松舞町ラブストーリー
山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね。
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二人のバレンタイン
もうすぐバレンタインですね♪
こんばんは、私、塚田真子って言います。
毎年、この時期になると、手作りチョコを作るんですが、結局渡せず仕舞いで落ち込んでいます。
今年だって、ちゃんと日曜日に、板チョコとラッピング買ってきましたよ。
―――――――――2月10日(火)―――――――――
さてさて実は今、結婚経験・・・いや恋愛が成就した事すらない私が、子育て奮闘中です。
その子の名前は、美結ちゃんて言う、4歳の女の子。
仲良しだった友達、弥生の子供なんですけど、弥生は2年前に癌で他界してしまい、夫婦揃って身寄りが無かった為、弥生の妊娠中から・・・いや、二人の交際前から仲が良かった私が、子育てのお手伝いをする事に。
昼間は保育所に通っているので、残業の多い木下君・・・あっ美結ちゃんのお父さんの事です、木下君も高校の同級生で、私達3人高校時代からの知り合いなんです・・・に代わり、平日の夕方6時から夜10時迄と、依頼された休日朝8時から夜9時位まで美結ちゃんと過ごしています。


今日もいつもどおり、6時に保育園にお迎えに行って、それから一緒にサンモールへ、夕ご飯のお買い物に行きました。
「今夜は、美結ちゃんの大好きなオムライスにしようか?」なんて、話をしながらエントランスを抜けると、そこは特設のバレンタインコーナーです。
美結ちゃんは、私の手を振り解いて、バレンタインコーナーの中に、駆けって行きました。
そして、大きなハート型のチョコレートを、私の所に持って来て、「これ、しゅんくんにいまからもっていく」って言いました。
「うん、美結ちゃんはそのチョコを駿君にあげたいのね。美結ちゃんは駿君の事が好きなの?」
美結ちゃんは小さく頷きました。
「そっかそっか、でもね美結ちゃんチョコをあげる日は、今度の土曜日だよ。だからまた買いに来ようね」
美結ちゃんは、何回も首を横に振っています。
「駄目だよ、ちゃんとお父さんに聞いて、お父さんが良いよって言ってからじゃないと」
美結ちゃんは、目に一杯の涙を浮かべながら、その場に座り込んでしまいました。
普段は、物静かでわがままなんて言わない女の子なんですけど、今日はなかなか言う事を聞かず、手にしたチョコを離そうとしません。
「駄目です、ちゃんとお父さんが良いよって言ってからね」
私は、美結ちゃんを抱きかかえてチョコを陳列棚に返してから、コーナーを離れました。
美結ちゃんは、結局その後もポロポロと涙を流してた。
結局、家に帰ってからも、機嫌を損ねたまま。
オムライスも半分くらい残して美結ちゃんは寝てしまいました。
でも、あの聞き分けの良い美結ちゃんが、ここまで意固地になるんですから、よっぽど駿君の事が好きなんでしょうね。う~ん、どんなイケメンなのか(美結ちゃんは結構面食いです)少し興味が有るなぁ・・・

実の娘なら、もっとガンと言えるのかもしれないけど、一応他人のお子さんですし、美結ちゃんに嫌われたくないし、でもでも母親代わりとしては、そんな事じゃあいけないって事も分かっているんですが。
弥生が妊娠が分かったのが、丁度4年前のこの時期、あと一ヶ月で高校卒業と言う時でした。
木下君は大学進学を諦め、雲山で就職を決め、弥生は就職を諦め、時間の融通の利く地元のコンビニで数ヶ月バイトをする事に。
その時にはもう弥生のお母さんも亡くなっておられ、 出産のイロハも分からず他の友人も加わってマタニティー関連の本を買い漁ったり(こんな田舎で、マタニティー雑誌を買う女子高生って、大変だったんですよ)、高校卒業してからは、うちの母親にも助言してもらって、何とか無事に出産。
産声が聞こえた時は、木下君と泣いて喜びました。
まだ、二人とも社会人として巣立ったばかりですから、十分な貯金も無く二人の生活は決して豊かでは有りませんでした。
新生児保育に預ける金銭的余裕も無く、出産後3ヶ月位で弥生はバイトを再開しました。
だから私も、出来るだけ育児を手伝う様にして、お母さん代わりをして来た。
・・・悔しいけど、おっぱいだけはあげられませんでしたが。
だから、美結ちゃんの事は分かっているつもり、私がもっとしっかりしなきゃです。

♪♪♪~不意に携帯が鳴り出しました。
高校時代のもう一人の友人、日向ちゃんから電話です。
日向ちゃんは、松舞保育園の先生で美結ちゃんの担任でも有ります。
高校を出て女子短大で、保育を学んで帰ってからは、美結ちゃんのもう一人のお母さん役でも有ります。
「もしもし~、マコ~? 美結ちゃんもう寝ちゃった~起こしちゃったかな~?」
「ううん、大丈夫。今日は、珍しくわがままが出ちゃって、泣き疲れてグッスリ眠っちゃった。」
「そっか、やっぱり家でも、わがまま出ちゃったかぁ・・・あのね・・・」
何?、美結ちゃん保育園でも、やんちゃしちゃったの? う~ん、益々心配だ・・・
「永田駿君って知ってるよね?」
美結ちゃんが、大好きなイケメン園児だ・・・
「駿君の両親先月離婚しちゃって、駿君明日、お母さんの実家の有る鳥取に引っ越す事になったんだ。 そうしたら、美結ちゃんが離れたくないってシクシク泣き出しちゃって・・・」
う~ん、美結ちゃんにそこまで言わせるイケメン駿君、益々興味が湧いてきた。
「もう、会えないなんてヤダ~。美結も一緒に行く~って、大変だったんだから。 そしたら駿君も泣き出しちゃって・・・僕も美結ちゃん大好き~って」
あらら・・・私も体験した事無い相思相愛状態だったんだ・・・
「それで、駿君ったら、自分のハンカチをポケットから出して、これあげるから美結ちゃんの事ず~っと好きだからって・・・美結ちゃんの事忘れないって・・・」
「それでなのね、美結ちゃんサンモールのバレンタインコーナーで、チョコを今から駿君に渡しに行くって、やんちゃ言ってたのよ。」
「そうなんだ、美結ちゃんも思い出の品をあげたかったのかな? でも、もう渡せないね・・・」
「う~ん、でも明日松舞を発つんでしょ。だったら、明日の朝ならまだ間に合うかも・・・」
私は、日向ちゃんに駿君の住所を聞いて電話を切った。

こんなに幼くても、やっぱり女の子なんだね。
美結ちゃんの恋愛は成就させなくっちゃ、弥生に申し訳立たないよね。
私みたいな、恋愛未成就人生を歩ませちゃあいけないよね。
信じていれば、形はどうあれ又巡り会える事を・・・今、美結ちゃんに教えておかなければ、きっと美結ちゃんも私も後悔すると思う・・・
「まこちゃん・・・おしっこ・・・」
電話の声が大きかったのか、美結ちゃんがリビングにトコトコと現れた。
「美結ちゃん、トイレ行って手を洗ったら、一緒に駿君にあげるチョコ作ろうか。それで、明日の朝駿君に一緒に渡しに行こ・・・」
美結ちゃんの顔が急に明るくなった。
「あのね、みゆね、は~とのちょこ、つくりたい。でね、ぴんくのはんかちにつつんで、しゅんくんにわたすの」
「はいはい、美結ちゃんおしゃべりはトイレ行った後だよ。お漏らししちゃうと駿君に笑われちゃうぞ・・・」

子育てって、親が子を育てると同時に、子が親を育てるって、育児書で読んだ事がある。
そう、まさに今の美結ちゃんは、私にチョコを渡す勇気を与えてくれた。
高校時代、そして一度は諦め親友に譲った、木下君への思いを。


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Happy valentineday in Matsumai-town
いよいよ、バレンタインですね。
しかし、そんな一年に一回のチャンスなのに、私はまだチョコを渡せずにいます。
こんばんは、塚田真子です。
―――――――――2月14日(土)―――――――――
実は、今日も美結ちゃんのお父さん、木下君は仕事です。
しかも、さっき残業が終わったってメールが有りましたから、お迎えは9時を回りそうです。
美結ちゃんは、今日一緒に作ったクマさんの顔のチョコを、お父さんに渡すまでは、起きてるって頑張ってましたが、一緒にアンパンマンのDVDを見てたらスースーと寝ちゃいました。
取り合えず、美結ちゃんを抱きかかえて、私のベッドに寝かせました。
子供の寝顔って本当に可愛いですよね。自分の子供じゃなくてもこんなに可愛いんだから、実際にお腹を痛めて生んだ子供なら・・・ううん、美結ちゃんは十分に私の子供ですって。
確かに、自分が生んだ訳ではないけれど、生まれた時からず~っと見守って来た、子供なんですから。

「う~ん」 あっ、DVDを消さないと、美結ちゃんが目を覚ましちゃいます・・・
「ママァ~ママァ~」泣きそうな切ない声で、美結ちゃんが呟いています。
・ ・・・・・どうやら寝言みたいですね・・・
ママって・・・やっぱり美結ちゃんにとって、心のよりどころは、弥生なんですね。
当たり前だけど、美結ちゃんにとって、私は「まこちゃん」って身の回りの世話をしてくれる大人であって、美結ちゃんのお母さんでは無い。お腹を痛めて生んだ子供じゃないから、美結ちゃんのお母さんには、絶対になれないんですよね。
病に冒され、薄れ行く意識の中でも、いつも美結ちゃんの事を心配していた弥生。
そして、出棺の時「お母さんと、これでお別れだよ」って周りの大人に言われて、瞳に涙をいっぱい浮かべながらも、決して泣く事はなく静かに、弥生の冷たくなった顔を、優しく撫でていた美結ちゃん。
二人の親子としての絆は、決して切れるものじゃないですからね。
勿論そんな事は分かっていて、美結ちゃんの母親代わりを申し出た訳なんですが。
木下君との結婚なんて関係なく、美結ちゃんに「お母さん」と呼ばれたいなんて、考えるのは虫の良すぎる話ですよね。
それに、もし木下君と結婚する事になっても、美結ちゃんの「ママ」は弥生であって、私は継母でしかない。
美結ちゃんが「ママ」って呼んでくれないかもしれない。一生「まこちゃん」なのかも知れない。

そんな事を考えていたら、なんか段々ブルーになってきちゃいました。
勿論、そんな計算の元、美結ちゃんの面倒を見ている訳ではないけど、やっぱり美結ちゃんと言う触媒を通して、木下君と触れ合う度に、一度は諦めて封印した思いが、どんどん溶け出してしまうのも事実。
しかも、木下君に、別に好きな人が居て、その人と結婚しちゃったりしたら、私は美結ちゃんの継母にすらなれない・・・。
なんかそう考えたら、木下君にチョコを渡して胸の内を、打ち明けるのすら怖くなって来た。
やっぱり、チョコは義理チョコとして渡そう・・・そう考えていると、玄関のチャイムが鳴った。
木下君が、美結ちゃんを迎えに来たみたいだ。

「塚田、ゴメン遅くなって・・・塚田?どうした?」
木下君の顔を見たら、涙があふれて来た。
「ゴメン、びっくりしたでしょ・・・何でも無いから気にしないで。 美結ちゃん寝ちゃったから、静かに入ってよ」
「あっ・・・あぁ・・・」木下君は心配そうな顔のまま、靴を脱いで部屋に入った。
「あ~ぁ、美結ったら、塚田のベッドを占領しちゃって・・・」そう言いながら、美結ちゃんを抱き上げた。
怖い夢を見てたのか、美結ちゃんの目尻から、涙が流れていた。
「ママァ~ママァ~」美結ちゃんは目を覚まして、又、呟いた。
そして、私の顔を見つけてハッとした。
・ ・・・・良いんだよ美結ちゃん、子供がそんな気を使わなくても・・・私は「ママ」じゃなくて「まこちゃん」なんだから・・・
美結ちゃんは、お父さんの腕をすり抜け、私に抱き付いて来た。
「ママァ~」って・・・
えっ?美結ちゃん?
「あのね、みゆがおきたら、ママがまこちゃんがいないの・・・ずっとママ・・・まこちゃんママってさけんでたんだけど、まこちゃんどこにもいなくって・・・ねぇ、まこちゃん、ず~っとみゆのそばにいてね。す~っとみゆの、ママでいてね」
そう言って美結ちゃんは、私にしっかりしがみ付いた。
私は、また涙があふれて来て・・・
「どこにも行かないよ、ず~っと美結ちゃんのママで居てあげるから。だから安心して美結ちゃん・・・」
そう、美結ちゃんが「ママ」って言っていたのは、弥生ではなく、私だったのだ。

やっと泣き止んだ美結ちゃんが、木下君の顔を見た。
「あのねパパ、みゆ、まこちゃんママとくまさんの、ちょこつくったんだ。」
木下君はちょっと困った様な顔をして、「美結、真子ちゃんは美結のママじゃないんだよ。 真子ちゃん、美結にママって言われて困っているよ」
違う・・・違うって、木下君・・・私は私は・・・
「だって、みゆ、わかるもん。まこちゃんママがつくってたちょこは、パパにあげるぶんだって。おんなのかんでわかるもん」
あちゃ~、どこで覚えたの美結ちゃん「女の勘」なんて言葉・・・
思わず噴出してしまった。木下君も笑ってる。
弥生・・・良いよね、もう。
弥生が木下君に告白するって言った日、私が言った約束。
「分かった、私が諦めるから・・・二人で幸せになってね」って、
泣きながら誓った約束。
二人で、泣いて抱き合った、あの日の約束・・・美結ちゃんが許してくれたもんね。
私は、しまっておいたチョコを、そっと木下君に差し出し、こう呟いた。
「私、美結ちゃんのおかあ・・・」チラッと美結ちゃんを見る。ニコニコ笑って頷いてる。
「美結のママになってくれ!・・・いや、俺の嫁さんになってくれ・・・」
えっ?私は耳を疑った・・・
「美結が、認めてくれるかどうか、ずっと心配だった。でも塚田なら・・・真子なら、美結を・・・俺を幸せに出来る・・・いや、俺が真子を幸せにするから、必ずするから・・・だから二人でずっと、美結の幸せを見守っていてくれないか?」
私は、思わず木下君に抱きついた。
美結ちゃんの目の前ってのを思い出し、離れようとしたら、木下君が
抱き返して来た。
「ちょ・・ちょっと・・・美結ちゃんの目の前に・・・」美結ちゃんの方に目をやると、もみじの様な手で、両目を隠していて・・・そして、指の隙間から私を見つめて・・・Vサインを送ってきた・・・
私は、軽く頷いて、美結ちゃんにVサインを送った。



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テーマ:バレンタイン - ジャンル:恋愛

クローバー
う~ん、連休初日、ワクワクしちゃう位のいい天気です。
今、雲山市に在る小さな公園の芝生の上でのんびりしてます。
こんにちは、塚田真子です。
―――――――――5月2日(土)―――――――――
今日も美結ちゃんのお父さん、木下君は事務処理が溜まっているからって、今日も仕事です。
美結ちゃんと、アンパンマンのDVDを見ていたら、木下君から電話が。
「おっ、塚田、家に大事な資料を忘れて来た・・・。悪りぃけど、お昼に届けてくれないかな~?」
なんでも、朝、美結ちゃんがぐずってドタバタだったらしい。
ふぅ・・・仕方がない、届けてやるかな・・・ったく、親子揃って世話が焼けるんだから♪
お昼って言ったら、あと、1時間もしたら出なきゃ間に合わないわね。
「美結ちゃん、パパに会いに行こうか・・・」
「やだ、アンパンマンみてる」
ははは、木下君もアンパンマンには勝てないみたいですね(笑)
「う~んじゃあ、公園に遊びに行こうか。クローバーの首飾り作ってあげる」
美結ちゃんは、こっちを振り返り、目をキラキラさせている。
アンパンマンに勝ったv( ̄∇ ̄)ニヤッ

どうせ、彼の事だから、お昼なんかコンビニ弁当かカップ麺で済ますはず・・・
ならば、いい天気なんだし3人で公園でお弁当でも食べようかな♪
「よし、美結ちゃん、先ずは手を洗って来て下さい。手を洗ったら、冷蔵庫から卵を3つ持って来て下さい」
洗面所で手を洗った美結ちゃんが、卵を運んできた。
「ありがとう。そうしたら次はソーセージを取ってきて下さい。
  今日はタコさんがいいかなカニさんがいいかな~?」
「ん~っと、タコ~」
「よ~し、いっぱいタコさんウインナー作っちゃうぞ。美結ちゃんはおにぎりを何個食べるのかな?」
そんな会話を繰り返しながら、美結ちゃんとキッチンで過ごす。
それは、普通に母娘の風景であり、美結ちゃんも当たり前の様に、一緒に料理のお手伝いをしている。
きっと、弥生も同じ様に、料理をするんだろうな。
弥生には申し訳ない気もするが、美結ちゃんと過ごす時間が、今の私には一番楽しい。
美結ちゃんが、大きくなって高校生位になったら、一緒に彼氏の話とかしながら、キッチンに立ちたいな。
「まこちゃん・・・なんかくさいよ・・・」
あっ、いけない・・・玉子が少し焦げちゃいました(^^ゞ

木下君の会社の横には小さな公園が在るんです。
「お昼に公園で待ってる」って、木下君にメールを打つ。
これで、準備よしっと・・・
「美結ちゃん、準備出来たかな?ハンカチとティッシュ、あと帽子も持った?」
「うんもった~。まこちゃん、すわるとき、したにしくものもった~?」
あっ・・・忘れてました・・・う~ん、どっちが大人なのか分からないですね。
先ずは木下君のアパートに寄って、書類を取ってから、待ち合わせした、公園に向かいました。
車の中では、リピートでアンパンマンのマーチが流れています(笑)
「あのねまこちゃん、きのう、しゅんくんから、おてがみがとどいてた」
あらら、美結ちゃんと駿君の遠距離恋愛は順調な様ですね。
「いつか、お弁当作って駿君に会いに行こうね。」
「みゆね、しゅんくんに、ハートのかたちのオムレツつくってあげる~」
う~ん、女の子ですね・・・でも、ハート型のオムレツってどうやって作れば・・・(^_^;)

一時間位で、待ち合わせの公園に着きました。
ちょっと早かったみたいです。
芝生の上に、ビニールシートを広げ、買ってきたジュース飲みながらひと休憩です。
「まこちゃん、ブランコしよ」
美結ちゃんがスクッて立ち上がり駆け出した。
「あっ、美結ちゃん『ごちそうさま』言った? だめだよ走っちゃあ」
私も立ち上がって、美結ちゃんの後を追いかける。
ブランコなんて乗るの、何年ぶりだろう・・・
あの頃は、ちょうどよい高さに椅子があったのに、さすがに今では少し小さいですね。
思いっきり地面を蹴って、足を前に投げ出してみる。
頬にあたる風が心地よい。
これって、きっと、美結ちゃんが居なきゃ出来なった事ですよね。
親になるって、なかなか良いものですね。忘れていた感動や気持ちが、子供を介して蘇ってくる。
思いっきりブランコを漕いで、タイミングを計ってそのまま飛び降りる。
「まこちゃん、すご~い」
ぉお(゚ロ゚屮)屮  しっしまった~調子に乗り過ぎて、つい子供の頃やっていた、飛び降りをやってしまった。
「み・・美結ちゃん、危ないから真似しちゃダメだよ・・・(^^ゞ  ほら、あっちに入ってみよ、クローバーが一杯咲いてるよ」
美結ちゃんの気を逸らすように、クローバーの咲いている所へ連れて行った。
「ほら、見てごらん。葉っぱが何枚あるかな?」
「い~ち、に~ぃ、さ~ん・・・さんまい~」
「じゃあ、美結ちゃん。葉っぱが4枚あるクローバー探してごらん、見つけられたら良い事があるよ」
美結ちゃんは、しゃがみ込んで必死に四葉のクローバーを探しています。

「あった~。まこちゃんあったよ~」
しばらくすると、美結ちゃんが四葉のクローバーを持って帰ってきました。
「へへ・・じゃ~ん」
そう言いながら、美結ちゃんの頭にクローバーの花輪をのせてあげました。
「わ~ぁ、かわいい~。みゆもつくるぅ~」
「じゃあ、美結ちゃんクローバーの茎を、ほらここの棒の部分を長く残して切って・・・」
「・・・・・・できた~。まこちゃんできたよ~」
「お~凄い凄い・・・ほら真子ちゃん今度は、首飾り作ってみたよ・・・」
ふっと、見上げると、少し離れたところに木下君の姿が・・・
「あっ、もう12時20分だ・・・美結ちゃん、ほらパパが待ってるよ」
「パパ~、みてみて、まこちゃんとクローバーのくびかざりつくったよ~」
「おっ、美結、上手に出来てるじゃん」
木下君が、ビニールの敷物のところまで来て座り込んだ
「ごめん、ひょっとして待ってた?声かけてくれれば良かったのに」
「いや、良いんだよ。美結があんなにうれしそうにしてるのに、邪魔しちゃあ悪いからな。本当、親子そのものだったぞ。」
少し真面目な顔して、木下君が話を続けた。
「塚田よ、本当にありがとうな。お前のお陰で美結は、スクスク真っ直ぐに育ってくれた。本当に感謝してるよ。そしてこれからも、美結の事を一緒に見守っていってくれよな・・・」
そう言いながら、私の手を取り、左手の薬指に、小さなクローバーの指輪をつけてくれた。
「これって・・・」
少し照れながら木下君が呟いた。
「持ってきてもらった書類にサインくれないか・・・婚姻届に・・・」



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I miss you
今日は、朝から体がしんどくて、寝込んでいます。
折角の休みだというのに・・・窓から差し込む太陽の光が恨めしかったです。
こんばんは、塚田真子です。
―――――――――5月17日(日)―――――――――
今日は、木下君も会社が休みって事で、美結ちゃんが来てないのは、救いでした。
こう言う時って、つくづく一人ぼっちなのを痛感致します。
お腹痛いし、体が熱っぽくて、何にもする気が起きないんですよね。
食事を作る元気も無くって、昨日コンビニで買った、ヨーグルトとスポーツドリンクしか、口にしていません。
買い物に出る気にもならないし・・・
家族が居たら、何かと世話を焼いてくれるし、買出しにだって行ってくれるでしょうし・・・
今は、布団に包まって、ダラダラと寝てるしか、出来ない状態です。
気が付くと、こんな時間です。
う~ん、お腹が空いているせいか、隣の部屋の食事の香りが、すごく気になってきます。
鰹だしのいい香りが、この部屋にまで届いてきます・・・って言うか、こんなに香ってくるって、だしを利かせすぎじゃないのかな・・・
今度はトントンとまな板の上で、何かを刻む音が聞こえてきた・・・
う~ん、一体どんな力で刻んでんでしょう?こんなに聞こえてくるなんて。
そう思いながら、体を横にして布団を被ろうとしたら、視界の隅に黒い物が目に入った・・・

隣の部屋に人影が・・・
向こうがこっちを振り向く。
「あっ、悪りぃ・・・起こしちまったか?」
そういう人影は、木下君でした。
「お前、鍵開けっ放しだったぞ・・・」
えっ?美結ちゃんは?
「木下君・・・美結ちゃんは?まさか、一人アパートでお留守番じゃないよね?」
「ん?美結なら、日向んちに頼んできた。」
そっか、ひなちゃんなら、美結ちゃんの担任の先生だし、何より美結ちゃんが産まれた時から、関わってるから安心だよね。
「ところで、台所で何してんのよ?」
「えっ?お前が寝込んでるって、日向に聞いたから、うどんでも作ってやろうかと・・・日向も来たがってたけど、美結の事も在るし、風邪やインフルエンザだったら、保育園の先生としてまずいだろ。」
そっか・・・私、一人じゃなかったんだよね。
「もう少しで出来るから、お前は寝とけよ」そう言うと、木下君は台所に戻っていった。
横になったまま、木下君の後姿を眺めてみる。
ちょっぴり、猫背の背中が忙しなく動いて葱を刻んでいる。
軽快で心地よい音とは、言いがたいが、ず~っと聞いていたい気がする。すっごく幸せな音に聞こえる。
大好きな人が、私の為だけに作ってくれる素敵な料理の音を。
振り返った木下君と目が合う・・・
「なんだ?腹でも痛いのか?」
「ううん」
「ほら、出来たぞ・・・俺特製きつねうどんだ。」
うっ・・・そのどんぶり一杯のうどんを私に食べろと・・・健康な状態でも絶対に無理です。
「ちょっと・・・木下~、いくらなんでも作り過ぎ・・・それじゃあ、食べ過ぎで寝込んじゃうよ(笑)」
「あっ、やっぱり・・・食料の買出しなんてあんまりしないから、量がわかんなくて・・・しかも、全部封を開けちゃったから、使ってしまわないともったいないだろ。」
「ちゃんと味見した?砂糖と塩間違えてないよね?」
「当たり前だろ、ちゃんと味見したさ。ただ、甘い・・・塩っぱいって、何回も味の調節したから、汁が溢れそうになってしまったけどな・・・」
男の料理って奴ですか・・・
恐る恐る小さなお椀に取り分けられたうどんの汁をすすってみる。
ブラックコーヒーみたいなだしの色ですが、何とか食べれそうです(笑)
「どうだ?うまいか?うまいだろ!何とか言えよ」
って、喋ってたら食べれないんですけど・・・
いかにも病人食って位、煮込まれてフニャフニャになったうどんでしたが、木下君が苦労して私の為に作ってくれたと思うと、嬉しくって・・・思わず涙が・・・
「どうした・・・不味いか?」
「違うよ、熱かっただけ」
「無理すんなよ。やっぱ隠し味にソース入れたのがいけなかった?」
えっ! うどんにソースは入れないんですが、普通・・・そう言えば少しフルーティーかつスパイシーな香りが・・・するような・・・。
「ソースなんて入れないよ、普通。病人を苦しめてどうするの」クスって笑ったら、木下君もすまなそうな顔をしながら笑った。
「でも、それなりに美味しいよ、このきつねうどん・・・きつね・・・きつねうどんって油揚げ入ってるよね・・・。普通・・・これって天かすじゃない?たぬきうどんの間違いじゃあ・・・」
二人でもう一度大笑いをした。

「あっ・・・」お腹の辺りに流れる物を感じ、私はトイレに立った。
「おい、大丈夫か? 塚田?やっぱり腹壊した?」
「えっ?大丈夫だから、心配しないで」
トイレに駆け込むと・・・やっぱり「女の子の日」でした。
生理痛だったみたいです。

トイレを出ると、木下君が心配そうに近付いて来た。
「マジで大丈夫か?」
「大丈夫だから、私。心配しないで」さすがに生理痛だったとは、言えません。
「熱いうどん食べたら、楽になったみたい・・・ありがとう、木下君」
美結ちゃんの居ない二人っきりのチャンスって滅多にないですから、もう少し木下君に甘えちゃおうかな。
私は、彼の肩に腕を回し、そっとキスをした。
彼は私の髪を撫でながら、腰に手を回してきた。
う~んゴメンネ。女の子の日だから、今日はキスだけで勘弁してね・・・


「ひなたせんせ・・・ひなたせんせい、みてみて~ほら、ライオンさんかいたよ。」
「あっ、美結ちゃんゴメンゴメン・・・どれどれ~わぁ上手に描けたね~ライオンさん」
「うん、これがおとうさんライオンで、こっちがまこちゃんライオン、これがみゆライオンだよ・・・それで・・・」

いけないいけない、今は美結ちゃんのお守りに集中しなきゃ。
勝手に、空想に浸っている場合じゃない。
朝、真子から寝込んでるってメール来た時は、びっくりしたけど、よく話を聞いてみたら、真子は結構生理不順で重いみたいだし、多分生理前かなって話になったんだよね。
でも、今頃二人水入らずで過ごしているのかな?
私も、洋介にしっかり看病してもらいたいなぁ。
今週末、大阪に遊びに行こうかな・・・
「ひなたせんせ~、ちゃんと、みゆのはなしきいてるぅ?」
あ~はいはい(^^ゞ




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久しぶりにキャンプしています
「パパ、うさちゃんのぬいぐるみ、つんだ?」
後ろで、美結が喋りかけて来ました。
「あぁ、ちゃんと積んだよ。ミーちゃんと、ラビ君。先に美結は車に乗っておきなさい」
後ろのスライドドアを開けて、美結を車内に促した。
「うん」
「テントは積んだし、クーラーボックスもOK。後はスーパーで食材の買出しだな」
トランクを閉めようと、見上げた空は、どこまでも青く澄んでます。
こんにちは・・・って言うか、実は初めましての、木下幸一です。
―――――――――5月30日(土)―――――――――
DSC_9348s.jpg
最近、仕事が一段落して、週休二日で休めるようになりました。
そうなってくると、天気のいい週末は体が疼いてしょうが有りません。
僕の趣味は、オートキャンプなんです。
そう、車でキャンプ場に行って、車の脇にテントを貼って楽しむんです。
と言っても、貧乏なシングルファザーですから、テントもクーラーも、リサイクル品ばっかりです。
でも、美結に、自然の大切さ、命の尊さをしっかり教えてやりたいんです。
子供の頃、松舞川や支流の大森川で捕った、アメリカザリガニやメダカ、フナ等が激減しているじゃないですか。
松舞は中山間村地域だから、大丈夫だと思ってましたが、美結と同じ保育園に通う子のお父さんに聞いてみると、松舞川も結構居なくなっているそうです。
命の尊さは、きっと子供なりに分かっていると思います。
それに、これは親のエゴなのかも知れませんが、シングルファミリーだからって、肩身の狭い思いはさせたくないんです。大きくなった時、「あの子は、母親が居ないから、料理が出来なくても仕方ないよ」とか、「お母さん居なくて寂しかったでしょ」とか、言われたくないんです。全国のシングルファザーの皆さんなら、分かってくれますよね、この気持ち。
「だから、キャンプなの?」って言われると、困りますが・・・(汗)

そして、もうひとつキャンプをする理由が・・・
フィアンセの真子の存在です。
まぁ、普通に親子三人でデートでも全然問題ないんですが、真子も結構アウトドア派なんです。
だから、デートはアウトドアスタイルで行こうと考えてるんです。

おっと、なんて言っていたら、次の交差点を右に曲がれば、真子の住むアパートです。
アパートの下に車を止め、真子の携帯を鳴らします。
「あっ、幸一? 着いた?・・・そう今、降りるから・・・」
・ ・・そう言えば、気が付いたら、真子が僕の事を苗字じゃなくて名前で呼ぶ様になってます。
その方が、嬉しいんですよね。
「まこちゃ~ん」
美結が大きな声で叫びながら、手を振ってます。
「お待たせ、木下君、美結ちゃん」・・・・・そっか、美結の前では「木下君」なんだ。
真子は助手席じゃなくて、後ろの美結の横に座ろうとした。
「まこちゃんダメ、ここは、みーちゃんとらびくんのすわるところなんだから。おとなはまえにすわってください」
「はいはい、分かりました・・・でも美結ちゃん、ちゃんとジュニアシートに座って、シートベルトしてるのよ。ほら、みーちゃんにラビ君もちゃんとシートベルトしてるでしょ」そういいながら、真子はウサギの縫いぐるみにシートベルトを締めてやっていた。
・ ・・大人は前に座ってか・・・美結なりに気を使っているかも知れないなぁ・・・美結は変にオシャマな所が有るからなぁ(笑)

真子が助手席に座りシートベルトを締めたのを確認して、僕は「じゃあ出発~」って叫んだ。
「しゅっぱ~つ」真子と美結が同時に叫んで手を上げた。
「先ずは、買い物だな・・・真子、メニューちゃんと考えた?」
「もちろん・・・真子ちゃんが飛びっきりのメニュー考えてきたからね。美結ちゃんもちゃんとお手伝いしてよね。もちろん幸一お父さんもだよ」
「は~い」美結がまたもや手を上げた。
「つまみは俺が作るから・・・燻製作りやってみたいんだ」
「へぇ~燻製かぁ・・・面白そうだね。何を燻製にするの?」
「ん~っと、予定では、チーズに手場先、かまぼこ辺りかな・・・牛タンブロック売ってたら、それも燻製にしてみたいけどな」
「牛タンかぁ・・・サンモールにはスライスしかないかもね。  そうだ、ちゃんと美結ちゃんの着替え持ってきた?」
「ああ・・・言われた通り、3日分くらい持ってきたぞ、あと、バスタオルも多目にな」
・・・うん、真子は本当に美結の事を気にかけてくれる。ありがたい話だ。
車は程なくサンモールに着いた。
「まこちゃん、はなびもかっていい?」
「ん~、パパが良いよって言ったらね」
「ん?美結は花火がしたいんか?じゃあ、後でオモチャコーナー行って買おうか。」
「やった~はなび~」
「じゃあ、美結はカートの後ろに乗っていい子してるんだぞ。そうしないと花火買わないぞ」
そう言いながら、美結をカートに乗せた。
「先ずは、メインのお肉から選ぶね」
美結を乗せたショッピングカートを僕が押して、真子があれこれ食材をカートに入れていく。
時には、二人で値段を比べたり、「こっちがうまい」「いや、あっち」などと、反発したり・・・
弥生と、過ごした短かったけど幸せだった日々を、つい思い出してしまう。
・ ・・弥生

「クーラーボックスに、お肉やジュース移し終わった?」
美結をトイレに連れて行っていた、真子が戻ってきた。
「あぁ・・・」トランクを閉めて振り返ると、美結の手を引いた真子が歩いていた。
誰が何と言おうと、二人は立派な親子だよな。
「じゃあパパしゅっぱ~つ あんぜんうんてんでおねがいしますぅ」
「はいはい(笑)」僕は真子と顔を見合わせクスリと笑い有った。
今回向かうキャンプ場は、広島県に有る中国地方屈指のオートキャンプ場。
ネットサークルで知り合った、キャンプ仲間と何回かオフキャンプをした事あるオートキャンプ場です。
露天風呂も有りますし・・・混浴ではないのは残念ですが(^^ゞ
大型遊具も有るし、自然豊かだし・・・ここなら美結もノビノビ遊べる事でしょう。
緑豊かな山道を走る事1時間、キャンプ場に到着です。
管理棟で受付を済まし外に出ると、顔見知りのキャンプ仲間に出会った。
「あれ?キノサン(僕のハンドルネームです)? 来てたんだ。」
「あっ、たあさん、久しぶり~」
「何?今日は彼女連れてんだ~♪ あっ、初めまして~」
美結の相手をしていた真子が「こんにちは」って頭を下げている。
「デートの邪魔しちゃ悪いかな・・・もし喧嘩してテントを追い出されたら、泊まりにおいで(笑)」
そう言いながら、たあさんは管理棟に消えていった。
「いや~、いきなりサークル仲間に会うとは思わんかったわ。彼が、いっつもお世話になってるたあさん。サークルの会長さんなんだ。」
「いきなり挨拶されるから、びっくりしたわ。」にっこり微笑む真子にキュンっとなった。
この先、僕の奥さんって紹介する日が来るかと思うと・・・

「ねぇ、ポールはここに刺せばいいの~?」
「美結、あそこのとんかち取って」
「まこちゃん・・・のどかわいた~ジュースのみたい~」
三人でワイワイ言いながらサイトが出来上がったのは、お昼過ぎでした。
「さぁ、美結ちゃん。お昼ごはん作るよ~」
「は~い。まこちゃん、ちゃんとてをあらった?」
「そ・・・そうよね、先ずは手を洗わなくっちゃね」ペロッて舌を出して、真子が美結を手を洗っている。
「真子、お昼は何作るんだ?」クーラーボックスの中を覗き込みながら、僕はビールを取り出した。
「お昼はね~、バゲットサンド・・・美結ちゃんは噛み切れないだろうから、サンドイッチだよ」
「わ~い、サンドイッチだぁ~」美結が踊りながら喜んでいる(笑)
「ちょっと幸い・・木下君、ビール飲んでないで、手伝いなさいよ。これからは、ビシバシ料理の特訓してもらうんだから」
うっ・・・この前のたぬきうどんを根に持っているんでしょうか?
「はいはい・・・」僕も流しで手を洗った。
「食パンはこうやって包丁を温めててから、耳を落として・・・バゲットは横に切れ目を入れておくだけで、良いから。」
うん、相変わらず真子は手際がいい。
「美結ちゃん、レタスときゅうりさんを洗って下さいな。えっ?きゅうりは嫌い?だめだよ好き嫌いしちゃあ・・きゅうりは美容にも良いんだよ」
「美容に良い」って言葉に美結は反応した・・・うん、真子は美結を扱い慣れてるなぁ。
「さぁ、出来上がったら、今度はテーブルの準備ね。美結ちゃんは、綺麗なお花を摘んできて下さいな。」
真子が、家から持ってきたトートバックの中から、黄色い布を取り出した。
「へへ~この前、雲山の雑貨屋で、可愛いテーブルクロス見つけちゃった」
クロスをバッっと広げる真子
青空に黄色いテーブルクロスそして真子・・・なかなか絵になります。
広げたテーブルクロスの上に、真子が3人分の青いランチョンマットを置いていき、その上に僕が、ナイフとフォーク、マグカップを置いていく。
「まこちゃ~ん、ほら、きいろいおはながいっぱいさいてたよ~」
美結が駆け寄って来て、真子に摘んできた花を渡す。
「わぁ~、美結ちゃん一杯摘んできたね。それじゃあお花さんは、このコップに入れて、ほらテーブルの上に飾りましょ。さぁ、お昼ごはんにするわよ、皆もう一度手を洗って。」
「いただきま~す」
美結が大きなサンドイッチに頬張り付く。
「ほらほら、美結ちゃん、下からきゅうりさんが、こんにちはしてるよ。ちゃんと掴んで食べなきゃ」
「うん、この生ハム美味しい。やっぱ、俺の言った通り、こっちにして正解だろ」
「うん、確かに・・・木下君もたまには、いい事言うね。」
「たまかよ~」
「はいはい、ふたりともけんかせずに、ちゃんとごはんたべなさい・・・」
わいわい三人の幸せな昼食が続いた。

食後のコーヒーを真子と飲んでいると、美結が女の子を連れてきた。
「あれ?美結ちゃん、お友達?」
「うん、あのね、ゆうちゃん・・・ゆうちゃん、ほらあっちにいっぱいきいろいおはながさいてたよ」
優ちゃんの手を引き、美結がトコトコかけて行く。
「優ちゃんなら、たあさんの娘さんだよ。昔っからキャンプの度に、遊んでんだよあの二人」
「そっかあ・・・美結ちゃん友達居なくて退屈かと思ったけど、大丈夫みたいだね。」
美結達は、目の届く範囲で花を摘んでいるから、少し放っておいても大丈夫みたいです。
「じゃあ、俺は、燻製の準備するわ。」
「あっ、何か手伝おうか? 大体、幸一は料理苦手でしょ(笑)」
うっ・・・痛い所を突いてくる。
この前読んだ、How to本によると、思ったより簡単に出来るみたいなんだが、折角だから真子に手伝ってもらおうかな♪
「じゃあ、先ずは・・・ササミをパックから取り出して、表面の水気を取ってくれる?」
真子は手際よく、ササミの筋を引き抜き、ペーパータオルで水気を拭き取っていく。
うん、やっぱり真子は素敵な奥さんになってくれそうだ。
「本当はちゃんとした燻製器とか、欲しいんだけどな・・・」そう言いながら、僕は、中華なべと金属ボールを取り出した。
「何?それで燻製作れるの?」
「あぁ・・・」実は僕もイマイチ不安では有るんだけど。
中華なべの底に、スモークチップ(要は木屑です)と粗目を敷いて、金網を被せる。金網に先程のササミに塩を振った物、かまぼこ、チーズを乗せる。そして、金属ボールで蓋をすれば、即席の燻製器の完成です。
少し弱めの中火にかけて、後はひたすら完成を待つだけです。
僕は、二本目のビールを取り出し、プルタブを引いた。
視線の向こうには、美結と優ちゃんが楽しそうに、花飾りを作ってます。
「キノサン、なに作ってるんの?」
たあさん夫婦が尋ねてきました。
「ん?今、初めての燻製作り」
クーラーからビールを取り出し、たあさんに渡す。
「キノサン、聞いたわよ、彼女連れて来てんだって! ちゃんと紹介しなさいよ」明るくて姉御肌のたあさんの奥さん由美さんが、話しかけてくる。
「ったく、いつの間に、彼女なんて作ったのよ・・・いっつも仕事で残業残業って、書き込みしてるくせに・・・」
そこに、真子が洗い物から帰ってきた。
「あっ、真子・・・こちら、たあさんの奥さんの由美さん。由美さん、こっちが連れの真子」
「初めまして」お互いに挨拶を交わす。
「真子さん、お酒飲める?美味しいワイン持ってきたのよ。良かったら一緒に飲まない?」
そう言うと、由美さんは真子を連れて自分たちのテントサイトへと消えていった。
「なかなか、若くて美人の彼女じゃん・・・もう、プロポーズしたの?」
「えっ・・・まっまあ・・・」ゴールデンウィークの公園での出来事をプロポーズと呼んで良いのかは、少し疑問だが・・・
「お~、やるねぇ・・・。じゃあ、うちらのサークルで披露宴キャンプを企画しなくちゃね。」
「いや・・・まだ、具体的にいつ結婚するなんて考えてないっすよ。」
「でも、美結ちゃんの事考えたら、少しでも早い方が良いんじゃない? まぁ、美結ちゃんが嫌がってるんなら少し時間を置いた方が良いかも知れないけどね。」
もちろん、美結は拒んでいない、むしろもう真子の事をお母さんとして、認識している様だ。
僕は・・・実は少し迷っている。「真子との結婚」をじゃなくて、弥生が二人の結婚を許してくれるかどうかって事ばっかり、考えている。
きっと、赤の他人と結婚するなら、そこまで気にしなかったのかも知れないが、弥生の親友だった真子が相手だから、どうなんだろうって考えてしまう。
「いや、美結はもう真子の事をお母さんみたいに思ってますよ。産まれてからずっと、そばに居ましたから」
「そっか、以前話していた美結ちゃんの面倒を見てくれている、女性が彼女なんだ・・・。彼女なら美結ちゃんのいいお母さんになれそうだね。」
そこに、ワインとグラスを抱えて、真子と由美さんが帰ってくる。
「洋介、まだ、フランスパンにチーズ残ってたよね。」
キッチンコーナーから、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
美結や優ちゃんも、帰って来ておやつをおねだりしている。
「やれやれ・・・いっぺんに騒がしくなったな・・・これだから女は・・・」
たあさんは、ディレクターチェアから腰を浮かし立ち上がった。
「キノサン、又新しいテント買ったんだ、見に来る?」
そう言って、僕を手招きした。
たあさんのテントサイトに向かう途中、たあさんが静かに話し始めた。
「実は俺も再婚なんだ。優は俺の連れ子でさ・・・まぁうちは死別じゃなくて、喧嘩別れしたんだけど」
えっ、そうなんだ・・・それは知らなかった。
「俺さ、再婚する時、随分と悩んだよ。由美がちゃんと優の事を可愛がってくれるかは、もちろんだけど、別れた嫁さんが、俺の再婚を認めてくれるかどうか、優を引き取るって言い出すんじゃないかって。」
テントサイトに着くと、たあさんはバーナーに火を入れ、お湯を沸かし始めた。
「コーヒーでいい?」たあさんは、コーヒーミルを取り出し、コーヒー豆を挽き始めた。
「でもな、結局、別れた嫁さんは、優を引き取らなかった。街中で、優が由美と楽しそうに歩いているのを見たらしいんだ。優がすごく楽しそうな顔をしていて、由美も優しく微笑んでいるのを見たら、この人なら任せて安心だって思ったんだって。」
コッフェルにドリッパーをセットして、たあさんは静かにお湯を注ぎ始めた。
「天国にいる奥さんだって、ちゃんと美結ちゃんと真子さんの事見ていると思うよ。そして、この人ならって、認めていると思う。それは、地上にいる俺達から見ても同じ見解だから。彼女なら、美結ちゃんやキノサンを幸せにしてくるって、思えるもん。あの美結ちゃんの笑顔見てたら誰だって反対はしないさ。」
たあさんが、淹れたてのコーヒーを俺に手渡してくれた。
たあさんが淹れたコーヒーは、少しほろ苦くてとっても優しい味がした。



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今日もいい天気です
たあさんと話込んでいる間、燻製を放ったらかしにしていて、真子にこっぴどく叱られました。
チーズは、網目の間から流れ落ち、ササミとカマボコは、ヤニだらけで到底食べれる代物じゃ有りませんでした。(p_q)シクシク
おはようございます、幸一です。
―――――――――5月30日(土)―――――――――
昨夜は、たあさん、一家と一緒に夕ご飯食べました。
メニューは、真子特性ローストビーフにサラダ、由美さん特製グリーンカレーも、美味しかったです。

美結と優ちゃんは、花火した後、たあさんのテントで寝ちゃいました。(-o-;)
真子と由美さんは、意気投合しちゃって、ベロンベロンに酔っ払っうまで呑んでるし。
僕とたあさんと言えば、ヘベレケに酔っている相方を尻目に、焚き火に薪をくべながら、静かに呑んでました。
たあさんが、マッカランの18年物を、持って来ていたから沢山ご馳走になりました。
ピートの香りとシェリーの甘さが、焚き火の煙とマッチしていて、本当に美味しかったです。
お開きにしたのは、午前零時を回ってから・・・
美結は起こすのが可哀想って事で、そのままたあさんのテントで寝かす事に。
って事は、僕のテントは真子と二人っきり。ひとつ屋根の下?に二人っきりですよ。
しかし、酔っ払って爆睡しちゃってます、真子は。
でも、スースーと寝息を立てる、幸せそうなあどけない寝顔を見ていたら、こっちも幸せな気持ちになって、思わずほっぺにキスして、軽く抱きしめた。
寝ぼけながらも、抱き返してくる真子が俺の腕の中にいて・・・
ちっちゃな身体が、すごく愛しくって・・・


キャンプの朝って、結構早く目が覚めちゃうんですよね。
朝靄に煙る木々を眺め、野鳥の囀りを聞きながら、ひとり佇んでいます。
パーコレーターの中で、コーヒーがコポコポと沸き始めました。
お気に入りのチタンマグカップに、静かに注いで、口にする。
豆は、会社の近所に有るお気に入りの店のマンデリン種。濃くの有る苦味がお気に入りです。
テントの中で、ゴソゴソと音がする・・・真子が目覚めたみたいです。
テントのチャックを開け、顔を覗かせた真子と目が合う。
・・・何だか照れくさくて、目を逸らしながら「おはよう」って呟く。
真子も少し照れくさそうに、「おはよう」って、返してくる。
「真子も、コーヒー飲むか?」
「うっうん・・・」
真子が僕の隣に座る。
パーコレーターに豆をセットして、コンロに火を入れる。
「・・・真子・・・」
「・・・幸一・・・」
同時に口を開いた
「何?」お互いに聞き返す・・・
しばらく沈黙の後、先に口を開いたのは、真子の方だった。
「あのね、幸一・・・これ・・・」
そう言って、真子が机の上に置いたのは、一枚の紙・・・婚姻届だった。
「ごめんね、中々返事出来なくって・・・」
「いや、俺も、中々切り出せなくって・・・」
きっと、昨日、たあさんと話をしなければ、真子の気持ちを確かめられないまま、無駄に時間を費やしていたかもしれない・・・
恐る恐る、折り畳まれた用紙を開いてみる。塚田真子の名前が書いてあった。
「不束な女でございますが、これからも宜しくお願い致します」
そう言って、深々と頭を下げた。
「真子・・・」
「こちらこそ、不束な男でございますが、宜しくお願い致しまする~」
だぁ~、こんな時に噛んでどうする~
真子が思わず吹き出した。
「まする~って、何よ~。頼みますよ、お父さん・・・」
お父さんかぁ・・・「あなた」じゃないのは、変な気もするが、美結の事もちゃんと、真子は考えてくれている。
「あぁ・・・」コーヒーの沸き具合が気になる振りをして、僕は席を立った。
頬っぺたが、赤くなるのを悟られないように・・・



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昨日は大安
♪雨の日に二人、式を挙げた。
借り物の上着、友達が縫ったドレス

昔、授業をサボって、校舎の屋上でラジオを聴いていた時にかかっていた甲斐バンドの観覧車って曲のワンフレーズです。

こんばんわ、木下幸一です。
―――――――――6月7日(日)―――――――――
キャンプの後、昨日まで、どたばたな一週間でした。
会社に結婚の報告をして、保険証の書き換えや、給与体系の見直しをお願いし、町役場に婚姻届を出して、真子の引越しの準備に、僕の部屋の片付けと・・・

そうそう、真子のご両親に挨拶にも行きました。
反対されるんじゃないかと、ドキドキしていたんですが、凄く優しいご両親で、美結の事も本当の孫の様に、可愛がってくれました。

そして昨日は大安。
ささやかでしたが、人前結婚式を挙げました。
日向のお父さんとお母さんに、無理やり仲人をお願いして。
参列者は、真子の両親、美結、日向、そして真子の会社の部長さんと、うちの会社の社長、そして高校時代のクラスメイトが数名です。
真子が「盛大な式をしたって、幸せになれるとは限らない。」って、拒んだんです。
だから、ドライアイスの煙の中、ゴンドラで降りてきたり、ガーデンでビュッフェスタイルなんてお洒落な結婚式じゃなかったんです。
真子の両親としてみたら、娘の一生に一度の結婚式、きっと盛大な披露宴もしたかったのでしょうけど・・・
日向のお父さんの、商店会仲間のレストランを貸りて、小さいながらも温かい結婚式を行わして頂きました。

僕のタキシードも、真子のウェディングドレスも、雲山の貸衣装屋に勤めているクラスメイトに頼み込んで、安く借りる事が出来ました。
エンゲージリングは、百均とは言いませんが、安いシルバーのファッションリングで、我慢して貰いました。
指輪交換の後は、誓いのキス。
初めて、美結の前でキスをしました。
キスを一番囃子立てていたのが、美結なのは考え物ですが(笑)
小さいけど、その分温かな式をする事が出来ました。
列席頂いた皆さんに感謝です。

そして今夜からは、真子の家に美結を迎えに行く事もなく、真子と美結と三人川の字に布団を並べて寝ます。
「みゆね、まこちゃんとおなじふとんでいっしょに、ねるの♪ みーちゃんも、らびくんも、いっしょにねようね。」
「美結、真子ちゃんじゃなくて、お母さんって呼ばなきゃいけないよ」
僕がそう言うと、美結は少し照れ臭そうに、「おかあさん、まこおかあさん。だいすき~」そう言って真子に抱きついた。
真子の頬に伝う涙を、僕は見逃さなかった。


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