松舞町ラブストーリー
山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね。
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水面(みなも)の灯り
今年もお盆がやって来ましたね。
松舞のお盆と言えば、花火大会に、夏祭り、精霊流しと、イベントが盛り沢山です。
先日、同じ職場の日向ちゃんと、一緒に花火大会を堪能しました。
初めまして、松舞保育園で、保母をしている錦織(にしこおり)美咲です。
―――――――――8月16日(日)―――――――――
花火の日、日向ちゃんは、園児の美結ちゃんに、寂しい女と思われたみたいです(笑)
私ですか?私だって恋愛経験位は有りますよ。今はフリーなんですけどね。
ちょっと、彼と喧嘩しちゃいまして・・・
初めは、少し考えないと思えだせない位、些細な事だったんです。
確か、私のアパートで彼の為に、料理を作っていた時だったと思います。

「あっ、ソースが切れちゃってる。ごめん潤一、このトンカツ、ソースじゃなくておろしポン酢で、和風にしても良い?」
「え~、まぁ仕方ないなぁ。しかし、お前は相変わらず準備が悪いなぁ」
「ゴメン。でも、準備が悪いのは潤一だって一緒じゃん。大体、なんでいきなり出張なのよ。折角今度の旅行楽しみにしてたのに。」
「だから、それは何回も謝っているだろ。仕方ないじゃんか、本社の方のプロジェクトが炎上していて、サポート人員が必要だって。」
「分かってるわよ、でもなんで潤一ばかりが貧乏くじ引くのよ。もうこれで、ドタキャン3回目よ」
「貧乏くじって言うな、プロジェクトの内容を把握していて、対処出来る人間が少ないんだから、どうしようもないんだよ。お前だってこの前のデート、ドタキャンしたじゃんか。」
確かにドタキャンしちゃって、その穴埋めが今日の手料理なんですが・・・
「だって、それはうちのクラスのこうちゃんが、交通事故に有ってお見舞い行かなきゃいけなかったんだもん」
「だったら、俺だって同じだろ」
「同じじゃないもん」
分かってます、わがまま言っているのは、充分分かってます。でも、言い始めたら次々と不満が再噴出しちゃって。
「どこが、違うんよ。同じだろ。園児の見舞いだって、大切な事なんだから。俺がそれで何か文句言ったか?」
「言ってないけど・・・もういい・・・」
私は、プイっとキッチンの方を向いた。
「あ~もう・・・良い・・・好きにすーだわや。」
背後で潤一が、玄関に歩いて行く音がした。
「ちょっと、どこ行くのよ! トンカツどうするのよ」
「イライラするから、タバコ買ってくる。」
そう言って、潤一はバタンと扉を閉めた。
それが、潤一と交わした最後の言葉だった。
うちのアパートは、少し町はずれに有るから、ちょっとした買い物でも、車で出かけます。
一番近い自動販売機にせよ、コンビニにせよ、片道10分位かかります。
でも、潤一は1時間立っても2時間経っても帰ってこらず・・・
テーブルの上のおろしトンカツも、潤一が大好きなオニオングラタンスープも、すっかり冷たくなった頃、二人の橋渡しをしてくれた潤一の会社の先輩から電話が・・・

病室のベッドの上の潤一の身体は、青白く冷たかった。
清らかな顔でベッドに横たわる潤一を、見てただ呆然と立っている事しか出来なかった。
即死だったらしい・・・苦しまずに逝ったのが、せめてもの救いだったと今になって思う。
道路に飛び出した幼児を救おうとして、トラックに轢かれたって、警察の人が話していた。
幸い、飛び出した子供は、潤一が抱き抱えて守ったので、軽傷で済んだそうだ。
潤一は、人一倍子供が大好きだったから、とっさに身体が動いたんだろうね、きっと。
「馬鹿なんだから・・・後先考えずに行動するんだから・・・本当に馬鹿なんだから、私を置いてけぼりにして」
でも、そんな潤一が大好きで誇りに思う。
冷暗所から潤一の自宅に、遺体は移され、私は喪服の準備が有ったので、一度アパートに帰った。
デーブルの上に、置いたままのおろしトンカツを見たら、色々な思いが込み上げて来て、私は初めて声を上げて泣いた。
4年前の秋の話です。

あれから、3回目の夏がやってきた。
私は一人松舞川の精霊流しに出掛けました。
雑踏を避け、少し離れた河原に下りる。
灯篭の中の蝋燭に火を点し、そっと流れに送り出した。
流れの加減か、一度岸から離れた灯篭が、私の手が届くか届かないかの距離まで戻ってきた。
すこし、灯篭が揺れた気がした・・・まるで、お礼をしている様だった。
そして、静かに水面に揺られ灯篭は流されていった・・・
DSC_5690.jpg




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テーマ:ひとりごと - ジャンル:恋愛

出会いは偶然
う~ん、昨日の餅突きの影響でしょうか? 今日は腕や足、あちこちが痛いです。
いや、しかし錦織先生は素敵な方ですね、正直一目惚れしちゃいました。
もう一人の先生の緑川先生(こちらも、ナカナカ可愛かったんですが、彼氏が居るみたいですし)と、森山は知り合いみたいだし今度、合コンのセッティングでも頼もうかな~。
こんばんわ、小村です。
―――――――――10月26日(月)―――――――――
今日は、現場が雨で流れたから、久しぶりに定時終業です。
しかし、うちの親は昨日からJAの慰安旅行です。
「おい、森山~。どっかで飯食って帰らんか~?」
「あっ、スンマセン。今夜は、ヒグラシと雲山で待ち合わせして、ピザ食べに行くんです」
ったく、未青年のくせして、あんな可愛い彼女が居るんだからなぁ~(まぁ、未青年は関係ないんですが・・・)
ん~自分で、ご飯作るの面倒だし、サンモールの総菜をつまみに、ビールでも呑んで適当に夕ご飯済ませようかな~

車をサンモールの駐車場に止め、店の入り口に入ろうとしたら、偶然に錦織先生に出会った。
「あっ、こんばんわ。昨日は大変お世話になりました」錦織先生がぺコリと頭を下げる。
「いえいえ、楽しかったですよ、収穫際」
慌ててこっちも頭を下げた。
「小村さんも夕ご飯のお買い物ですか?」
「ええっ、うちの両親がJAの慰安旅行に出掛けてるから、総菜物でも買って帰ろうかなと・・・錦織先生も、夕ご飯の買い物ですか?」
「えぇ、一人暮らしですから、いっつも簡単に済ませちゃうんですよね。」
チャ、チャンスじゃないっすかっぁあ。森山がデートだった事に感謝です。
「あっ、良かったら、何処か食べに出掛けませんか? 一人でテレビ見ながら、総菜をつついても侘しいだけですし」
うっ、錦織先生少し困った顔してます。
唐突過ぎたかな? 下心有るって、警戒されてるかな?
「そうですね、昨日のお礼もしなきゃいけませんし、実は私も一人で食べるの飽きちゃってましたから、お付き合いさせて頂いてよろしいですか?」
「もっもちろんです。」マジ?ラッキー。

サンモールに錦織先生の車を置いて、俺の車で出掛ける事になった。
「あっ、今日は軽トラじゃないんですね。」
「あは、あれは野良仕事用ですからね。まぁ、汚れ具合は同じですけどね」冗談抜きで、車内散らかってんですよね、俺は慌てて荷物やゴミをトランクに投げ込んだ。
「失礼しま~す」そう言いながら、錦織先生は車に乗り込んできた。
「錦織先生、何か食べたい物か、逆に苦手な物って有りますか?」
「小村さん、錦織先生って呼ばないで下さいよぉ。堅苦しいじゃないですか。苦手な物ございませんから、小村さんにお任せ致しますよ」
「すいません、錦織さん。 んじゃあ、まだ時間早いですし、少し足伸ばして雲山でパスタとかどうですか?」
「あっ良いですねぇ、お伴させて頂きます。 大好きなんですよパスタ、特にカルボナーラ大好きなんです、小村さんは何か大好きなパスタって、ございますか?」
えっ?特に拘り無いんだよな~
「なっナポレオンとか好きですよ」彼女が吹き出した。
「それって、ナポリタンじゃないですか?」
うわ~やっちまったかぁ
彼女は笑いながら喋り続けます。「美味しいですよね、ナポリタン。子供の頃って、スパゲッティーって言うと、必ずナポリタンじゃ有りませんでした? 良くてミートソース位で」
「あっ、そう言えばよくお袋が、袋に入ったスパゲッティーを炒めてたなぁ」
「うちもなんですよ。たまにあのコテコテのケチャップ味を食べたくなりません?」
「うん、分かるなぁ~。そう言えば錦織さんは、出身はどっちなんですか?地元?」
「いえ、出身は広島なんです。大学が雲山でしたから、就職もこっちにしたんです。」
「そうなんだ、じゃあ松舞に住んで2年位ですか?」
「いえ、もう5年になりますよ。最初町外れの幡多に住んでたんですけど、色々有りまして今は、本町の方に住んでます。」
ありゃりゃ、まるで誘導尋問ですねこれじゃあ。話を変えなければ
「しかし、俺らが子供の頃って、収穫際なんてなかったのに、今の園児達はおしゃれですね」
「えぇ、今の子供達は、結構ませてるんですよ。特に女の子は、成長が早いって言うか、口が達者って言うか、もう私達保母が舌を巻く位なんです。」
「う~ん、何となく分かるなぁ。昨日も男の子の手を自ら引っ張って、手を繋いでいる女の子居たもんなぁ」
「何となく誰か分かった様な気がします。小村さんって、子供好きなんですか?」
「えっ、俺ですか? う~ん、結構好きかもなぁ。週末はミニバスケットのサブコーチしてるんですよ。」
「ミニバスですか?懐かしいなぁ。私、小学校から高校卒業まで、バスケットしてたんですよ。まぁ、背が高いだけで、運動音痴でしたからあまり試合には出られませんでしたけどね」
「え~っ、そうなんですか? 今、男女一緒に教えてるんですよ、もしコーチ手伝ってもらえると、助かるなぁ~」
「え~っ?私がですか? ずっと補欠で試合出てないから無理ですよ」
「いえ、サブで良いんですよ。ストレッチ一緒にしたり、コーチのフォローしたり。年頃の女の子達だから、こっちも気を使うんですよ。」
「う~ん、少し考えさせてもらってよろしいですか? 前向きに検討してみますから」
マジ? 親しくなるチャンスが広がりました。

パスタ屋でも帰りの道も、結構、バスケの話や音楽の話題で盛り上がりました。
「こちらがお礼しなきゃいけないのに、申し訳ございませんご馳走になってしまって。」
「いやいや、元々誘ったのは俺の方ですから」
「じゃあ、次お会いする時は、私がお支払い致しますね」
うぉ~、誘った時の困った様な顔が嘘の様です。
満面の笑みを浮かべる錦織さんに、マジ惚れちゃいました。
「次がいつになるのか分からないけど、楽しみにしていますよ。ミニバスのコーチの件も是非ともお願いしますね」
「はい、また連絡させて頂きます。では、今夜はご馳走になりました。帰り道お気をつけ下さいね、おやすみなさい」
そう言いながら、錦織さんが手を振る。
俺も手を振り返す。
その後ろ姿を見ていたら、もう逢えない様な気がしてきた。
走り去る車に向い、「錦織さん」って叫んでみる。
何事も無かった様に、車は走り去った。
何だろう、今の胸騒ぎは?
僕は、ただ小さくなっていくテールランプをボーっと眺めていた。



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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

写真立て
折角の日曜日だと言うのに、朝から冷たい雨が降ってます。
洗濯物をお日様に当てて乾かしたかったのに、仕方ないです、室内干しにします。
そうと決まれば、お気に入りのCDを聴きながら、せっせと干しますかぁ
こんにちは、美咲です。
―――――――――11月01日(日)―――――――――
Tシャツ、ブラウス、スカート、タオルと干して、次は下着です。
ふっと、振り返る。
そこには、潤一の笑った写真が・・・
ちょっぴり恥ずかしいので、下着はタオルの陰に干そうかな。

洗濯物干し終わったので、日向ちゃんに分けてもらったフォーションのアップルティーを飲んで一息入れようかな♪
お湯が沸く間に、カップを二つ準備する。
一つはもちろん私ので、もう一つは潤一のです。
お湯をティポットに入れ、ゆっくり蒸らします。
そう言えば、潤一ってコーヒーはブラックなんですが、アップルティーをいれた時は必ずミルクと砂糖とシナモンを入れて、チャイにしてくれって言ってました。
そう言えば小村さんって、紅茶なんて飲むのかなぁ?
アップルの優しい香りに包まれながら、考えているのは小村さんの事ばかり。
ミニバスの事を、熱く語る小村さんの顔は、楽しそうですごく輝いていた。
収穫祭以来、気が付くと彼の事ばかり考えている。

だめだめ、私は、潤一と一生一緒に過ごすって決めたんだから。
それが、潤一にしてあげられる精一杯の償いなんだと思う。
もし、あの日私が一言余計な事を言わなかったら、潤一は出掛ける事なく、あの事故に遭わなかった。
だから、私は彼と過ごした日々と同じ生活を繰り返している。
もちろん、最初は潤一の事を忘れようとした。
あの部屋に居る事自体が辛くて、アパートも引っ越した。
そして幾つかの恋愛もした。
でも、やっぱり頭の片隅に潤一の笑顔が、焼き付いていて、どうしても先に進めない。
そのうち、潤一と過ごした日々が恋しくなり、それ以来私は私の中の潤一とこうして暮らしている。

ふいに携帯電話が鳴った。
着信画面には、小村比呂十の文字が・・・
通話ボタンを押したい、小村さんの声が聞きたい。
でも、私には潤一が・・・
暫くして着信音が鳴り止む。
私は、自己嫌悪に陥った。
写真立ての中の潤一に語り掛けてみる
「ねぇ、潤一。これで良いんだよね。私にとって、これが一番幸せなんだよね?」
潤一は優しく笑っている。
ふっと、携帯に留守電メッセージが残っているのに、気が付いた。
慌てて携帯を握り、メッセージを再生してみる。
「あっ、もしもし、小村です。お忙しい時にすいません。今日の午後、うちの女子チームの松舞エンジェルスの練習試合を、松舞小学校でやるんです。良かったら見学に来て下さいね」
行きたい。今、直にでも飛んで行きたい。
でも、写真立ての中の、笑顔の潤一を裏切る様な気がして・・・
気が付くと、頬を涙が伝っていた。
「私って変よね、潤一。貴方と一生一緒に暮らすって決めたのにね。ねぇ何か返事してよ、潤一。潤一・・・」
潤一は、相変わらずただ笑っているだけ。
その笑顔が、記憶の中の潤一が、私を苦しめる。
「どうして私一人置いて、死んじゃったのよ、潤一。ずるいよ。天国で他の女の子と付き合ってたら、絶対許さないんだからね。私がそっちに行く時まで、ちゃんと私だけを見つめててよね。」
私は、はっと気がついた
「私が、そっちに行く・・・」
そうか、その手が有ったのよね。そうすれば、もう苦しまずに済むし、一生潤一と仲良く暮らす事が出来る。
もう離れる事もない。
潤一と同じあの場所で死のう。
死ぬのなんて、怖くない・・・だって、大好きな潤一の所に行けるのだから・・・
私は、車の鍵を握りしめ、玄関のドアを開けた。

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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

PM5:00 一本の電話
「気を付け~。ありがとうございました。」
キャプテンの佐藤が、号令をかけた。
「ありがとうございました~」全員の声が、小学校の体育館に響き渡る。
エンジェルスのメンバー全員が、対戦相手のチームに頭を下げる。
う~ん、松舞エンジェルスは、背の高い選手が居ないから、得点力に欠けるんですよね。
こんにちは、小村比呂十です。
―――――――――11月1日(日)―――――――――
錦織さんの携帯に留守電を残したんだけれど、忙しかったのか錦織さんは、体育館に姿を見せませんでした。
まぁ、突然に連絡したから仕方ないんですけどね。
体育館のエントランス迄来た所で、急に携帯電話が鳴りだした。
この着メロは、錦織さんからです♪
「もしもしぃ、小村ですぅ」
「あ~、今コーチの声が、オクターブ上がった~。彼女からの電話かな~?」
6年生の友奈が、茶々を入れる。
俺は、手で友奈を追い払い、電話を続けた。
「すいません、うちのメンバーが邪魔しちゃいました。ええ、今、練習試合終わりました。・・・・・いえ、良いんですよ、突然誘ったのは僕の方ですから・・・・・・えっ?よく聞き取れませんが?もう一度言ってもらえます?」
受話器の向こうから、物静かに「潤一の所に行きます。僅かな時間でしたが、楽しい思い出をありがとうございました。」そう聞こえてきた。
「もしもし?どう言う事ですか? ご結婚されて、引っ越しでもされるんですか?」
返事の無いまま、電話は切れた。
先週の月曜日の気分と言い、何か胸騒ぎがした。
俺は、急いで森山に電話をかけた。
「おう森山かぁ?今、錦織さんから電話が有って、潤一とかって奴の所に行くって言ってたけど、錦織さんって、結婚されるんか?」
森山はそんな話初耳との事だった。
なんか気になるから、緑川さんにそれとなく聞いてみてくれって頼むと、俺は校庭に止めた自分の車に急いだ。
辺りは、薄暗く為り始めている・・・錦織さんを見付けるには、時間が少な過ぎる・・・
とりあえず俺は、松舞駅に車を走らせた。
その途中、森山から電話が有った。
あいつの彼女が緑川さんに聞いた話だと、潤一と言うのは、死んだ彼氏なんだそうだ。
今週に入って、錦織さんは、元気がなく思い詰めた様子だったらしい。
緑川さんも、森山も、今から心当たりを探すらしい・・・
心当たりって言っても、こう闇雲に車を走らせても、時間を無駄にするだけだ。
錦織さんにどんな心境の変化が有ったのかは知らないが、サンモールの駐車場で、彼女の車を追い駆けなかった事を、俺は後悔した。
くそう~、何処に居るんだ錦織さんは・・・
焦る余り、アクセルを多めに踏んでコーナーに入った。
大きく車は外側に膨らみ、対向車線にはみ出した。
その瞬間、フロントガラスに眩い光が・・・
「くっ・・・」慌ててブレーキを踏んだ。
「間に合わない、ぶつかる」って思った瞬間、車が激しく揺れた。


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PM6:00 焦り
突然の佳奈絵ちゃんからの電話、ビックリしました。
みさちゃん、潤一さんの所に行くって、どう言う意味なの?
自殺するって事?
だめ、そんな事したって、潤一さんは喜ばないって。
こんばんは、日向です。
―――――――――11月1日(日)―――――――――
園長先生に状況説明の電話をした。
園長先生の所にも、「退職する」って突然電話が入ったらしい。
事を荒立てない方が良いだろうって事になり、警察にはとりあえず電話を入れずに、私達だけでみさちゃんを探す事になった。
森山君も、車で捜してくれているみたいです。
う~ん何所に行ったんだろう・・・みさちゃん・・・
対向車線を救急車が激しくサイレンを鳴らして、走り去っていく。
嫌なことばかり考えてしまう・・・
ふっと、洋介の事が頭を過る。
こんな時彼が居てくれたら、どんなに心強い事か・・・

それは、ある休日、みさちゃんのアパートに遊びに行った時の事だった。
「あれ?みさちゃん、この写真って彼氏? 彼氏の惚気話とかしないから、フリーだと思ってた。」
「ん? 彼氏いないわよ。その彼、実は一昨年の夏に交通事故で亡くなったんだ」
「そうなんだ、ごめんみさちゃん・・・」
「気にしないで、ひなちゃん。それより、見て見て・・・」
私の気を逸らすかの様に、話をすり替えたみさちゃんが、返って辛かったのを覚えている。
それ以来、みさちゃんが彼の事を、よく口にする様になった。
何回も、潤一さんへの思いを断ち切って、新しい恋愛をする様に、話をした。
そして、何回か男の人を紹介したけど、やはり最後は潤一さんへの思いを断ち切れずに居た。
そんな、みさちゃんがこの間の収穫祭の時に、小村さんと楽しそうに話をしているのを見て、少し安心してたんだけどね・・・

ん?佳奈絵ちゃんから電話です。
「もしもし、みさちゃん見付かった? そう・・・見付からないのね。うんうん、私は今国道54号線を広島の方に向ってるよ。じゃあ、雲山方面は任せたわ、いい、絶対無理はしない様に、モリヒデ君にも伝えてね。
えっ?小村さん? ううんこっちは見掛けてないけど・・・電話が繋がらないの? どこか山の方でも探していおられるのかしら?」
・・・まさか、小村さんまで事故なんて事無いわよね?

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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

PM8:00 暗闇
ん~・・・
ぼんやりと目が覚める・・・
俺、何してんだ???
ぼんやりした頭で記憶を辿ってみる・・・
錦織さんを探してて、カーブにオーバースピードで突っ込んで、対向車線にはみ出して、対向車のライトが目に飛び込んでくる・・・
そうか、俺、事故ったんか・・・
しかし、ここはどこだ?
いまいち状況が掴めていません・・・比呂十です。
―――――――――11月1日(日)―――――――――
周りを見渡してみる・・・あたり一面真っ暗です。
へたり込んだ地面はアスファルトでも土でも草でもなく、何と言うかふわふわしていてまるで雲にでも乗っているみたいです。
ひょっとして俺って、病院のベッドの上?
いやそれなら、こんな真っ暗じゃないよな・・・
じゃあココは、あの世?
でも、身体を触ってみたら、確かに感触が有る。

「小村さん・・・・小村さん・・・」
何処かで俺を呼ぶ、か細い声がする・・・
俺はすくっと立ち上がり、声がする方にゆっくり歩く。
向こうの方に、小さな明かりが見えてきた。
俺はその明りに向って駆け出した。
声がだんだん大きくなる・・・はっきりと聞き取れる様になって俺は気が付いた・・・錦織さんの声だった。
「錦織さ~ん」俺は声を張り上げた・・・
俺の声、彼女に届いて居ないのか、反応はない。
彼女を明かりの中に見付けた・・・
どこかの自動販売機の前に立っているみたいで、俺が見た明かりはその自動販売機だった。
俺は叫び続けるが、彼女は一向に気付く気配がない。
突然俺は、空気の壁みたいな物にぶつかった。
それ以上先に進めない・・・
手を伸ばせば、錦織さんに触れる距離まで近付いているのに・・・
くっ・・・ここまで来て・・・折角錦織さんに巡り合う事が出来たと言うのに・・・
ここが、天国でも地獄でもいい・・・今は彼女に触れて彼女とおしゃべりがしたい。
彼女と一緒に居られるのなら、それだけでいい。
目の前にいる彼女のに、俺の事を気付いてくれない、そしてこっちから触れる事も出来ない・・・そんなもどかしさで、俺はやるせない気持ちになった
これは、ひょっとして、潤一とかいう奴の、嫉妬なのか?俺と錦織さんが付き合う事が嫌で、嫌がらせをしているのか?

「それは、違うよ」
どこからか、また、声がした。男の声だ・・・
「お前、潤一か?」
俺の問を無視する様に、奴は話し続けた。
「彼女は、一人でいる事が、償いだと思っている。けど、それは違うんだ。彼女が、幸せに暮らす事が償いなんだ。死んでしまって、彼女を幸せにする事が出来ないが、その意思を受け継いで立派に生きて欲しい。君なら、彼女を幸せに出来る。だから、彼女を救ってやってくれ。彼女を苦しみから解放してやってくれ」
辺りがまた暗くなった。
「美咲~美咲~」俺は力の限り、叫び続けた。

美咲~・・・俺は自分の声で目が覚めた。
ハンドルを握りしめたまま、俺は叫んでいた。
どうやら、事故はしてないみたいだ・・・車のタコメーターは明るく、アイドリング状態を示している。
もし、さっきのが事実なら、美咲はどこかの自販機の近くにいるはず・・・
改めて、辺りを見渡す・・・一面真っ暗だ、街灯もない・・・
フロントガラスに一筋の光が飛び込んできた・・・蛍? いや今は11月だ!
その明りは、フロントガラスの前を数回クルクルと回って、スーッと前方に動き出した。
俺は、その明りを追う様に、アクセルを吹かした。
確信は無いが、美咲に会えそうな気がした。


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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

PM9:00 最後の時 そして・・・
小村さん・・・小村さん・・・
寒いよ・・・
潤一が、亡くなった時は夏だったから、喪服の中がジワッと汗ばんでいたのを思い出した。
きっと、これが最後ですよね・・・美咲です。
―――――――――11月1日(日)―――――――――
潤一が亡くなった自動販売機の前に、今居ます。
夜は車も少なく、本当にさみしい場所です。
この場所で死んだなら、きっと潤一の所へ、間違えずに行けるでしょうね。
これが本当に最後です。これで、何も苦しまずに済むんです。
もし、潤一に会えたなら、思いきり抱きついて、甘えてやろうと思います。
「お待たせ・・・」って、ちゃんと笑顔で言えるかな?

ひなちゃんの顔が脳裏を横切った。
仕事帰りに、喫茶店でお茶して恋愛話に盛り上がった事も有りました。
彼女の彼氏、洋介さんとケンカした時も、必死に説得したよなぁ
ゴメンね、ひなちゃん・・・貴方の結婚式に参列できなくって。
私の分まで、こっちで幸せになってね。

松舞保育園の園児達の顔を一人一人思い出してみる。
健介君、もうオネショしない様に、ちゃんと寝る前にはトイレ行くのよ。隆俊君は、ちゃんと歯磨きをする様に。一郎君は、美奈子ちゃんに優しくしてあげる様に。優ちゃんは、早くお着替えが出来る様に頑張ろうね。沙希ちゃんは、大好きなお絵描きがもっとうまくなるといいね。・・・みんなイイ子で元気に過ごすのよ。

園長先生・・・わがままを言って申し訳ございません。
短い間でしたが、大変お世話になりました。

お父さんお母さん・・・親不孝な娘でごめんなさい。
もうすぐで、広島にも雪が降ります。お身体には気をつけて。いつまでもお元気にお過ごし下さい。

お兄ちゃん・・・ゴメンね。義姉さんといつまでもお幸せに。

最後に小村さんの事を、考えてみる・・・
潤一と同じ様に子供好きで、笑顔が素敵な人でした。
もし、普通に恋愛を出来たなら、きっと私は松舞エンジェルスのコーチとして、小村さんとがんばってチームを盛り上げていったと思います。
「ごめんなさい・・・今日は練習試合の応援に行けなくって・・・」
もし、お互い生まれ変わってもう一度出会う事が有ったら、その時は・・・その時は・・・貴方の恋人で居させて下さい。
今日何度目かの涙が頬を伝う・・・
小村さん・・・もっと早く知り合っていたら、私の心を温めてくれていたのかな?
私の事は早く忘れて、素敵な彼女を見付けて、幸せに暮らして下さい・・・

セカンドバッグから、潤一の写真を取り出す。
「潤一・・・今からそっちに行くからね・・・ちゃんと迎えに来てよ。ほら、私って方向音痴でしょ。絶対に道を間違えちゃうから、必ず迎えに来てね。ちゃんと、アップルティー準備してある?また、一緒に温かいチャイを飲みながら、一杯お話ししようね。」
相変わらず、写真の潤一は笑ってます。
「うん、分かった。じゃあ少し待ってってね」
写真をガードレールの根元に起き、もう一度セカンドバッグを手に取り、家から持って来た剃刀を取り出した。
「いよいよ、本当に最後ね。」
剃刀のキャップを外し、左の手首に宛がう。

ふっと、目の前を光の筋が横切った。
どこからか、蛍が飛んで来て、潤一の写真の上に止まった。
「蛍?この時期に?」
そして蛍は、一際明るく光ったかと思ったら、写真の中に吸い込まれる様に消えていった。
「美咲~美咲~」
小村さんの声が聞こえてきた・・・
「えっ?小村さん?どうして此処に???」
息を切らせながら、小村さんが走り寄って来た。
「はぁはぁ・・・美咲ちゃん・・・早まっちゃあダメだ。君は俺が幸せにする。潤一が出来なかった分まで、幸せにするから・・・ゼエゼエ・・・」
えっ? どうして潤一の事知ってるの?
「小村さん、どうして此処が分かったの?」
「ハァハァ・・・それは・・・光が・・・潤一が導いてくれたから・・・。潤一は、君が死ぬ事を望んでなんかいないんだ。そんな事したって奴は救われないよ。幸せに暮らす事・・・それがあいつへの償いなんだ。奴が潤一がそう言ってた。」
潤一が・・・?
「うそ・・・だって潤一はもう死んでるのよ。小村さんが潤一と話する事なんて出来ないじゃないですか。」
「じゃあ、なんで俺は此処に来れたんだ? さっきの蛍が俺をここに導いたんだ。 君は、勘違いしている。潤一が望んでいるのは君の幸せなんだ、だから俺が選ばれ、此処に導かれたんだ。俺が君を幸せにする、必ず幸せにするから・・・だから、だから・・・・・俺と結婚してくれ・・・」
えっ・・・今何て?・・・結婚?
気が付いたら、私は頷いていた・・・
「小村さん・・・貴方と一緒に生きていきます・・・」
ガードレールの根元に置いた写真が風で舞い上がった。それは、高く高く舞い上がり、一瞬だけ光ったと思ったら消えてしまった・・・
それを、二人で見上げながら手を振った。

「さぁ、帰ろうか・・・緑川さんも森山も、あいつの彼女も心配してるぞ、きっと。しかし、ここは寒いなぁ・・・。おっ、この自販機、ホットのアップルティー有るじゃんか。俺、アップルティー大好きなんだよね。」
思わず私はほほ笑んだ。
私の最期の時はこうして終わった・・・そして新しい私の最初が同時に始まった。

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