もグチグチ文句を言ってましたが、一体、誰の為の企画だと思っているんでしょうか?
えっ?誰です、押し付けるのは良くないなんて言ってるのは!
おはようございます、森山楓です。
―――――――――3月6日(土)―――――――――
ピンポ~ン
はいはい、早速誰か到着したみたいですね。
玄関を開けると、おっきなビニール袋を持った、本田が立っていた。
「う~っす。」
「おはよ、本田」
「楓、おばさん居る? これ、うちの母ちゃんから持って行けって渡されたんだ。隠岐産の干物の詰め合わせだってさ。」
「うわっ、こんなに沢山! おばさんにお礼しなきゃね、先にお兄ちゃんの部屋に上がっといて・・・お母さん~本田のおばちゃんから、干物を沢山貰ったよ~」
とりあえず、干物を台所のテーブルの上に置き、2階に上がろうとした時、今度はお兄ちゃんと佳奈絵さんが玄関から顔を覗かせた。
「あっ、お兄ちゃんおはよ。佳奈絵さんも、おはようございます。すいません、今日は無理なお願いしちゃって。」
「ううん、いいのよ。はいこれ、千華屋の田舎饅頭。」
「スイマセン、いつもいつも・・・」
「んで、彼はもう来てるの?」
「あっ、はい、2階のお兄ちゃんの部屋に居ますよ」
「じゃあ、ヒグラシはお茶でも淹れて来いよ、俺、先に上がっとくから」
・・・相変わらず、お兄ちゃんは人使いが荒いですね。
「あっ、良いですよ、佳奈絵さん。私がお茶淹れて上がりますから。」
「ん~、いいのよいいのよ、私も手伝うから」
うん、佳奈絵さんは本当素敵な女性です・・・将来、私の儀姉さんになる?のかと、思うとちょっぴり嬉しいです。

煎茶を淹れて2階に上がると、お兄ちゃんと本田は、ゲームの話で盛り上がっていた。
「ヒグラシ、こいつが本田健吾。小さい頃から兄弟みたいに育ったんだ。」
「初めまして、本田健吾です。今日は、楓がわがまま言ってすいません。」
ちょっと、私のわがまま?
「本田、それは無いでしょ。あんたの為に佳奈絵さんや私が一肌脱ごうって言うんだからね。」
「いや、楓。俺はお前に頼んだ覚えは無いって。」
「まあまあ、いいじゃないの二人とも。ねぇねぇ本田君の彼女って、収穫祭の時、一緒にお餅突きしてた子?」
「え~っと、そうですよ。でも彼女じゃないっすよ。」
「そ・・・そうね。あの子って名前なんて言うの?」
「沢田です、沢田瑞希。」
「あっ、やっぱり沢田先輩の妹さんだ。5歳年上のお姉さんが居ない?彼女に」
「え~、歳は分かんないけど、お姉さんが居るって言ってましたよ」
「私が高1の時の美術部の部長さんなのよ、モリヒデ、覚えてるでしょ? 顔が似てるから、どうかな~って思ってたんだ。」
「沢田先輩? おう、覚えてる覚えてる、すげー美人だったからな。写真部の長田部長の彼女だったんだよな。」
「そうそう、あの二人お似合いだったもんね。それでねぇ、楓ちゃん、それで今回はどんなクッキーを考えてるの?」
えっ? 漠然にクッキーとしか考えていませんでした。
「え~っと、どうしましょう~。ほら、本田も考えなさいよ」
「何でだよ、お前が任せておけって言ったんだろ。愛の使者楓様が。」
「何だよ、愛の使者楓って・・・。楓に任せておいたら、まとまる話もまとまらなくなるぞ、健吾。」
「あっ、ヒデにいも、そう思うでしょ」
「二人とも楓ちゃんをいじめなくても、良いでしょ。楓ちゃんは本田君の事を思って、一生懸命にやっているんだから。じゃあ、楓ちゃんイチゴジャム混ぜ込んで、ピンク色のクッキーにしようか、もちろんハート型のね」
「あっ、それ良いですね~。ホワイトクッキーと2色にすると、キレイかもしれませんね。じゃあ、早速準備するわよ健吾」
「じゃあ、モリヒデ。車の中から私のトートバッグ取って来てよ、道具や材料が一式入ってるから。」
「はいはい、うちの女どもは人使い荒いよな~、健吾」
健吾がクスクス笑ってます。
「いや、佳奈絵さんなら大歓迎ですけど、楓はね~」
なっ何よ、どうしてそこで差別すんのよ。

「じゃあ始めるわよ~モリヒデに本田君、ちゃんと手を洗った? ホワイトディのプレゼントで食中毒なんて洒落にならないからね。」
「おう、ちゃんと洗ったぞ、ヒグラシ」
「じゃあ、ボールに小麦粉入れて・・・あっ、本田君直接入れるんじゃなくて、このふるい器使って篩ってね。そうしないと粉がダマになっちゃうから。」
「はい分かりました、佳奈絵さん。おい、楓これどう使うんだ?」
「えっとね、これはこうやって取っ手を握ると、小麦粉が篩われるのよ。」
「へぇ、面白いもんだな。やっぱ、女の子はこう言う事詳しいな」
何?・・・珍しく健吾が、褒めるから、何か気持ち悪いですね。
「じゃあ、モリヒデはこの無塩バターを、しゃもじで柔らかくなるまで、混ぜてよ。」
「へいへい、分かりました・・・って、このバター、カチカチじゃんか、電子レンジで温めるんか?」
「ダメダメ、そんな事したら分離しちゃうでしょ、丁寧に練って練って柔らかくするのよ」
「え~、面倒臭いなぁ」お兄ちゃんはブツブツ文句を言いながらも、ボールの中の無塩バターを混ぜてます・・・何だかんだ言って、佳奈絵さんの言う事聞くんですね、こりゃマジ惚れですね。
「楓ちゃん、オーブンの余熱始めてね。本田君小麦粉篩ったら、牛乳をカップで計って、小麦粉に加えてね。」
「おい楓、バター柔らかくするの、手伝えよ~。流石に腕が疲れて来たわ。」
「んもう~、お兄ちゃんったら、根性が無いんだからぁ」
「佳奈絵さん、牛乳加えました~、次は何しましょう」
「ちょっと待ってね、ねぇモリヒデ何休んでんのよ、バターの次はジャムとバニラエッセンスを準備してよね」
うちの狭い台所で、4人が笑いながらドタバタとお菓子作りに夢中になってます。
こう言う休日も楽しいですね。
本当なら青木先輩と、楽しくお菓子作りをやってみたかったんですけどね。
でもほら、青木先輩って、そう言う感じのキャラじゃ有りませんし・・・
それに青木先輩は・・・。
大体、キャラじゃないって言ったら、本田はどうなんだ?って言われそうですよね。
でも年上の女性を口説くんですから、可愛い男子って路線も有りだと思ったんですけど、どう思われます?

「あっ、いい匂いがする♪ ねぇ、健吾」
「おっ、おう、焼きたてって感じのいい香りだ。」
「もう少しで焼き上がるわよ。じゃあ楓ちゃん、紅茶準備して試食しようか。」
「はい、佳奈絵さん。今日はどの紅茶にします?」
「そうね~、水色の鮮やかなオレンジペコにしようか。あっ、ちょっと私達、おばさん達の所に行ってくるから、ちゃんとオーブン見ててね。」
「は~い、じゃあ御茶の準備しておきますね、あっ本田、ヤカンでお湯沸かしてくれる?」
「へいへい・・・」
今日一日で、健吾も随分と従順になりました(笑)
ヤカンから、モクモクと沸き上がる湯気を、ぼ~っと見つめていた。
「なぁ、楓・・・お前、青木先輩と何か有ったんか?」
オーブンを覗き込んでいた本田が、こっちを振り返ってそう聞いてきた
「えっ?何で?」
「だって、ここん所お前、一人で帰ってるだろ、それに今日一言も青木先輩の事を口にしてないだろ」
「何もないよ、最近なかなか時間が合わないだけよ、ほら青木先輩は普通科だから、大学進学の事も考えなきゃいけないしね。」
「そっか、お前がそう言うんなら、大丈夫だな。お前は昔っから不器用だからな、人の心配する前に自分の心配しろよ。それから、これ、少し早いけど、ホワイトディのプレゼント」
そう言って、健吾がカバンからプレゼントボックスを取り出した。
「本田・・・。」
「馬鹿、勘違いするなよ、義理だからな義理!」
「分かってるわよ、そんなの・・・。今更あんたに、本命プレゼント貰ったって・・・」
そう言いながら、包み紙を開ける。
箱を開けると中から、リラックマのコーヒーカップが出てきた。
「あっ、リラックマだ♪ ありがとう本田。欲しかったんだリラックマのカップ・・・よく分かったね。」
「そりゃ、最近、お前の持ち物全部そのクマのイラスト付いてるからな、馬鹿だって気が付くさ」
本田がファンシーコーナーで、リラックマのカップをあれこれ物色している姿を想像したら、何となく笑えてきた。
「なんだ、あんたもちゃんとプレゼント選べるんじゃん。」
「当たり前だろ、ガキじゃないんだからな」
「ありがとう、大切にするね。」
「おう。あっそろそろクッキー焼けたんじゃないか?」
「どれどれ・・・あっ本当だ、良い具合に焼けてるね。」
このクッキーは、本田が沢田先輩の為に焼いたクッキー・・・これを沢田先輩に渡しながら告白をする。
そうさせようとしているのは、この私なんだけど・・・幼馴染みの本田が、凄く遠い存在に感じられて来た。
小さい頃から一緒に過ごし、気が付くと私の横には、いつも本田が居た。
思い出の風景の中にも、必ず本田が写り込んでいて、笑顔でこっちを見ている。
そんな本田が、沢田先輩の彼氏になる・・・祝福すべき事なんだけど、今更ながら素直に祝福出来ない自分に気が付いた。
今日だって、本田が一緒だったから、楽しかったんだと思う。青木先輩が一緒にクッキー作っていたとして、それはそれで楽しかったんだろうけど、本田と過ごしている時の楽しさとは、どこか違う気がした。
私って本当わがままですよね、私には青木先輩って彼が居て、本田には沢田先輩って好きな女の子が居る、なのに本田が自分の方を向いていないと、気が済まない。
まだ心のどこかに、本田の事を好きって言う気持ちが、残っている事に気が付いた。
そして、そんな気持ちを否定する為に、青木先輩を好きになり、そして本田には新しい彼女を作らせようとしている事に・・・
「おい、楓どうした?ぼ~っとして。」
「あっ、ゴメンゴメン本田。じゃあクッキー取り出そうか」
「おう。おっ、美味しそうに焼けてるなぁ。どれどれ一つ味見してみよ。うん、いいイチゴの香りがする、ほら楓も食ってみろよ。」
「だめだめ、沢田先輩にあげちゃう分が無くなっちゃうよ。」
「そんときゃ、もう一回焼きゃいいさ。このクッキーは、お前と作った二人のクッキーなんだから、沢田先輩に渡すのは変な話だろ。」
「二人のクッキーって・・・」
その言葉に胸が熱くなってきた。
やっぱり、あんたは私の大切なボーイフレンドなんだね。
そう、ず~っとず~っと大切なボーイフレンド。


松舞ラブストーリーアーカイブ
 ある高校生の夏休み編【完結】
(小夜曲)sérénade編【完結】
ショート・ショート編
モリヒデ・ヒグラシ編
颯太・朝葉編
洋介・日向編
幸一・真子・美結編
楓・青木先輩編
御主人様28号・詩音編
比呂十・美咲編
本田・沢田編
優ママ編
2009年収穫祭編【完結】


blogram投票ボタン

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。